コラム 2022.02.08. 07:08

コツコツやった者は報われる プロ野球界の「超遅咲きヒーロー列伝」

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元阪神・岡崎の13年目の初アーチは2番目の遅咲き記録。では1位は…? (C) Kyodo News

入団から14年目、32歳の初本塁打


 プロ入り後、なかなか結果を出せないでいた選手が、苦節10何年もの努力の末、初めてスポットライトを浴びる…。

 時として、そんな“超遅咲き”のヒーローが現れるのも、プロ野球の醍醐味のひとつだ。




 最初は本塁打の話題から紹介しよう。入団から初本塁打まで、最も長い年数を要した選手と言えば、どの選手を思い浮かべるだろうか。

 記憶に新しいのが、2017年にプロ初本塁打を放った阪神の岡崎太一。プロ13年目で放った初アーチは、田原晃司(西武)や井生崇光(広島)と並ぶ、野手としては史上2位タイの遅さだった。

 では1位は…?近鉄・石山一秀の「14年」である。



 1970年に捕手として近鉄入りした石山は、1974年に一軍初昇格。

 1976年にはキャリアハイの54試合に出場したが、当時チームには梨田昌孝と有田修三という実力伯仲の両捕手が健在だったため、心ならずも偵察要員や消化試合での出場が大半だった。


 そして、1983年10月21日の阪急戦。3点を追う9回裏二死無走者、代打で登場した32歳の石山は、森浩二から左越えにプロ1号を放つ。

 一軍に初めて抜擢して以来、温かく見守ってきた西本幸雄監督が「つらい“縁の下の力持ち”の格好」と評した野球人生の晩年に、やっとこれまでの苦労が報われた。


 これが日本での現役最終打席となり、シーズン後に二軍コーチ就任を打診された石山だったが、本人は現役続行を希望。

 翌年、韓国プロ野球の三星ライオンズに入団すると、一緒に渡韓した前巨人の新浦寿夫とバッテリーを組み、3年間で4本塁打を記録している。


 ちなみに投手では、巨人時代の工藤公康が23年目の2004年8月17日のヤクルト戦で、史上23人目の通算200勝とともにプロ1号を記録している。


14年目の「初のお立ち台」


 “守備の人”が打撃でチームの勝利に貢献。プロ16年目で初のお立ち台を実現させたのが、西武・上田浩明だ。

 2003年9月13日の日本ハム戦。6-6で迎えた8回、西武は先頭の赤田将吾が中越え三塁打で出塁したが、中島裕之(※現在の登録名は中島宏之)が三飛、後藤武敏が三振でたちまち二死。

 次打者は直前でセカンドの守備固めとして起用され、これまで打率.118と当たっていない上田だった。


 だが、「何とかしたかった。とにかく勝ちたいの(思い)が先だったんで」と無我夢中で芝草宇宙の直球を振り抜くと、打球はその執念が乗り移ったかのように中前に抜ける決勝適時打に。

 走り出そうとした直後、勢い余ってズルッと滑ってしまった上田だったが、すぐさま体勢を立て直して一塁へ。その後、二死一・二塁から松井稼頭央の右越え二塁打でこの回2点目のホームを踏んだ。

 8-6の勝利後、ヒーローとして初めてお立ち台に呼ばれた34歳の晴れ姿に、伊原春樹監督も「打率が低いというなか、若い選手との違いです」と賛辞を惜しまなかった。


 上田同様の苦労人では、西武から戦力外通告を受けたあと、ダイエーにテスト入団した宮地克彦が、ソフトバンク時代の2005年にドラフト制以降最も遅咲きになる16年目で初めて規定打席に到達。打率.311をマークする大活躍を見せた。

 また、日本ハム・渡辺浩司も14年目の1995年に初めて規定打席に到達。“14年目の新人王”とも呼ばれた。


超遅咲きの投手は12年目で初勝利


 今度は超遅咲きの投手を紹介しよう。初勝利まで最も長い年数を要したのが、横浜・西清孝の13年だ。

 1985年に南海にテスト入団した西は、シーズン途中に広島に移籍した1990年、2球団で計11勝を挙げてウエスタン最多勝に輝く。

 だが、1987年に左膝じん帯、1989年には右膝半月板と2度にわたる手術を受けるなど、「これから」というときに限って、不運なアクシデントが襲ってきた。

 1993年に広島を自由契約になったあと、横浜にテスト入団。翌年、選手登録はされたものの、実質打撃投手に専念した。


 しかし、打撃投手として全力投球が評価され、1年後に再び選手復帰をはたすのだから、「人間コツコツやれば報われる」の典型例と言えるだろう。

 そして迎えた1997年4月25日の中日戦。「敗戦処理がいない」チーム事情から12日前に一軍に呼ばれた西は、6-6の9回、5番手としてマウンドに上がった。

 アロンゾ・パウエルを三ゴロ、レオ・ゴメスを左飛に打ち取った二死後、安打と死球で一・二塁のピンチを招くが、中村武志を遊ゴロに仕留め、無失点で切り抜ける。

 その裏、横浜は一死満塁から西の代打・井上純の右犠飛でサヨナラ勝ち。この瞬間、13年目の31歳右腕に待望のプロ初勝利が記録された。


 「僕は打たれたら終わり。いつも(クビになる)危機感があった。でも、こんな形で勝てるなんて、一生懸命やってきて良かった。この1勝で終わらないように頑張りたい」。

 さらなる活躍を誓った西は、8月24日の巨人戦で2勝目を挙げ、同年はキャリアハイの58試合に登板した。


 楽天時代の松本輝も、2007年4月12日の西武戦で4-4の8回から田中将大をリリーフしたその裏、礒部公一の決勝タイムリーが飛び出し、プロ12年目の初勝利。

 前出の西に次いで2位の遅咲き記録だが、西は打撃投手時代の1年間も含まれているので、実質1位タイと呼べるかもしれない。


 スター選手が華やかな活躍シーンを演じる一方で、長年蔭でひたむきに努力を続けてきたバイプレーヤーが大舞台で花を咲かせる場面を見たいと願うファンも多いはずだ。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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