前半戦は尻上がりに調子を上げたが…
2019年にマリナーズに加入した菊池雄星。
1年目・2年目はともに防御率5点台と苦しんでいたが、3年目の昨季にようやく実力の一端を垣間見せた。
開幕から2試合連続でクオリティースタート(QS=6投球回以上を投げて自責点3以下)を記録するまずまずの滑り出しを見せた菊池。自身3~4戦目は2試合で合計10失点と打ち込まれたが、その後は徐々に安定感を取り戻していった。
4月から6月の月間防御率を順番に並べると、「4.40」→「3.38」→「1.90」。前半戦だけで1年目に並ぶ6勝を挙げ、チームから唯一のオールスターにも選出された。
ところが、オールスター前に体調不良に見舞われ、球宴での登板はかなわず。すると後半戦最初の登板で7失点と打ち込まれ、流れが変わってしまう。結局、オールスター以降は1勝5敗・防御率5.98と失速し、2ケタ勝利どころか7勝でシーズンを終えた。
オールスターを境に大きく成績を落とした印象があるが、FIPという指標を見ると、実は前後半でそれほど大きな差はなかった。
FIPとはFielding Independent Pitchingの略で、守備の影響を取り除いた被本塁打・与四死球・奪三振のみで投手を評価する。防御率と同じく、その数値が低ければ低いほど、その投手の能力が高いということになる。
2021年の菊池のFIPは、前半戦が「4.36」で後半戦は「5.03」だった。防御率がそれぞれ「3.48」と「5.98」だったので、菊池の投球内容自体は前後半で大きく変わらなかったことになる。
4年目の所属先は未定
ただし、前後半で大きな違いがあった指標もある。それが「被BABIP」だ。
これは本塁打以外のグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合を示し、長い目で見ると投手は.300前後に収束していく。2割台なら運が良く(安打性の当たりがアウトになる確率が高い等)、3割を上回れば運が悪かった(ボテボテの内野安打が多かった等)といえる。
菊池の被BABIPを前後半で比べると、前半戦は「.235」と運を味方につけていた。ところが、後半戦に入ると「.367」に悪化。オールスター後に成績を落としたのは、運に見放された部分も大きかったといえるだろう。
そんな菊池がシーズンを通して安定していたのが、「左打者に対する投球」である。
右打者に対するシーズン被打率は「.271」。一方、左打者は「.147」と抑え込んでいた。メジャー3年間の通算成績を比べても、対右打者が「.282」、対左打者は「.214」と、その差は歴然。右打者克服が飛躍へのカギとなりそうだ。
来季がメジャー4年目となる菊池。オフには自ら契約延長オプションを破棄し、FAの道を選んだ。
現在はロックアウト中のため交渉は凍結されているが、メッツが興味を示しているという報道も聞こえている。
新天地で迎えることになるであろう4年目、進化した姿を見せることはできるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)