“ある出来事”を境に成績が下降
昨季が区切りのメジャー10年目だったダルビッシュ有。
自身4チーム目となるパドレスでは、移籍初年度からローテーションの中心として最低でも2ケタ勝利を挙げ、チームを優勝に導くことが期待された。
チームは夏場までジャイアンツとドジャースとの三つ巴の争いを展開したが、8月中旬あたりから急失速。
同月10日時点で最大「18」あった貯金は9月下旬には「0」となり、最終的には借金「4」のフィニッシュ。
地区優勝したジャイアンツから28ゲームもの差をつけられ、地区3位という結果に終わった。
優勝どころかプレーオフ進出を逃したチームの中で、戦犯の一人として名指しされたのがダルビッシュだ。
シーズン成績を振り返ると、チーム2位の30試合に先発して8勝11敗、防御率4.22。最低限の2ケタ勝利にも届かず、防御率は3年ぶりに4点台を記録した。
ただし、6月末時点の成績を見ると7勝2敗で防御率2.44。最初の3カ月間はエース級の働きを見せていたことがわかる。ところが、ある出来事をきっかけに大きく潮目が変わった。
6月下旬、メジャーリーグは投手による粘着物質の不正使用の取り締まりを強化する取り組みを始めた。それがダルビッシュの不調が始まる時期と重なっている。
シーズン途中に始まった新たな取り組みも影響したのか、ダルビッシュの7月以降の成績は1勝9敗、防御率6.65。まさに天国から地獄へとたたき落とされてしまった。
“登板間隔”で成績に差
シーズン後半になって目立ったのは、「ストレート系(フォーシーム+シンカー)の投球割合が増えた」ことだ。
6月までは全体の26.3%と4球に1球程度だったのが、7月以降は35.2%に増加。変化球のレパートリーは豊富な投手だけに、もう少し相手打者に的を絞らせない配球をしても良かっただろう。
一方で、フォーシームの球速は前年から大きく低下している。
平均球速は12試合の登板で8勝した2020年の95.9マイル(154.3キロ)から94.5マイル(152.1キロ)に。被打率自体は悪くなかっただけに、フォーシームの威力を取り戻したいところ。
ただし、年齢的にはより変化球に頼らざるを得なくなっていくかもしれない。
現在35歳のダルビッシュにとって、「登板間隔」も重要な要素となっていくだろう。
昨季はメジャーで主流の中4日での登板時に2勝5敗、防御率5.08と打ち込まれていたが、中5日だと4勝4敗、防御率4.04。さらに中6日以上空けたときは2勝2敗、防御率2.57と、その差は明らかだった。
今季は中4~5日での登板時も安定した投球を見せられるだろうか。
パドレスでの2年目は、ファンの目もより厳しくなるだろう。
2006年以来の地区優勝に向けて、ダルビッシュの活躍は必要不可欠だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)