エースとして期待がかかるも…
2016年に加入したドジャースで4シーズンを過ごし、2019年のオフにツインズに移籍した前田健太。
新型コロナの影響で短縮シーズンとなった移籍初年度の2020年には、ア・リーグのサイヤング賞投票で2位に食い込む活躍を見せた。
大きな期待を背負って迎えた昨季は開幕投手に抜擢され、2試合目の登板で初勝利を挙げた。
ところが、その後は安定感を欠く投球が続き、8月に右前腕に張りを訴え負傷者リスト入り。
9月にはトミー・ジョン手術を受け、現在はリハビリ生活を送っている。
「登板間隔」に問題あり?
6勝1敗の好成績を残した2020年は、登板した11試合中8試合でクオリティースタート(QS=6投球回以上で自責点3以下)を記録していたが、昨季は21試合中、QSはわずか5試合。好投していても球数がかさみ、なかなか6イニングを投げきることができなかった。
前田にとって不運だったのは、ローテーションの巡りが悪く、本拠地ターゲット・フィールドでの登板が少なかったことだろう。
敵地では14試合に登板も、本拠地では半数の7試合。敵地での4勝3敗、防御率6.06に対し、本拠地では2勝2敗、防御率2.13とその違いは明らかだった。
また、成績急落の要因の一つに「間隔を空けすぎての登板が多かった」こともあったかもしれない。
サイヤング賞2位だった2020年は、シーズン最初の登板を除く全10試合が中4~5日での登板だった。中6日以上は一度もなく、一定のリズムで短縮シーズンを過ごしていた。
ところが、昨季は中6日以上空けての登板が増加。開幕戦登板時を除く20試合中8試合が中6日以上空けての登板で、中4~5日は12試合だった。
前田にとって間隔が空きすぎた時はリズムも悪く、8試合で0勝3敗、防御率は8.41。中4~5日時の6勝2敗、防御率2.84とは大きな差があった。
加えて、「ストレートの威力が落ちた」ことも不振に拍車をかけた。
過去3年の前田が投じたフォーシームの平均球速を比較すると、メジャーで最高だった2019年の92.1マイル(148.2キロ)から、2020年は91.6マイル(147.4キロ)、そして昨季は90.6マイル(145.8キロ)と、徐々に下がっている。
「フォーシームの被打率」を見ても、2020年は.086(35打数3安打)で、長打は二塁打1本だけだったが、昨季は.297(91打数27安打)。長打の数は被本塁打6本を含めて合計11本を数えた。
今年4月で34歳を迎え、年齢的には中堅からベテランの域に差し掛かる。
今季中の登板を視野に入れているようだが、本格的に復帰するのは2023年になるだろう。前田はプロ入り後初といっていい試練を乗り越え、進化した姿を見せてくれるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)