コラム 2022.03.10. 07:08

「4番サードたつのり」…ファミスタと原辰徳に熱中したあの頃

無断転載禁止
ファミスタと原辰徳の切っても切れない関係 (C) Kyodo News

野球ゲームの移り変わりから見るプロ野球史~第1回:ファミスタと原辰徳


 「すべての基本は、ここにある。定価は3900円。ここから、ボクらははじまった」

 これは『ファミスタ百科』(小学館)の『プロ野球ファミリースタジアム』紹介文である。




 1986年12月10日、ナムコから記念すべきファミスタ第1作目が発売された。

 それまで任天堂の『ベースボール』しか知らなかったユーザーは、実在のプロ野球をモデルにした名前も能力も違う個性豊かな選手が動く野球ゲームの登場に歓喜する。

 やがて放課後のファミスタは、少年たちの人生の必修科目になっていく。



 時代はまだ巨人戦ナイター地上波中継の全盛期。パ・リーグは86年に日本一に輝き、清原和博の入団で黄金期を迎えつつあった西武ライオンズ……じゃなくてライオネルズのみ単独チームで収録。

 阪急・近鉄・南海の関西鉄道系連合チーム「レールウェイズ」は、全球団トップのチーム打率.292に258本塁打という強打を誇り、日本ハム・ロッテの関東食品系連合チームの「フーズフーズ」は三冠王“おちあい”とゲーム屈指の数値フォーク14を持つエース“むらた”を軸に編成された。


ガイアンツの4番は“たつのり”




 当時、圧倒的な全国区の人気を誇っていた読売ジャイアンツ……ではなくてガイアンツの4番は“たつのり”で「打率.284、32本塁打、走力7」。

 ちなみに、実際の原辰徳は86年シーズン終盤に左手首骨折で離脱したものの、夏場までバース(阪神)と激しい本塁打王争いを繰り広げ、28歳で自己最多の36発を放っていた。

 しかし、ファミスタでは“くろまて”の36本、さらには代打にいる“おう”の40本に次いでチーム3位のホームラン数だった。


 それが王巨人が初優勝を達成した翌年発売の『プロ野球ファミリースタジアム'87』では、「打率.302、36本塁打、走力7」とファミスタキャリアハイの成績。エースが“えがわ”から“くわた”に変わっても、ガイアンツの4番は“たつのり”のままだ。

 そう言えば、カプコンの『プロ野球?殺人事件!』に出てくるのは“いがわすぐる”と“ほらたつのり”である……というのは置いといて、PCエンジンの『ワールドスタジアム』やゲームギアの『ギアスタジアム』でも若大将は4番を張り、90年9月14日にはゲームボーイで『ファミスタGB』がリリース。

 藤田巨人は前年日本一に輝き、90年ペナントも発売直前の9月8日に史上最速のリーグVを決めていたが、ガイアンツの4番は“はり”で「打率.284、30本塁打、走力8」だった。守備位置は三塁から左翼へコンバートされたが、80年代から90年代になり、元号が昭和から平成に変わっても、ガイアンツの4番は変わらなかった。


 雑誌『小学六年生』89年8月号の夏休みテレビゲーム特集の「おすすめソフト20」では、真っ先に『ファミスタ’89開幕版』をパワープッシュ。

 渾身のレビューでは、「ラッキーセブンなどに登場の応援団も、89年版ではかわいい女の子たちに変更された。ニュースのアナウンサーは、キャピキャピギャルから大人の女性に…」って、野球のプレー部分に1秒も触れてないよ!……と突っ込む間もなく、『小学一年生』91年1月号の「ファミコンさいしんニュース」コーナーでは、「人気ばくはつ!野球ゲームのけっていばん!」と『ファミスタ91』を紹介。

 あの頃、おじさんたちがビール片手にナイター中継で選手を覚えたように、子どもたちはファミスタからプロ野球を教わった。


衝撃の「パワプロ」登場


 92年3月27日には、スーパーファミコンデビュー作『スーパーファミスタ』が発売。本作からNPBのライセンス許可を取り、球団・選手名が実名化される。

 Gチームもガイアンツからジャイアンツへ。4番レフト“はら”は「打率.280、26本塁打、走力9」。本作から新たにできた項目「人気」では7とチーム野手最高の数値だったが、「守備力D、肩力C」と外野手としては厳しい査定だ。

 やはり、アキレス腱痛の持病が……と思ったら、翌93年春発売の『スーパーファミスタ2』の打撃成績は、「打率.272、28本塁打、77打点」(実際の92年シーズン成績設定)とほぼ変わらないものの一塁転向へ。本作から漢字表記の“原辰徳”となったが、ルーキーの松井秀喜が初登場するなど、世代交代を予感させる一作となった。

 なお、現実のプロ野球は長嶋茂雄監督の12年ぶりの巨人復帰で盛り上がっており、『スーパーファミスタ2』説明書の扉絵は背番号33の長嶋監督と原や桑田真澄。タイトーの『究極ハリキリスタジアム』のパッケージイラストは打席に長嶋一茂、ネクストバッターズサークルにゴジラ松井、ベンチ前のミスターが顔を揃えた(ホームを守るのはヤクルトの古田敦也)。


 そして、94年3月4日発売の『スーパーファミスタ3』で事件が起こる。ついにゲーム上で原辰徳が巨人四番の座から外れたのだ。

 前年貧打に泣き3位に終わった長嶋巨人は、オフに導入されたばかりのFAで中日から落合博満を獲得。ファミスタでもリアルに「4番・一塁・落合博満(打率.289、20本塁打、66打点)、5番・三塁・原辰徳(打率.251、20本塁打、61打点)」のオーダーが組まれる。

 さらに、時を同じくして、野球ゲームの雄『ファミスタ』にも岐路が訪れる。94年3月11日に、コナミから定価9000円(税別)でスーファミ用ソフト『実況パワフルプロ野球’94』が登場したのである。

 投手の球種再現、ボールの高低差、打者のミートカーソルの概念、アナウンサーによる実況中継まで、まだハードの機能に大きな制約のあった時代に、“野球の奥行き”を表現した画期的なゲームは瞬く間に話題となった。同時に、その1週間前に発売されていた『スーパーファミスタ3』の伝統的なシステムが、残酷なほど過去のゲームに見えてしまったのも事実だ。


ファミスタでスタメンを外れた原辰徳は引退


 ちなみに、パワプロ1作目の原は「4番・一塁」でスタメンにいるが、「ミート4、パワー119」という寂しい数字で、パワー144の2年目・松井にあっさりと追い抜かれている。

 なお、発売時期は前後するが、ファミコン最後のシリーズ作となった『ファミスタ94』の“4番サードはら”は「打率.230、13本塁打、走力8」である。背番号8は全盛期で登場した1作目から現役晩年の9作目まで、ファミコンのファミスタシリーズの申し子のような存在だった。

 パワプロの登場を受け、95年3月3日発売『スーパーファミスタ4』は投球に高低差の設定が追加され、賛否両論の一作になったが、長く4番を張り続けたタツノリは初めてスタメンから外れ、「打率.264、18本塁打、61打点」で代打としてベンチにスタンバイ。それはひとつの時代の終わりを意味しており、実際に巨人軍とガイアンツの功労者・原辰徳はこの年限りで引退した。


 90年代中盤、10年近く続いたファミスタ一強時代がついに終焉。野球界の世代交代も進み勢力図も大きく変わりつつあった。

 そして、94年に新たな野球ゲームの雄・パワプロの登場とともに世に出たのが、オリックス・ブルーウェーブの背番号51。イチローである。


(第2回『パワプロとイチロー』編へ続く...)


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

【PR】読売ジャイアンツを観戦するなら「DAZN Baseball」

阿部慎之助監督のもと、新たなチーム作りを進める巨人。戸郷翔征を軸とした投手陣の整備、主砲・岡本和真のさらなる進化が覇権奪回のカギを握る!

「DAZN Baseball」とは、月額2,300円(税込)でDAZNのプロ野球コンテンツをすべて楽しめるプランです(月々払いの年間プランのみ)。

プロ野球だけを楽しみたい方は、月額4,200円(税込)のDAZN Standard​よりも1,900円お得に視聴できます。

POINT

ペナントシリーズ、交流戦、CSまで余さず堪能できる!

② オフシーズンもドキュメンタリーやバズリプレイなどコンテンツが充実!

毎月2,300円でライブ配信・見逃し配信・ハイライトまで視聴可能!

【PR】「DMM×DAZNホーダイ」でプロ野球を観よう!

「DMM×DAZNホーダイ」とは、DMMプレミアムとDAZN Standardをセットで利用できるプラン。

単体契約ならDMMプレミアム月額550円(税込)、DAZN Standard月額4,200円(税込)のところ、本プランなら月額3,480円(税込)だからとってもお得です。

POINT

① 「DMM×DAZNホーダイ」なら単体契約より月額1,270円(税込)も安い!

② DAZNだけの契約と比較しても月額720円(税込)お得に楽しめる!

③ 新規入会月から最大3カ月間、「DMMポイント」を550ポイント付与!

ポスト シェア 送る

もっと読む

  • ALL
  • De
  • 西