コラム 2021.09.28. 07:08

別の投手と間違える大チョンボも…?プロ野球「結果オーライ」の珍エピソード集

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まさかの事態も、一世一代の快投を見せた元横浜・ランドルフ (C) Kyodo News

降板した投手と代打で交代した打者が再び対決…?


 どんな名監督も人間。時にはうっかりミスをすることもある。

 ところが、「しまった…!」と頭を抱えてしまうようなチョンボが、結果オーライとなって勝利につながることもあるから野球はおもしろい。




 今回はプロ野球の長い歴史のなかで、本当にあった「結果オーライの好投エピソード」を紹介したい。

 まずは、交代ができない場面でうっかり交代を告げてしまったばっかりに、心ならずも先発投手を続投させることになったロッテ・山本功児監督の話から。

 2000年4月11日のオリックス戦。ロッテの先発・武藤潤一郎は、3-3の6回一死から連続で四球を許し、得点圏に走者を背負ってしまう。



 ここは何としても失点を避けたい場面。井上祐二コーチがマウンドに向かい、武藤を激励した。

 ところが、武藤は次打者・日高剛へ投じた初球が暴投に。一死二・三塁とピンチが広がると、ガマンの限界とばかりに監督がベンチを飛び出して左腕・藤田宗一への交代を告げる。

 飯塚富司球審も交代を認め、これを受けたオリックス・仰木彬監督は右の代打・藤立次郎をコール。しかし、ここで試合が一旦止まった。

 というのも、コーチがマウンドを訪れているため、野球規則8.06により、日高の打席が完了するまで投手の交代はできないはずなのだ。山本監督と飯塚球審の勘違いである。

 責任審判の林忠良二塁塁審が「日高に1球投げてますので、ルール上、武藤を続投といたします」と場内説明。降板したはずの武藤と、代打を送られたはずの日高がカウント1ボール・0ストライクから再び対決する珍事となった。


 「暴投で早く代えなあかんと思った。熱くなってたんだもん」と恥じる山本監督だったが、この続投は吉と出た。

 武藤は日高を三邪飛に打ち取ったあと、この回3つ目の四球で満塁としたものの、田口壮を遊ゴロに打ち取り、何とか無失点で切り抜けた。

 さらに、直後の7回にロッテが小坂誠のタイムリーで4-3と勝ち越したことから、なんと武藤は勝ち投手になってしまった。

 瓢箪から駒のような結果に、武藤は「こんな経験は今まで1度もない。勝ち星がついたのはうれしいけど…」と複雑な表情だった。


先発投手をメンバー表に間違えて記載


 つづいて、メンバー表の誤記で先発投手が変更されるアクシデントに直面したのが、2009年シーズン途中から大矢明彦監督の休養に伴い、監督代行を務めた横浜・田代富雄コーチだ。

 9月5日の中日戦。試合前のアナウンスで「横浜ベイスターズの先発はグリン」と告げられると、一塁ベンチの田代監督代行は、思わず腰を抜かしそうになった。

 というのも、この日は8月16日の広島戦でデビューしたばかりのスティーブン・ランドルフが先発するはずだった。確かにランドルフの名前をメモに書いてマネージャーに手渡したはずなのに、翌日に先発予定のライアン・グリンの名前がアナウンスされたので、目を白黒させてしまうのも無理はない。

 実は、関係者がメンバー表に投手名を記入する際に間違えてグリンの名前を書いてしまったのだが、こういうこともあるから、人任せは怖い。


 だが、いきさつはどうあれ、一度先発投手として発表した以上、グリンは最低でも打者1人と対戦しなければいけない。

 この日は非番だと思い、ロッカー室でのんびり食事をしていたグリンは、突然杉本正コーチに登板を命じられ、ぶっつけ本番で先発のマウンドに上がることになった。まさに寝耳に水である。

 しかし、幸いにもグリンは動揺することなく、先頭打者・井端弘和を三ゴロに打ち取って、「打者1人でいいから」の約束をはたすと、ニッコリ笑ってマウンドを降りた。


 そして、一死から本来の先発だったランドルフがマウンドへ。

 「アクシデントの悪い流れを止めたかった。この試合を絶対に落としてはいけない」と気合をみなぎらせたランドルフは、中日打線から毎回の15三振を奪って、8回2/3を被安打わずか2でゼロ封。1回に森笠繁の右越え2ランで挙げた“スミ2”を守り切った。

 ちなみに、救援投手が毎回奪三振を記録したのも、外国人投手が15三振を奪ったのも史上初の快挙。田代監督代行は「オレのミスを選手がカバーしてくれた。ランドルフが攻撃的な野球を見せてくれた」と感謝感激だった。


監督・コーチの“ダブル勘違い”で…


 ブルペンのモニター画面を見間違え、うっかりリリーフに別人の名前を告げてしまったのが、中日・高木守道監督だ。

 2012年8月7日の広島戦。5回までに2-1とリードした中日は、6回から先発・大野雄大にリリーフを送った。

 だが、場内アナウンスがルーキー・田島慎二の名前を告げたにもかかわらず、マウンドで投球練習を始めたのは、なぜか武藤祐太だった。実は、高木監督が武藤を田島に見間違えたのが原因だった。


 「ブルペンの画面を見たら、武藤が田島に見えたんだよ。似とるでしょ?権藤さんにも『田島だね?』と確認したよ。そしたら、頷いたように見えたんだよ」(高木監督)

 一方、権藤博コーチは「武藤のつもりだったけど、監督の“田島”にハイと言ってしまった。(訂正せずに武藤に交代を告げた)私のミスです」と、こちらもきまりが悪そう。

 いずれにしても、武藤の登板は認められず、ブルペンにUターンする羽目になったが、指揮官の勘違いで登板した田島が2回を無失点に抑え、勝利に貢献したことから、結果オーライとなった。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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