コラム 2022.02.25. 07:08

社会人野球で投手三冠 「ドラフト上位候補」大阪ガス・河野佳に高まる期待感

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大阪ガス・河野佳 [写真=プロアマ野球研究所]

投手の大注目候補


 2月1日にはじまったプロ野球の春季キャンプも終盤戦に突入。

 実戦のニュースがメインとなりつつある中、アマチュア野球の動きも活発になってきている。




 社会人野球界では、3月6日(日)からJABA東京スポニチ大会が開幕。いよいよ本格的な春の訪れを感じる時期となった。

 ドラフト戦線という観点から社会人の有望株を探してみると、現時点で最もプロからの注目を浴びる選手と言えば、高卒3年目の河野佳(大阪ガス)だろう。

 まずは下記のデータをご覧いただきたい。



▼ 河野佳
・21歳
・投手
・176センチ/80キロ
・右投右打
・広陵高

<主な球種と球速帯>
ストレート:143~151キロ
カーブ:116~120キロ
スローカーブ:103~106キロ
スライダー:125~130キロ
カットボール:135~138キロ
ツーシーム:130~133キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.23秒

<2021年公式大会成績> ※都市対抗予選除く
7試合(43.0回) 失点1(自責点1) 防御率0.21
被安打20 四死球7(四球6:死球1) 奪三振32
被打率4.19 四死球率1.47 WHIP0.60


 過去5年間のドラフトで1位指名された社会人投手を振り返ってみると、田嶋大樹(2017年・オリックス1位)、鈴木博志(2017年・中日1位)、河野竜生(2019年・日本ハム1位)、宮川哲(2019年・西武1位)、栗林良吏(2020年・広島1位)の5人。そのうち、宮川と栗林以外の3人が高卒3年目だ。

 それ以前にも、柿田裕太(2013年・DeNA1位)や野村亮介(2014年・中日1位)、横山雄哉(2014年・阪神1位)、山岡泰輔(2016年・オリックス1位)が高卒3年目で1位指名を受けている。大学4年生よりも1学年下ということもあり、高い評価でプロ入りするケースは少なくないが、彼らの社会人時代の成績と比較してみても、河野はこれらのドラフト1位を圧倒している逸材だ。


社会人2年目で才能が大きく開花


 河野の名前が全国的に知れ渡ったのは、2019年春の選抜高校野球だ。

 広陵のエースとして出場した河野は、初戦で八戸学院光星を相手に3安打完封。ストレートのアベレージは140キロ台前半だったものの、初回には最速150キロもマークしている。

 続く2回戦では優勝した東邦を相手に敗れ、夏には広島大会で敗退したこともあって、高校卒業時点でのプロ志望届の提出は見送っている。順位にこだわらなければ、高校からのプロ入りの可能性も十分にあっただろう。


 河野が卒業後の進路として選んだのは、社会人の大阪ガス。都市対抗・日本選手権でも優勝の実績があり、近年も多くのプロ選手を輩出している強豪だ。

 そんなチームの中に入っても、河野は1年目から都市対抗で登板。試合は優勝したHondaに敗れたものの、最速148キロをマークするなど、上々の社会人全国デビューを果たしている。


 そして、河野の才能が大きく花開いたのが2年目の昨年だ。

 春先から主戦となると、夏に行われた日本選手権ではチームを優勝に導くピッチングを見せ、自身もMVPに輝いている。


 昨年は年間表彰の対象となる公式戦7試合に登板して、自責点わずかに1。防御率0.21という圧倒的な数字を残し、社会人の年間ベストナイン・最多勝・最優秀防御率の投手三冠を獲得したのだ。

 冒頭で紹介したように、過去にドラフト1位でプロ入りした投手たちと比べてもこの成績は群を抜いているが、その実力を満天下のもとに示したのが、12月に行われた都市対抗野球の本選だ。


 初戦の伏木海陸運送に先発した河野は、立ち上がりから相手打線を圧倒。この日のストレートの最速は146キロと、自己最速の151キロに比べると少し抑えめだったが、120キロ前後のカーブと、100キロ台のさらに遅いスローカーブを上手く操って緩急を使い、数字以上の勢いが感じられた。

 また、スライダーやカットボール、ツーシームなど他の変化球はストレートと同じフォームで投げることができており、コントロールも安定している。最終的には被安打4、四死球0、9奪三振と二塁を踏ませないピッチングで完封勝利をマークした。

 176センチと投手にしては上背がある方ではないが、社会人で体つきは確実に大きくなり、体重移動のスピードと左足が着地する時の安定感がアップした印象を受ける。抜群のコントロールはこの安定したフォームの賜物である。


 実績は申し分ないだけに、あとはストレートのアベレージをもう少し上げることと、いかに調子を維持できるかがポイントとなる。

 高いレベルで試合を作ることができる投手はプロでも貴重なため、春先から昨年と同じようなピッチングを見せることができれば、上位指名でのプロ入りも見えてくるだろう。



☆記事提供:プロアマ野球研究所
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