新潟に注目の大型右腕
10月11日(月)に開催されたプロ野球のドラフト会議。
今年は支配下で77名、育成で51名の計128名が指名を受け、プロ入りのチャンスを掴んでいる。
一方で、指名選手の所属元では“新チーム”での戦いが始動している。
思えば智辯和歌山の優勝で幕を閉じた夏の甲子園でも、今秋のドラフトで指名を受けた3年生の選手たちが流石のプレーを見せていた中、今年は2年生の躍動というのが目立った。
そこで今回は、ドラフト2021が終わったばかりではあるが、2022年以降のドラフトで指名が期待される有望選手たちを紹介したい。今回は投手・野手両面で高い将来性を誇り、プロから注目を浴びている大型右腕を紹介する。
▼ 田中晴也(日本文理)
・投手
・185センチ/82キロ
・右投左打
<主な球種と球速帯>
ストレート:135~144キロ
カーブ:110~115キロ
スライダー:123~125キロ
フォーク:125~128キロ
・クイックモーションでの投球タイム:1.23秒
仕草から伝わる“大物感”
この夏、混戦と見られていた新潟大会を制して甲子園行きの切符を掴んだ日本文理。その原動力となったのが、2年生の田中晴也だ。
エースとなったのは今年の春からだが、早くもスカウト陣からその名前がよく聞かれる大型右腕である。
田中のピッチングを初めて見たのは、夏の新潟大会・準決勝の対関根学園戦だった。
この試合、田中は「3番・投手」で先発出場。3回に味方のエラーから1点を失い、4回にも長打を浴びて、さらに1点を追加されたが、中盤以降は安定したピッチングを披露。
試合は延長戦にもつれ込むも、最終的には10回を一人で投げ抜いて2失点完投とチームの勝利に大きく貢献した。
プロフィールでは185センチ・82キロとなっていたが、マウンドや打席での立ち姿は全く細い感じがせず、2年生とは思えない堂々とした体格を誇る。
加えて立ち居振る舞いにも落ち着きが感じられ、一つ一つの仕草からも大物感が伝わってきた。
数字以上に勢いを感じさせる投球
ピッチングフォームは少し体が捕手と正対するのが早く、ボールの出所が見やすいようにも感じたが、ゆったりしたモーションで上半身の力を抜いて腕を振ることができており、全体的なバランスも決して悪くない。
肘の使い方にも柔らかさがあり、イメージとしては安楽智大(楽天)の高校時代と重なるものがあった。
この日の最速は142キロと、2年夏の時点では十分な速さがあった。
アベレージでは130キロ台後半でも、しっかりボールに力が伝わっているので、数字以上に打者の手元での勢いが感じられる。
また、特に目立ったのが内角への厳しいボールだ。
腕をしっかりと振って打者の胸元に速いボールを投げ込むことができ、相手打線も力のないフライアウトが非常に多かった。
大型投手にありがちなコントロールが定まらないという悪い癖がなく、この日も与えた四球はわずかに一つと自滅するようなこともなかった。
変化球はまだ必殺の決め球と呼べるほどの凄いボールはなかったが、カーブとスライダーでカウントをとることができ、フォークも低めによく集めていた。
フォームの躍動感が加わってくれば、さらに攻略が難しい投手になるだろう。
野手でもプロ入りを狙える逸材!
また、田中が非凡なのはピッチングだけではない。打っても3番を任されているように、打者としても高い能力を誇るのだ。
この日はかなりの暑さで、投球の疲れもあったせいか、スイングのキレは少し物足りなかったとはいえ、ゆったりとした構えからのフォロースルーの大きいスイングは迫力十分。同点で迎えた10回表には、ストレートを左翼線に見事に弾き返す決勝の適時二塁打を放っている。
そして、この後に行われた準決勝では、一塁手で出場して2本の本塁打を放つなど、長打力も申し分ない。打撃を生かして野手として指名を検討する球団が出てくることも十分に考えられる。
夏の甲子園では、度重なる順延の影響もあってか同じ北信越地区を代表する強豪・敦賀気比に8回を投げて8点を奪われたものの、自己最速を更新する147キロを計測。改めてポテンシャルの高さを示した。
この秋も北信越大会で星稜に惜敗。準々決勝で敗退となり、来春のセンバツへの出場も厳しくなったが、ピッチング・バッティングともにスケールは十分だけに、順調にいけば北信越を代表する選手となる可能性は高いだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所