コラム 2021.11.18. 17:29

次代のエース候補が踏み出した再出発の一歩 阪神・才木浩人が“聖地復帰登板”で得たもの

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苦境を乗り越えて…才木浩人が再出発の第一歩を踏みだした (C) Kyodo News

同世代の佐藤輝明と“対戦”


 聖地のマウンドに上がった背番号121。

 その姿は、チームメイトや首脳陣、マスコミ…見る者を釘付けにした。




 11月12日、一軍・二軍の野手が集合して行っている甲子園の秋季練習に、ただ一人の投手。

 力強く黒土を踏みしめてプレートに足をかけた阪神タイガースの才木浩人にとって、大事な“復帰登板”だった。

 「バッターに立ってもらって投げるのは本当にめちゃくちゃ久しぶりで…」



 昨年11月に右肘内側側副靭帯再建術および右肘関節鏡視下滑膜切除術を受け、育成契約となった。

 いわゆる「トミージョン手術」…。復帰には1年以上を要するとされるが、着実にステップを踏み、メスを入れて365日を経過した時点でフリー打撃登板ができるまで、リハビリ過程は進んでいた。


 小野寺暖と佐藤輝明に対して、カーブやスライダーも交えての49球。

 筆者は残念ながら、当日は鳴尾浜球場で取材にあたっていたため、実際に目にすることはできなかったのだが、同世代の佐藤輝からは4球連続で空振りを奪うシーンがあったと伝え聞いた。

 同じ兵庫県の出身で、高校時代に対戦はなかったものの、昨年8月のプロアマ交流戦で対戦。その時はセンターのフェンスに直撃する二塁打を放った佐藤に軍配が上がっていた。

 あの伸びのある才木浩人のストレートを、佐藤輝明が豪快に空振りする――。思わず、この日のハイライトを想像してしまっていた。


「めちゃくちゃ順調です!」


 高卒1年目の2017年に早々と一軍デビューを果たすと、翌2018年には当時の金本知憲監督の抜擢もあって、ローテーションの一角として6勝(10敗)を挙げて飛躍。次代のエース候補として一躍、期待は高まっていた。

 しかし、本格開花を遂げるはずだった3年目の2019年は3試合の登板に終わり、昨年は一軍登板なし。慢性的な痛みを抱えていた右肘の状態も大きく改善することはなく、手術に踏み切った。


 「ケガをして2年、3年経ってすごく長いリハビリ生活だったんですけど、その間に学ぶことはしっかり学びました。いろんな人に手伝ってもらいながら、助けてもらいながらなんとかここまで来れたという感じなので」

 久々の甲子園での登板を終えて、右腕は周囲への感謝も口にしながら、地道に歩んできた長く険しい道のりを少しだけ振り返った。


 しかし、まだまだ復活への“過程”であることは間違いない。

 「とりあえず今の段階でできることをしっかりやって、もうちょっと真っすぐの質だったり、変化球の精度だったりを上げていかないといけないので。身体の面ではなく、技術の面の方にもうちょっと目を向けてやっていけたらいいかなという感じ」

 本人にも焦りはなく、目の前のステップを着実に、踏み外すことなく前進していくつもりだ。

 ただ、次にこの聖地のマウンドに戻って来る時は「復活」…いや、「進化」を遂げた新たな才木浩人として帰ってくる決意もにじむ。


 フリー打撃登板から数時間後、ケアやトレーニングを終えて鳴尾浜に姿を見せた才木は、筆者の顔を見つけると、何か言いたげにニヤリと笑った。

 「今日は甲子園で見てくれてると思ったのになぁ…。でも、めちゃくちゃ順調です!」

 甲子園の空気をたっぷり吸いこんだ1日で得たもの、感じたものはひとつやふたつではないはずだ。


文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)



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