コラム 2021.10.05. 07:14

練習試合に9球団・22人のスカウトが集結!JR東日本の注目左腕・山田龍聖の実力とは…?

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社会人の注目左腕


 “運命の一日”まで、ついに1週間を切った。

 今年のプロ野球・ドラフト会議は10月11日(月)に行われる。




 高校野球の夏が終わり、季節は大学野球の秋へ。また、今年は都市対抗野球が11月に開催されるため、大舞台への出場権をかけた予選がドラフト候補にとっての最後のアピールの場にもなっている。

 プロアマ野球研究所では、目前に迫ってきたドラフト会議当日まで、なるべく数多くの選手を紹介していきたい。

 今回は、社会人球界で注目を集めている、高校卒3年目の本格派サウスポーを取り上げる。



▼ 山田龍聖(JR東日本)
・投手
・182センチ/80キロ
・左投左打
・高岡商

<主な球種と球速帯>
ストレート:140~150キロ
カーブ:107~110キロ
スライダー:120~122キロ
チェンジアップ:118~120キロ
ツーシーム:134~136キロ

☆クイックモーションでの投球タイム:1.22秒


ドラフト解禁年の猛アピール


 今年のドラフト候補をみると、佐藤隼輔(筑波大)や隅田知一郎(西日本工大)などの大学生サウスポーに人気が集まりそうだ。しかし、注目されている左腕は彼らだけではない。大学4年生より一学年下となる山田龍聖(JR東日本)もまた、有望なドラフト候補のひとりである。


 山田の投球を初めて見た試合。それは、4年前の2017年6月に行われた北信越大会の星稜戦だった。

 5点をリードされた6回からマウンドに上がり、2点を奪われて1イニングで降板。目立った成績は残せなかったが、最速143キロのストレートは迫力十分で、高い将来性を感じたことを今でもよく覚えている。

 その後、もうひとつ伸び悩んだ時期もあったが、3年夏の甲子園では2勝をマーク。春夏連覇を達成した大阪桐蔭を相手に敗れるも、11奪三振で3失点完投と好投を見せ、全国にその名を知らしめた。同じ年に開かれたU18アジア選手権では、侍ジャパンに選出されて日本代表として戦っている。


 高校卒業後に進んだJR東日本では、同期の伊藤将司(20年・阪神2位)が大黒柱として活躍した影響もあって、登板機会に恵まれなかった。

 加えて、昨年はコロナ禍で公式戦が少なかったことから、この2年間は目立った実績は残せない状況。それが3年目となる今年、春先から多くの実戦に登板するようになると、4月の対西濃運輸戦(日立市長杯)では8回を投げて2失点、11奪三振で勝利投手となっている。


9球団のスカウト陣が練習試合に注目


 それからというもの、山田の周辺はにわかに騒がしくなってきた。

 9月8日に行われたJFE東日本とのオープン戦には、9球団のスカウト・総勢22人が集結。JR東日本のグラウンドで行われるオープン戦を取材する機会は多いのだが、これほど多くのスカウトが集まる試合は初めてだった。


 この日、先発マウンドに上がった山田は、立ち上がりから安定したピッチングを披露。5回を投げて被安打3、四死球0で無失点と、チームの勝利に大きく貢献している。

 フォームの特徴は、ボールの出所の見づらい小さいテイクバックと、それでいながら高い位置から腕が振れるという点だ。それに加えて、躍動感もアップしたように見える。


 昨年と比べ、腕を振ってチェンジアップやスライダーを投げることができており、カウントを取る変化球に大きな成長が感じられた。かなりブレーキが利いたチェンジアップには、体勢を崩す打者も多かった。

 ボールが先行する場面もほとんどなく、5回で投じた球数はわずか58球。このように球数を抑えて投げられる点は、先発投手としては大きなプラスだ。


ドラフト上位指名の可能性も


 一方で課題を挙げると、ストレートの平均球速と速い変化球か。

 この日の最速は148キロ。145キロ以上も5球マークしたが、全体的には140キロ程度のスピードが多かった。全力で腕を振った時のコントロールには、まだ自信がないようだ。

 カウント球と勝負球を使い分けることは当然よくあるのだが、少し抑えたボールが甘く入ると、プロの世界では痛打される可能性が高いだろう。

 また、スライダーは120キロ台前半で、こちらもスピードが少し物足りなく感じた。もう少しスピードが速いカットボールに近いボールをマスターできれば、ストレートや緩いチェンジアップが生きて、ピッチングに幅が出てくるだろう。


 JR東日本出身のサウスポーといえば、オリックスの田嶋大樹(17年・1位)が思い当たる。彼も山田と同様に高校卒業後、JR東日本に入っている。

 山田は田嶋と比べると、実績やボールの凄みで劣るとはいえ、田嶋にはない縦の角度があるボールを持つ。それは大きな魅力のひとつだ。将来性を考えても、決して見劣りしないポテンシャルもある。

 今年で21歳。その若さも魅力だけに、巡り合わせによっては、2位以内の上位指名でプロ入りする可能性も十分にありそうだ。


☆記事提供:プロアマ野球研究所

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※訂正とお詫び
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初出時、山田選手の名前に誤りがございました。「龍星」とありましたが、正しくは「龍聖」です。
大変失礼いたしました。訂正してお詫び申し上げます。

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