日本人2人目のMVP獲得、史上19人目の“満票”受賞
2021年、メジャーリーグを最も盛り上げた男と言っても過言ではないだろう。
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平。二刀流として開幕からスタメンを張り続け、負傷者リスト入りすることもなくフルシーズンを完走。投手として9勝を挙げる活躍も見せたが、やはり打者としての貢献度が高い一年となった。
打者としては155試合に出場。打率.257(537-138)、46本塁打でちょうど100打点。盗塁も26個を記録と、打って走って躍動した。
最終的には2本差の3位に終わったが、ブルージェイズのゲレロらとシーズン最終盤までア・リーグ本塁打王争いを繰り広げ、打点も自己ベストを更新する「100」をマーク。
日本人選手としては、2001年のイチロー氏(マリナーズ)以来、20年ぶりとなる史上2人目のMVPも獲得。史上19人目となる“満票での選出”というおまけ付きだった。
進化の裏にあった数字の変化
本塁打が増えた最大の理由は、やはり「強い打球が増加した」ことだろう。
初速が95マイル(152.9キロ)を超える打球は「Hard Hit(ハードヒット=強い打球)」とされ、全打球に対する率は「Hard Hit%」と呼ばれている。
大谷のそれを1年目の2018年から順番に並べると、「49.1%」「46.8%」「42.7%」と下降線を辿っていた。ところが、4年目の昨季は「53.4%」に上昇。一気に自己ベストを更新する50%に乗せた。
この数字は、メジャー全体でも8位という立派な数字。進化した打者・大谷は、メジャーが誇る怪力打者たちと肩を並べる打球を極めて高い確率で放っていたことになる。
さらに、本塁打の数を押し上げた要因の一つが「フライボールの増加」だろう。
全打球に対するフライ率を1年目からの順番に並べると、「32.9%」「24.5%」「33.0%」そして昨季が「40.6%」。2021年の大谷は、打ち返した打球の4割超が本塁打につながりやすいフライボールだった。
開幕からの大活躍もあり、大谷は自身初のオールスター本塁打競争にも出場。1回戦で敗退したが、平均飛距離は1回戦に登場した8選手のなかで堂々のトップ。前半戦で唯一30本塁打以上を放った長距離砲としての面目も保った。
終盤の失速の要因は?
ただし、本塁打競争でのフルスイングの連続は、多少なりとも大谷に悪い影響があったのかもしれない。後半戦は大きく数字を落とすことになる。
オールスター前後の成績を比較すると、前半戦は84試合で打率.279・33本塁打・70打点。折り返し地点では本塁打王と打点王の二冠も視野に入れていたが、後半戦は71試合で打率.229・13本塁打・30打点と失速した。
先に述べたように、2021年の大谷は強い打球をより高い確率で、より高く飛ばすことができており、結果的に本塁打が増加した。一方で、フルスイングのあまりバットが空を切る確率もやや高かった。
スイングした時にバットに当てる「コンタクト率」を見ると、これが自己ワーストの「66.9%」。3年目までは70%以上を維持していたが、一発と引き換えに空振りは増えていた。
日本人離れした大谷のパワーなら、フルスイングでなくとも、バットに当てることができればスタンドインは難しくないはず。
今季はもう少し確実性を上げ、昨季以上にチームに貢献したいところだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)