3日目の第1試合に登場!
『第94回選抜高校野球大会』が3月19日に開幕。ドラフト戦線という意味では、主要カテゴリーで最初に行われる全国規模の大会だ。
ドラフト候補となる新3年生には、今年からプロの世界で戦う小園健太(市和歌山→DeNA1位)や達孝太(天理→日本ハム1位)、松川虎生(市和歌山→ロッテ1位)のような有力な1位候補は不在という印象だが、それでも今大会での活躍次第で浮上する可能性を秘めた好素材がいる。
今回は大会3日目の初戦に登場する山梨学院から、抜群の投球センスを誇る右腕をピックアップ。
2016年から夏の山梨大会4連覇を達成するなど、近年は関東全体で見ても屈指の強豪と言えるチームのエースが榎谷礼央だ。
秋の関東大会では全4試合に登板し、チームの準優勝に大きく貢献している。
▼ 榎谷礼央(山梨学院)
・投手
・179センチ/75キロ
・右投右打
<秋季関東大会成績>
4試(27回) 失点6(自責点5) 防御率1.67
被安打19 四死球6(四球4:死球2) 奪三振23
被安打率6.33 四死球率2.00 奪三振率7.67 WHIP0.85
<主な球種と球速帯>
ストレート:137~144キロ
カーブ:110~114キロ
スライダー:120~125キロ
チェンジアップ:116~120キロ
<クイックモーションでの投球タイム>
1.24秒
関東大会で見せた“抜群の制球力”
榎谷が圧巻のパフォーマンスを見せたのが、選抜の選考で最も大きなポイントとなる準々決勝の対白鷗大足利戦だ。
立ち上がりの3回をパーフェクトに抑え込んだが、特筆すべきはその球数。1回は9球、2回は7球、3回は6球とわずか22球で打者9人を打ちとって見せたのである。
白鴎大足利打線の見逃しが少なかったこともあるが、コーナーいっぱいに投げ分けるコントロールの前に“打たされていた”というのが実際のところだろう。
特に、右打者のアウトローへのボールは抜群の制球力だった。
さらに感心したのが4回のピッチングだ。
一死からこの日初安打となる三塁打を浴びたが、全く慌てることがない。厳しいコースと高さのボールを集め、相手の3番・4番を力のない内野ゴロに打ちとり、無失点でピンチを脱出している。
結局、試合は山梨学院が9-0(7回コールド)で白鷗大足利を圧倒。榎谷は7回を投げて被安打5・四死球0。わずか78球で完封勝利を収め、山梨学院は選抜出場に大きく前進した。
榎谷が残した関東大会4試合の成績をみると、防御率は1.67ながら、1イニングあたりの被安打と与四球を示すWHIPが0.85という点に、榎谷の安定感がよく表れている。
試合を作る能力は全国屈指
現在の身長は179センチ。投手として決して大柄ではないが、スラっとしたいかにも投手らしい体つきで姿勢も良く、マウンド上では大きく見える。
また、テイクバックで肘を上手くたたみ、体の近くでスムーズに縦に腕が振れるのも大きな長所だ。
白鷗大足利戦での最速は142キロ。関東大会全体での最速も144キロと驚くようなスピードがあるわけではないとはいえ、全体的なバランスが良く、目立った欠点がないため、さらに球速がアップしそうな雰囲気は十分に感じられる。
これに加えて、緩急をつける110キロ台のカーブと120キロ台で対になるスライダーやチェンジアップもしっかりコントロールができており、試合を作る能力の高さは全国で指折りといえるだろう。
高校からのプロ入りとなると、課題となりそうなのが、やはりストレートの力強さだ。まだ少し体重が後ろに残り、ボールに力が伝わり切らないように見えただけに、その点が改善されると、一気にスピードがアップすることも期待できる。
この冬でフィジカル面が強化され、選抜でストレートが常時145キロを超えるようになり、スライダーは130キロに近づく程度までスピードが上がってくれば、一気に今秋のドラフト指名というのも現実味を帯びてくる。
☆記事提供:プロアマ野球研究所