コラム 2021.12.30. 07:45

セ・リーグ「ルーキー通信簿」 即戦力・将来性の両面から見た高評価は…?

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超ハイレベルな新人王レースを制した広島・栗林良吏(右) (C) Kyodo News

2020年ドラフト指名選手の活躍を振り返る!


 11月27日(土)、ヤクルトの20年ぶり6度目の日本一で幕を閉じたプロ野球の2021年シーズン。

 12月15日(水)にはシーズン総決算の『NPB AWARDS 2021』も開催され、野球界は本格的なオフシーズンに入った。




 新年を迎える前にあらためて今季を振り返ってみると、プロ野球はとにかくルーキーの活躍なしに語ることができないほど、各球団でフレッシュな力の躍動が目立ったように思う。

 先述した『NPB AWARDS 2021』でも、パ・リーグの新人王は高卒2年目の宮城大弥(オリックス)だったが、セ・リーグはプロ1年目からクローザーとして大活躍を見せた栗林良吏(広島)が新人王を受賞。

 さらにセ・リーグでは牧秀悟(DeNA)に佐藤輝明と伊藤将司、そして中野拓夢(いずれも阪神)が新人特別賞を受賞。パ・リーグでも伊藤大海(日本ハム)が新人特別賞を獲得しており、新人王級の活躍をした選手がこれだけ出たシーズンというのは過去を振り返ってもなかなかないだろう。



 ということで今回は、1年の終わりに各球団の“プロ1年生”たちに注目。

 「即戦力」という意味で目立った選手は数多くいたが、ここでは「将来性」という観点も含めて、2020年のドラフトからプロ入りした選手たちのプレーぶりを採点してみたい。

 まずはセ・リーグの6球団から。なお、評価はAからCまでの3段階とした。


東京ヤクルトスワローズ


☆即戦力=B
☆将来性=B

1位:木澤尚文(投手/慶応大)
2位:山野太一(投手/東北福祉大)
3位:内山壮真(捕手/星稜高)
4位:元山飛優(内野手/東北福祉大)
5位:並木秀尊(外野手/獨協大)
6位:嘉手苅浩太(投手/日本航空石川高)

育1位:下慎之介(投手/高崎健康福祉大高崎高)
育2位:赤羽由紘(内野手/BC信濃)
育3位:松井 聖(捕手/BC信濃)
育4位:丸山翔大(投手/西日本工大)


 1位と2位で指名した木澤尚文と山野太一の投手2人が二軍でも結果を残すことができなかったのは大きな誤算だったが、3位以下の選手の健闘もあって、トータルで見るとまずまずという評価となった。

 即戦力としてプラスをもたらしたのが、4位の元山飛優だ。開幕一軍入りを果たすと、3月中に早くもプロ初本塁打を記録。シーズン終盤に死球を受けた影響で戦線離脱したものの、97試合に出場して53安打と、ショートの準レギュラーと言える成績を残した。

 5位の並木秀尊も、出場機会こそ少なかったものの、4盗塁と持ち味のスピードを見せている。そして、二軍で目立ったのが3位の内山壮真と育成2位の赤羽由紘だ。

 内山は74試合に出場して8本塁打を放つ活躍を見せて、4月には早くも一軍を経験。赤羽も6本塁打とパンチ力をアピールしている。内山は高卒、赤羽も今年で21歳とまだまだ若いだけに、チームの将来を背負って立つ存在となる可能性は十分にありそうだ。


阪神タイガース


☆即戦力=A
☆将来性=B

1位:佐藤輝明(内野手/近畿大)
2位:伊藤将司(投手/JR東日本)
3位:佐藤 蓮(投手/上武大)
4位:榮枝裕貴(捕手/立命大)
5位:村上頌樹(投手/東洋大)
6位:中野拓夢(内野手/三菱自動車岡崎)
7位:髙寺望夢(内野手/上田西高)
8位:石井大智(投手/四国IL・高知)

育1位:岩田将貴(投手/九産大)


 佐藤・伊藤・中野が新人特別賞を受賞したように、「即戦力」という意味では12球団でもトップと言える結果を残した。伊藤と中野は社会人からのプロ入りだったことを考えても期待以上の働きであり、特に中野は6位という低い順位だったこともあって、まさに“会心の指名”だったと言える。

 佐藤は後半戦の失速こそあったものの、プロ1年目からシーズン24本塁打は見事というほかない。まだまだポテンシャルの底を見せていないことから、将来性でも高い評価をつけられる。

 来季以降で楽しみなのが、5位の村上頌樹と7位の髙寺望夢だ。村上は一軍ではほろ苦いデビューとなったものの、二軍で10勝1敗と圧倒的な成績を残している。高い制球力はプロでも既に上位のレベルにあり、ストレートの力が出てくればローテーション争いに加わる可能性は高い。

 髙寺も二軍で打率1割台と苦しんだものの、秋に行われたフェニックスリーグでは5割を超える打率を残してアピールした。特に高寺は唯一の高卒ルーキーだけに、今後のさらなる成長に期待がかかる。


読売ジャイアンツ


☆即戦力=C
☆将来性=B

1位:平内龍太(投手/亜大)
2位:山崎伊織(投手/東海大)
3位:中山礼都(内野手/中京大中京高)
4位:伊藤優輔(投手/三菱パワー)
5位:秋広優人(内野手/二松学舎大付高)
6位:山本一輝(投手/中京大)
7位:萩原 哲(捕手/創価大)

育1位:岡本大翔(内野手/米子東高)
育2位:喜多隆介(捕手/京都先端科学大)
育3位:笠島尚樹(投手/敦賀気比高)
育4位:木下幹也(投手/横浜高)
育5位:前田研輝(捕手/駒大)
育6位:坂本勇人(捕手/唐津商高)
育7位:戸田懐生(投手/四国IL・徳島)
育8位:阿部剣友(投手/札幌大谷高)
育9位:奈良木陸(投手/筑波大)
育10位:山崎友輔(投手/福山大)
育11位:保科広一(外野手/創価大)
育12位:加藤 廉(内野手/東海大学海洋学部)


 1位の平内龍太は一軍で3試合の登板に終わり、社会人出身である4位の伊藤優輔もトミー・ジョン手術を受けて来季からは育成契約となるなど、「即戦力」という意味ではセ・リーグの中でも最も厳しい結果となった。

 一方で、将来性に関しては楽しみな選手が少なくない。特に大きいのが、高卒野手の秋広優人と中山礼都の2人だ。秋広は春のキャンプから強烈にアピールし、二軍でもシーズンを通じて起用されて63安打、8本塁打をマーク。まだまだ粗さはあるものの、スケールの大きいバッティングが目立った。

 中山は開幕当初、三軍スタートとなったが、夏場以降は二軍で二遊間に定着。44試合の出場で51安打、打率.309と見事な成績を残している。

 投手では育成7位の戸田懐生が支配下登録を勝ち取り、二軍でチーム最多となる8勝をマーク。今年で21歳とまだまだ若いのもプラス要因だ。彼ら3人が主力になれば、一気に将来は明るくなるだろう。


広島東洋カープ


☆即戦力=A
☆将来性=C

1位:栗林良吏(投手/トヨタ自動車)
2位:森浦大輔(投手/天理大)
3位:大道温貴(投手/八戸学院大)
4位:小林樹斗(投手/智弁和歌山高)
5位:行木 俊(投手/四国IL・徳島)
6位:矢野雅哉(内野手/亜大)

育1位:二俣翔一(捕手/磐田東高)


 2020年の森下暢仁に続いて、栗林が新人王を獲得。新人最多タイ記録となる37セーブはもちろんだが、奪三振率13.93、WHIP0.97、セーブシチュエーションでの失敗0といった数字も見事というほかない。

 さらに2位の森浦大輔も54試合に登板して17ホールド、3位の大道温貴も4勝をマークするなど、大学・社会人から入団した投手は期待通りの活躍を見せており、「即戦力度」では阪神に次ぐ結果だったと言えるだろう。

 ただ、即戦力投手を重視したドラフトだったこともあって、将来性については少し厳しい評価となった。その中で大きな希望の星と言えるのが、支配下で唯一の高卒ルーキーとなった小林樹斗だろう。

 夏場以降は二軍で結果を残し、11月には一軍で先発デビューも飾っている。2019年から3年連続で大学生・社会人中心の指名となっているだけに、チームの将来を考えても小林の肩にかかる期待は大きい。


中日ドラゴンズ


☆即戦力=C
☆将来性=B

1位:高橋宏斗(投手/中京大中京高)
2位:森 博人(投手/日体大)
3位:土田龍空(内野手/近江高)
4位:福島章太(投手/倉敷工高)
5位:加藤 翼(投手/帝京大可児高)
6位:三好大倫(外野手/JFE西日本)

育1位:近藤 廉(投手/札幌学院大)
育2位:上田洸太朗(投手/享栄高)
育3位:松木平優太(投手/精華高)


 2位の森博人がシーズン終盤に一軍に昇格して10試合に登板したものの、それ以外で一軍戦力になった選手はおらず、「即戦力」としての評価はCと言わざるを得ないだろう。ただ、ドラフトの時点から森以外は完全に将来を考えての指名という印象は強く、ある意味想定内の結果とも言える。

 その将来性を考えて少し心配なのが、1位の高橋宏斗だ。二軍では14試合に登板したものの未勝利に終わり、防御率も7点台と予想以上に苦しんだ印象。ボール自体には良いものはあるだけに、来季以降の飛躍に期待したい。

 一方、同じ高卒ルーキーでも順調な滑り出しを見せたのが、3位の土田龍空だ。二軍での打率.240ながら高い守備力とスピードが評価され、9月には一軍に昇格。プロ初安打もマークしている。ショートのレギュラー候補として、来季以降も楽しみな存在である。


横浜DeNAベイスターズ


☆即戦力=A
☆将来性=C

1位:入江大生(投手/明大)
2位:牧 秀悟(内野手/中大)
3位:松本隆之介(投手/横浜高)
4位:小深田大地(内野手/履正社高)
5位:池谷蒼大(投手/ヤマハ)
6位:高田琢登(投手/静岡商高)

育1位:石川達也(投手/法大)
育2位:加藤 大(投手/横浜隼人高)


 「即戦力」はAをつけたが、完全に牧1人の評価と言える。

 外国人選手の来日が遅れるという事情はあったものの、開幕からヒット、長打を量産。夏場以降も大きく成績を落とすことなく、シーズン最終盤で打率を大きく上げたという点も、並のルーキーではない。例年であれば、余裕で新人王を獲得していたことは間違いないだろう。

 一方で、気になるのは育成まで含めて6人を指名した投手陣だ。

 1位の入江大生は故障で早々に離脱。二軍でわずかに目立ったのが育成1位の石川達也だけ。野手では4位の小深田大地が二軍ではチームトップとなる100試合に出場するなど、1年を通じてプレーし続けたことはプラスだが、全体的な将来性には不安が大きいというのが現状である。


☆記事提供:プロアマ野球研究所



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