コラム 2022.01.06. 07:08

リベンジなるか…?再びドラフト戦線に浮上する“指名漏れ”社会人選手

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船迫大雅(左)と吉村貢司郎(右)が圧巻の投球 [写真=プロアマ野球研究所]

悔しさをバネにして…


  11月28日から12月9日まで東京ドームで行われた『第92回都市対抗野球』。

 今年も五輪の影響により真冬の開催となった社会人野球の大一番は、東京ガスの初優勝で幕を閉じた。




 2年ぶりにブラスバンドやチアリーダーといった応援団が復活したこともあり、昨年以上の大盛況となった今大会。2022年の秋を見据え、ネット裏には各球団のスカウト陣も視察に訪れていた。

 過去2回のコラムでは、今年から指名解禁となるドラフト候補を中心にレポートしてきたが、今大会は2021年秋のドラフト指名が見送られながらも素晴らしいプレーを見せてくれた選手が少なくなかった。

 そこで今回は、今秋再びドラフト戦線へ浮上してくることが期待される“ドラフト解禁済”の選手たちの活躍ぶりを取り上げて行きたい。



躍動したサイドハンド


 まずは投手から。「なぜ指名がなかったのか?」という声が多く聞かれたのが、船迫大雅(西濃運輸)と吉村貢司郎(ENEOS=東芝から補強)の2人だ。

 船迫は初戦の日本製鉄かずさマジック戦に先発すると、いきなり3者連続三振をマーク。3回にソロを浴びて1点は失ったものの、5回を投げて被安打3、四死球は0。8奪三振という見事な内容で先発の役割を果たした。

 昨年まで140キロ台前半がアベレージだったストレートは、今大会で最速150キロをマーク。跳ねるような躍動感のあるサイドスローから投げ込むのが特徴で、ホップするような球質で伸びてくるボールの勢いは相当なものがある。

 140キロを超えるツーシーム、130キロ台のスライダーもストレートと腕の振りが変わらず、どちらも打者の手元で鋭く変化する。カウント球としても決め球として使えるボールだ。

 今大会で確認できた変化球はこの2つだけだったが、それでここまで三振を奪えるというのは、全てのボールの質が高い証拠である。また、短いイニングであれば、さらなるスピードアップが期待できるはずだ。

 今年で社会人4年目の26歳となるため、プロ入りへのハードルはかなり高くなるとはいえ、サイドからこれだけのスピードボールと質の高い変化球を投げられる投手は貴重な存在だ。引き続き指名リストに入れることを検討している球団はあるだろう。


大会最速「153キロ」をマーク


 一方、補強選手としての出場となった吉村も、船迫に負けないだけのインパクトを残した。

 2回戦の日本通運戦で先発すると、予選でチーム打率3割を大きく超える数字を残した強力打線を相手に、7回を被安打3、1失点の快投を見せてチームを勝利に導いた。

 フォームはオーソドックスなオーバースロー。国学院大時代と比べ、体重移動のスピードと腕の振りの力強さが明らかに増した。それに伴って、ストレートの勢いも大幅にアップした印象を受ける。

 日本通運戦では、今大会で登板した全投手の中で益田武尚(東京ガス)と並ぶ最速153キロをマーク。投じたストレート56球のうち42球が150キロを超えており、その平均球速は150.5キロにまで達した。

 この数字はプロでも間違いなく上位クラス。それでいてストレートが速いだけでなく、コーナーにしっかりと投げ分ける制球力と、多彩な変化球も備えている。

 今年で3年目の24歳となるが、早生まれということもプラスになりそう。同じ東芝からは岡野祐一郎(現・中日)が社会人3年目にドラフト3位という高い順位でプロ入りしている。2年目の時点を比べると、吉村の方があらゆる面で上回っており、この状態を維持できれば上位指名の可能性も十分にある。


総合力の高さが光った大型右腕


 吉村と同じ大学卒2年目の投手では、小孫竜二(NTT東日本=鷺宮製作所から補強)や松本賢人(伏木海陸運送=バイタルネットから補強)、鈴木大貴(TDK)も150キロ以上のスピードをマークしてアピールしたが、総合力の高さと今年の成長ぶりが一際目立ったのが前田敬太(日本通運)だ。

 専修大時代は、投手としてのスケールはあったが、安定感には欠けていた印象。社会人1年目もその印象は変わらなかった。

 だが、今年は登板を重ねるごとに着実に成長している。都市対抗二次予選では、JFE東日本の強力打線を相手に8回無失点の好投を見せ、チームの本選出場に大きく貢献。

 本大会でも初戦のパナソニック戦で先発を任されると、6回1/3を投げて無失点。7奪三振と見事なピッチングを見せて、自身として全国大会初勝利をマークした。

 身長185センチ・体重88キロの堂々とした体格から投げ込むストレートは、コンスタントに145キロを超える。スライダーやカットボール、フォークといった速い変化球に加え、110キロ台のカーブで緩急を使えるようになった点も大きい。典型的な大器晩成型の大型右腕であり、まだまだ成長が見込めるのも魅力だ。


まだまだプロ入りのチャンスがある有力野手


 野手で特に目立ったのは上甲凌大(伯和ビクトリーズ/捕手)と中川智裕(セガサミー/遊撃手)、藤井健平(NTT西日本/外野手)、山本卓弥(Honda熊本/24歳)の4人だ。


 上甲は初戦の四国銀行戦でいきなり2打席連続本塁打を放つ大暴れ。チームを勝利に導いている。

 スローイングにもう少し速さが欲しいが、高校卒3年目とまだまだ若く、“打てる大型捕手”として楽しみな存在だ。


 中川は予選で23打数無安打、11三振と大不振。それも原因となって有力視されていたドラフト指名を逃したが、本大会は4試合で満塁弾を含む2本塁打・5打点と復調。打撃賞にも選ばれた。

 まだ外の変化球に対する脆さはあるが、遠くへ飛ばす力は十分。ショートの守備で見せるスローイングはプロでも見ないレベルだ。貴重な右打ちの大型内野手だけに、来年以降もマークする球団は出てくるだろう。


 藤井は2試合で安打は1本ずつだったとはいえ、しっかり四球を選んで中軸としての役割を果たした。

 ライトから見せる強肩と俊足でもアピールしており、3拍子全てが高レベルだ。


 山本は2回戦の伯和ビクトリーズ戦でライトへの2ランを含む4安打の大活躍。

 その後も強打のトップバッターとして打線を牽引し、チームの準優勝に大きく貢献した。


 一度“指名漏れ”となった野手は投手以上にドラフト指名を掴むことが厳しいといわれる。しかしながら、今年のドラフトでは大学卒3年目の野村勇(NTT西日本/ソフトバンク4位)や末包昇大(大阪ガス/広島6位)、上川畑大悟(NTT東日本/日本ハム9位)といったところが指名を受けた。

 ここで挙げた4人も、今年のプレー次第でまだまだプロ入りのチャンスはある。


☆記事提供:プロアマ野球研究所



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