通算400二塁打達成者はわずか14人
歴史的な一打は、優勝争いになんとか踏みとどまろうとするチームに大きく貢献する1本だった。
10月2日、対DeNA戦に「3番・遊撃」でスタメン出場した巨人の坂本勇人に、2-2の同点で迎えた3回、一死一、二塁のチャンスで打席が巡ってきた。相手先発・京山将弥の落ち切らずに甘く浮いたスプリットを振り抜くと、弾丸ライナーで左翼線を破った打球はあっという間に外野フェンスに到達。一時勝ち越しとなる適時二塁打となった。
これで坂本のプロ通算二塁打は大台の400に到達。1970年の榎本喜八(元毎日他)、2003年の立浪和義(元中日)の33歳10カ月を大幅に更新し、32歳9カ月という史上最年少での通算400二塁打達成となった。
これまでに通算400二塁打を達成したのは、坂本も含めてわずか14人。あらためて、通算二塁打記録を見てみる。
【通算二塁打記録】
1位 487本:立浪和義(元中日)
2位 449本:福本 豊(元阪急)
3位 448本:山内一弘(元毎日他)
4位 440本:金本知憲(元広島他)
5位 429本:稲葉篤紀(元ヤクルト他)
6位 422本:王 貞治(元巨人)
7位 420本:張本勲(元東映他)
8位 418本:長嶋茂雄(元巨人)
9位 411本:松井稼頭央(元西武他)
10位 409本:榎本喜八(元毎日他)
11位 408本:川上哲治(元巨人)
11位 408本:福留孝介(中日)
13位 405本:松原 誠(元大洋他)
14位 400本:坂本勇人(巨人)
※松井稼頭央、福留孝介の数字はNPBのみの記録
通算二塁打記録において487二塁打でトップに立つのは「ミスタードラゴンズ」の他に「ミスター二塁打」の異名も持つ立浪和義(元中日)。坂本は現在14位だが、史上最年少で400二塁打を達成したことを思えば、坂本が立浪を抜き去るのもそう遠い未来のことではないだろう。
球界きっての「嫌な打者」らしい大記録
坂本は現在32歳。シーズン20盗塁を記録していた頃と比べれば、その足には衰えが見られるかもしれない。しかし、近年も当時となんら変わることなく毎シーズン約30本の二塁打をマークしており、今後1、2年のあいだに二塁打数が急減するとは考えにくい。
一軍に定着した2008年からこの日の対DeNA戦まで、坂本は「4.71試合に1本」のペースで二塁打を放っており、1シーズンに換算すれば、やはり約30本となる。今季の残り試合数も考慮に入れると、概算ではあるが、3年後の2024年シーズン中にも立浪を抜き去ることになる。大きなケガや急激な衰えなどがない限り、翌2025年にはNPBでは前人未到の500二塁打に到達する可能性がある。
金字塔を打ち立てた試合後のヒーローインタビューで、坂本は「2000安打より達成者が少ないということで、すごく価値のあることかなと自分でも思う」と語った。坂本が引き合いに出したのは2000本安打達成者だったが、じつは通算400二塁打達成者は通算400本塁打達成者よりも少ない。
野球においては、どうしても派手な本塁打に注目が集まる。しかし、ひと振りでチャンスをつくることができ、得点圏に走者を置いた場面では楽に走者を生還させられる二塁打もまたチームにとって大きな貢献となり、それこそ大いに価値がある。また、塁上から走者がいなくなる本塁打よりも、打者が走者として残る二塁打を嫌がる投手も多い。
巧打に長打、スピード、勝負強さなど打者に求められる多くの能力を併せ持つ坂本は、相手投手にとっては球界きっての「嫌な打者」だ。その坂本の「嫌らしさ」が、この二塁打記録にも表れている。
※数字は10月2日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)