第28回:リリーフの重圧知る高津監督の手腕
2月からプロ野球はいよいよキャンプイン。昨年、日本シリーズの激闘を制したヤクルトは、例年以上にコンディションを整えながら臨む春季キャンプになりそうだ。ケガ人を出さずにシーズンに向けての良い準備期間とする。
そんな中、延長12回制の復活に向けて高津臣吾監督はどのような対策を施すのか、投手陣の再整備にも注目だ。今回は、20年ぶりの日本一の原動力となったリリーフ陣に着目してみた。
昨季はリーグ新記録の50ホールドを挙げ、最優秀中継ぎ投手に輝いた清水昇、自己最多の64試合に登板して28ホールドを挙げた今野龍太らの活躍は目覚ましく、クローザーのマクガフにつなぐ重要な役割を担った。
そのマクガフは昨季、66試合に登板してリーグ3位の31セーブをマーク。セーブ失敗などのケースもあったが、チームの命運を託され最後のマウンドへ上がるプレッシャーは想像に難くない。今季は清水らと同様に勤続疲労が心配されるが、万全な状態で試合に臨むことができれば、持っている力を十分に発揮してくれるはずだ。
高津監督は、日本シリーズ第1戦で逆転サヨナラ打を許した守護神に対して「すごく難しいイニングを任せているので。全力でいった結果だと思います」と、責めることはしなかった。
現役時代は日米台韓のチームでクローザーとして君臨。日米通算で313セーブを挙げ、2022年の「野球殿堂入り」も果たした。そんな指揮官だからこそ、リリーフ投手の重圧を誰よりも理解している。その手腕を発揮した昨季の戦いぶりだった。
指揮官が説く救援の使命
「今日やられても明日マウンドに立たなければいけないのが、リリーフの仕事」
リリーフ投手の使命は、いかに気持ちを切り替えて次のマウンドに上がることができるか。高津監督は就任1年目にこんな言葉を述べた。
チームの浮上を託され、投手陣再建が大きな課題だっただけに、リリーフ陣に厳しくもあったが、その裏では大きな期待をかけてマウンドに送り出してきた。
守護神の座を奪われ、苦しんでいた石山泰稚にも中継ぎでチャンスを与え、日本シリーズ第3戦では7回二死満塁という局面で起用すると好リリーフ。背番号12に復活を促した。
昨季は2位の阪神と最後までリーグ優勝を争う中、先発も務めた田口麗斗やスアレスをシーズン終盤にブルペン待機させ、他のリリーフ陣の負担軽減につなげた。
ケガにより途中離脱してしまったが、シーズン前半は近藤弘樹を大事な場面で抜擢。キャリアハイの22試合に登板した近藤は、その起用に見事に応えてみせた。
また、威力あるストレートが武器の星知弥、大卒2年目の大西広樹、貴重な左腕としてブルペンを支えた坂本光士郎、サイドスローに転向した大下佑馬らの起用法も光った。彼らが今季さらに磨きのかかった投球をすれば、後ろはさらに盤石となる。
ドラ3柴田大地「切り替えはとても必要」
新加入では、将来のクローザー候補としてドラフト3位ルーキーの柴田大地に注目だ。柴田には、高津監督が口にしていたリリーフ投手の気持ちの切り替えについて尋ねてみた。
「切り替えはとても必要なことだと思っています。一喜一憂しないこともそうですし、しっかりと反省して、何で打たれたのかという原因を探って、自分で課題を見つける。見つからない場合は周りの人に聞いて、自分が良い方向に向いていけば良いかなと思います」
日体大3年の3月にトミー・ジョン手術を経験。その後リハビリに励み、社会人の日本通運では最速156キロのストレートに加え、140キロ超えのスプリットが右腕の武器となった。
打たれても這い上がり、マウンドに向かう。そんなクローザーとしての精神を持ち合わせた柴田には、1年目から一軍の舞台で力を発揮してほしい。
現状では今季もマクガフが最後の砦となるが、完全復活を目指す石山にもキャンプ、オープン戦を通じてチャンスが与えられるはずだ。
連覇へ向けて、今季はどんな継投策が見られるのか。目の前の一戦に集中し、勝っても負けてもあらたな気持ちで試合に臨んできたチームは、今年も全力で相手チームにぶつかっていく。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)