コラム 2021.12.28. 08:00

年の瀬と時代の波【白球つれづれ】

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2018年2月、巨人とホークスのOB戦を前に、野村克也さん(手前)と記念撮影する(左から)長嶋茂雄さん、張本勲さん、王貞治さん=宮崎市

レジェンドたちの卒業


 2021年も残りわずか。コロナ禍で行われた東京オリンピック・パラリンピックでは、日本人アスリートの活躍が熱狂を呼ぶ。野球界に目を向けると、メジャーで大谷翔平選手の二刀流が席巻。国内ではオリックスとの前年最下位同士の頂上決戦をヤクルトが制して高津臣吾監督が神戸の空に舞った。

 あわただしい年の瀬を前に、テレビ界では2人のレジェンドの“卒業”が発表され、話題を呼んだ。

 TBS系列では日曜朝の看板番組である「サンデーモーニング」から張本勲氏が、日本テレビ系列では土曜深夜に放送される「Going!」から江川卓氏が降板する。張本氏が23年の出演歴なら、江川氏は前身の「スポーツうるぐす」から数えて27年間もスポーツ番組の顔であり続けた。2人ともグラウンド上だけでなく、放送界でもひとつの歴史を作ったと言っていいだろう。

 「球界のご意見番」張本さんは現在81歳。“卒業式”には入団同期の王貞治ソフトバンク会長も駆けつけて長年の活躍を労った。セ・リーグが王、長嶋茂雄氏のON時代を謳歌した頃、パ・リーグの代表的な打者だったのが野村克也氏と張本氏だ。

 ノムさんが他界し、ONが病魔に苦しむ中で張本さんだけは未だに血色もよい健康体である。その秘訣をうかがったところ、「毎日、ウォーキングを欠かさないから」と語っている。加えて、王さんは「思ったことを内に溜めないで、何でもズバズバと言える」と、親友の人となりを評した。王さんが細やかな気を遣う「気配りの人」なら、張本さんは「唯我独尊の人」でもある。

 番組内でも、歯切れのいいコメントにトレードマークの「喝!」を連呼して一刀両断。一方では数々の問題発言に、一部では「炎上商法」の批判も浴びた。

 特にスター選手のメジャー流失には苦言を呈することが多く、ダルビッシュ有投手(現パドレス)や上原浩治氏からは「異議あり」と反論を食うことも。良くも悪くも物議を醸す発言が許されるのは張本さんの存在感の大きさがあったからだろう。

 番組の最後には、イチロー氏がビデオメッセージを寄せている。

 「ハリー、お疲れ様」の言葉にすかさず「喝!」で応え、年長者を敬っていないと苦言を忘れない。共に一時代を築いた安打製造機として認め合っている。米国生活の長いイチローさんからすれば、張本さんに親しみを込めて米国流で呼んだもの。それでも「喝!」を忘れないところが、ご意見番のフィナーレにふさわしかった。


球界の新陳代謝


 「昭和の怪物」江川さんも気づけば66歳になる。

 巨人入りの意思を曲げずに野球浪人。クラウンライター(現西武の前身)、阪神の1位指名を蹴って、トレードの形で阪神から巨人に電撃移籍した「江川騒動」も今は昔の話だ。しかし、江川さんのその後の人生にとって、この騒動は最後まで影響を及ぼすことになる。

 「時間が出来たなら、巨人のコーチ、あるいは監督としてやってもらえる可能性も増えた」と、巨人の原辰徳監督は番組の“卒業”に寄せてラブコールを送っている。これに対して「ほぼ(可能性は)ない」と答えた江川さんだが、その背景には根深い事情もある。

 入団時の騒動は人権問題として国会でも取り上げられた。一方で読売側の強引な獲得策には世間の反発も強く、親会社である読売新聞の不買運動にまで発展して一時、販売部数を落とす事態となった。こうした経緯もあり、球団上層部の江川への評価は決して高くなく、むしろ系列社である日本テレビの氏家斎一郎社長(当時)が江川を可愛がり、引退後の路線が敷かれていった。

 第二次原政権の2011年には「江川ヘッドコーチ」を模索した時期もあった。だが、これも当時の清武英利球団代表の反発で頓挫している。一説には原監督の独断であり、江川さんが高額の年俸を要求したためにご破算になったと言う噂まで流れた。現在の原監督は実質GM職も兼ねる全権指揮官だけに、突如、可能性の再燃もゼロではないが、そのハードルが高いのも事実だ。

 大物たちの“降板”には時代の波も無縁ではない。

 近年、テレビ業界にも不況の風が吹き荒れている。若者を中心としたテレビ離れやネットの移行で広告の出稿に影響が出ている。さらにコロナ禍で経営は悪化。野球界に目を向けても地上波の中継は年々減少傾向にある。

 こうした緊縮財政下で新たな番組作りを模索すれば、高額出演料の必要な大物より、若手のフレッシュな人材を求めるのは必然である。

 今オフには西武の松坂大輔投手が引退、早速日本シリーズでは連日のようにゲスト解説に呼ばれた。昨年の引退組では前阪神の藤川球児氏の解説が現場感覚に近く、歯切れもいいと好評だ。世間の目はすでに40代前半の彼らに向けられている。

 日本ハムには新庄剛志新監督が誕生、「BIG BOSS」旋風が吹き荒れる。球界に限らず、新陳代謝の波はやって来る。

 昭和の時代がまた一歩遠のき、令和の変革が求められる。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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