第27回:セ・リーグMVPが向かう先
21歳にしてヤクルト不動の4番に登りつめた村上宗隆は今年、セ・リーグ最年少でMVPを獲得した。6年ぶりのリーグ優勝と20年ぶりの日本一の栄冠は、この男の存在なしでは語れないだろう。来季はさらにどんな活躍を見せてくれるのか、今から楽しみだ。
「3割・30本・100打点」という数字が、村上にとって最低限の目標だった。今季は打率.278、39本、112打点という堂々たる成績を収めたが、村上本人は決して満足していなかった。
打率は3割を切り、39本で巨人の岡本和真と並んで本塁打王を獲得したが、あと1本で40本の大台に手が届かなかった。それだけに、来季は「3割・40本・100打点」という新たな目標が生まれた。
高津臣吾監督は村上について「本人もここで満足しているわけではないでしょうし、今年はすごくいいシーズンだったと思いますけど、また次、また次と成長していってほしいと思います」と、さらなる成長を促した。
二軍監督の時代から村上を見守ってきた指揮官の言葉は、大きな期待の裏返しだ。
村上自身、日本一のチームの4番となっても「続けることというのがすごく難しいことになるので、また続けられるように頑張ります」と、ここで歩みを止めるつもりは全くない。まだまだ進化し続けていく覚悟だ。
打撃3部門を極める
今季、セパ両リーグで3割30本に届いたのは、広島の鈴木誠也とオリックスの杉本裕太郎の2人のみ。鈴木は打率.317、38本、88打点、杉本は打率.301、32本、83打点という成績を残したが、打点に関してはともに100打点以上を挙げることはできなかった。
村上が掲げた最低ラインは、簡単に届く数字でないことは明らかだが、そこにさらに上乗せした40本塁打という高みに果敢に挑んでいく。
レギュラーシーズンを39本塁打で終えたあと「あと1本の壁はまだ大きいのかなと思いました。来年に向けてもっと追求して頑張りたい」と、来季への意気込みを語っていた。
1年目からイースタン・リーグで17本塁打を放ち、一軍初打席で初本塁打という快挙を成し遂げている村上。
4年目の今季、9月19日の広島戦(神宮)でプロ野球史上最年少での通算100号本塁打に到達するなど、ホームランアーチストとしての存在感は増すばかりだが、まだ18歳だった当時「ホームランへのこだわりもありますが、打率も残したい」と、きっぱりと口にしている。
さらには「チームに貢献するには、やはり打点を挙げることだと思う」と、打撃3部門への貪欲な姿勢を示していた。
MVPを受賞し「打てるものなら10割打ちたいですし、打てるものなら毎打席ホームランを打ちたい。究極は何でも打てるバッター」と、目指す先にあるのは究極の打者だ。もちろん現実的な数字ではないが、それを口にできるほどの実績を若くしてつくり上げてきた。
令和初の三冠王も狙える背番号55。「日本一の4番」になっても驕ることなく、さらなる高みへ臆することなく立ち向かっていく。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)