「めちゃくちゃ犬が好きだから」
「愛犬家」の意味を今一度考えさせられたのは、タイガースの秋山拓巳が口にした言葉を聞いたからだ。
「めちゃくちゃ犬が好きだから、というのが一番のきっかけ。犬のために何かできることがないかなというのはずっと思っていて」
1月10日、自主トレの合間を縫って訪問したのは、兵庫県篠山市にある「アニマルレフュージ関西(篠山アーク)」。
様々な理由で保護された犬や猫などの動物の、社会化トレーニングや里親探しなどの活動を行っている特定非営利活動法人だ。
今回、秋山は日本初の動物関連団体への寄付サイトを運営する公益社団法人「アニマル・ドネーション」に100万円を寄付。篠山アークにも、その社会貢献活動の一環として足を運んだ。
「僕がやれること、やりたいこと」
プロ入り前は実家で雄のシーズー犬「ミニーちゃん」を飼っており、「球場に連れてくる家族のワンちゃんも触りにいっちゃう」と明かすほど、犬には目がない右腕。
日頃からYouTubeなどで様々な犬種の動画をチェック。ただ、愛くるしい姿だけでなく“暗部”も見えてきた。
愛情を受けるペットたちがいる一方で、保護される犬たちも少なくない現実。飼うことの責任をあらためて感じたという。
「飼いたいけど飼えないという僕の職業柄、どうしても家にいる時間がない。けど現状、こうやって(ペットを)手放す方がいる。こうして保護施設に来ている犬たちもいるので、そういうことをみなさんにもっと知って欲しいというのが一番の理由。今の現状を知ってもらいたくて始めた」
野球界の裾野を広げたり、病気に苦しむ人たちのサポートをしたりと、プロアスリートの社会貢献活動には様々な形がある中で、「自分らしいことをしたいなとはずっと思っていたので。僕がやれること、やりたいことってこれかな」と動物愛護に目を向けた。
セ唯一の「3年連続2ケタ」へ
昨年、2年連続の2ケタ勝利を挙げ、契約更改では13年目で年俸1億円に到達。チーム内でも年長者となり、発信する言葉にも責任が伴ってくるタイミングで、自身初の社会貢献活動の発表になった。
篠山アークでは、体重47キロの大型犬・ローデシアンリッジバックの「リベルくん」とサッカーボールを使ってふれ合い、スタッフからはどのような経緯で保護施設にやってきたかなど説明も受けた。
「思っていたより元気な子(犬)たちが多かったので。もっとおびえて触ることができないとか、そういうイメージを持っていたんですけど、施設の方も(里親に)迎えられるように人間としっかり生活できるようにしてくれているのをすごく感じた。迎えてくれる家庭、家族とかが増えてほしい」
動物たちを取り巻く状況に危機感を抱き、救いの手を差し伸べる。
「今後活動していく中でも、よりやりたいことが明確になりましたし良いきっかけをいただけたなと思います」
新たなモチベーションを胸に、今季セ・リーグの投手では唯一挑戦権を持つ「3年連続2ケタ勝利」を目指すシーズンへの準備が始まる。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)