コラム 2022.03.23. 07:30

「若き4番」と「逆襲をかける10年目右腕」が浮沈のカギ…2022年阪神シーズン展望

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打線の軸として期待される2年目の佐藤輝明 (C)Kyodo News

「打ちにいってボール球を見逃す」“新サトテル”への進化


 矢野燿大監督のラストイヤーで17年ぶりのリーグ優勝を目指す2022年の阪神タイガースのカギを握るのは、「若き4番」と「逆襲をかける10年目右腕」だ。

 打線の軸となるのは、2年目を迎えた佐藤輝明で間違いないだろう。1年目から驚がくのアーチを次々と懸けていき、24本塁打をマーク。終盤に59打席連続無安打という苦闘を経験したことも、経験値という意味で今後のキャリアのプラスに働きそうだ。

 今春キャンプでは、新任の藤井康雄1・2軍巡回打撃コーチの「4スタンス理論」に基づく指導で新打撃フォームに着手。コンパクトな構えからスイングすることでコンタクト率が格段に向上し、なおかつ自慢の飛距離も不変だ。

 プレシーズンでは空振りが減少し「打ちにいってボール球を見逃す」という一発か三振のブンブン丸から脆さをそぎ落とした“新サトテル”への進化の過程がうかがい知れる。

 15日からのソフトバンクとのオープン戦では2試合連続の本塁打を含む8打席連続出塁と、開幕へ向けて上昇気流を描く姿も何とも頼もしい。ドラフト制以降では球団最年少となる開幕4番は決定的だ。


 一方で1年目を終え、昨季苦手としていた内角や外角高めの“弱点”は他球団にしっかりとあぶり出された状態。そんな中で、相手バッテリーの想定を覆すような打撃を披露できるか。

 チーム全体で昨年の得点はリーグ5位。佐藤輝の不振とともに、打線全体も停滞していき、リーグ優勝をさらわれたヤクルト(625得点で1位)との差にもなった。

 春先から2年目の壁にぶつかるようなら、チーム全体の得点力も低下する恐れがある。

 野手の新外国人は獲得しておらず、攻撃力の上積みは佐藤輝の進化によるところも大きい。

 打線の“顔”である4番の重圧とも戦う背番号8の前後を打つことが予想されるジェフリー・マルテ、大山悠輔の果たす役割も決して小さくないだろう。

 その佐藤輝とともに1年目から躍動し、盗塁王を獲得した中野拓夢は下半身のコンディション不良で調整が遅れていたが、オープン戦最後の3連戦で1軍に合流。

 本命不在の間、キャンプから遊撃レギュラーを争ってきた実績のある木浪聖也と3年目の有望株・小幡竜平も決め手を欠くだけに、安定した守備力と機動力でかき回せる中野を開幕戦から起用するのかにも注目したい。


復活への期待高まる10年目の藤浪


 投手陣は藤浪晋太郎の浮沈が、チームにも大きな影響を及ぼすと見ている。

 先発陣は12球団でも屈指の陣容が揃い青柳晃洋、秋山拓巳、西勇輝、伊藤将司、ジョー・ガンケルと強力。藤浪は実質、残り1枠だったローテーションにしっかりと食い込んできた。

 今春は長年の課題だったフォームが安定し、試合中に修正も効かせるなど不振に喘いだここ数年からの変わり身を感じさせるパフォーマンスを継続。

 本人も「(フォームにおいて)今は立ち戻れる場所がある」と手応えを口にしている。これまで自身の投球を支えてきた直球、カットボール一辺倒ではなく、キャンプからカーブやスライダーと近年は配球の中心でなかった球種の精度向上を目指して投球の幅を広げている。

 元々、1年目から3年連続で2桁勝利を記録するなど能力は、他の面々にも劣らないエース級。年間通してローテを守り、7年ぶりの2桁勝利、規定投球回をクリアするようなら、これ以上の“補強”はない。

 ここに来て、開幕投手に内定していた青柳が新型コロナウイルスに感染しチームを離脱。代役ながら昨年に続いて藤浪が開幕投手を担う可能性が高くなった。

 過去2年で経験してきた中継ぎとの両睨みの起用ではなく、先発1本で勝負することを宣言して挑む今季。京セラドームのマウンドで節目の10年目をスタートさせる右腕にかかる期待は大きい。


絶対守護神が抜けたブルペン陣は不安を残す


 不安があるとすれば、昨年まで2年連続でセーブ王を獲得したロベルト・スアレスが抜けたブルペン陣だろう。

 穴埋めとして新外国人のカイル・ケラーを獲得したが、まだ未知数だ。コロナ禍で来日が遅れた影響でコンディションを100%に持って来られるのは開幕後になるだろう。

 ケラーとともに新守護神候補でもある岩崎優も1月下旬にコロナに感染したため、調整は遅れ気味。シーズン序盤に限っては、状態の良い方を9回に起用する可能性もありそうだ。

 さらなる逆風は、貴重な中継ぎ左腕として勝ちパターン入りも見据えていた高卒3年目の及川雅貴が右脇腹の筋挫傷で開幕絶望に。同じ左腕の岩貞祐太も2軍で再調整中と、左腕の頭数が不足しており、いきなり台所事情は苦しい。湯浅京己、小野泰己、石井大智と若手右腕トリオが打者の右、左関係なく力を発揮できるか。

 今季から延長12回制に戻ることを考えても、やはり藤浪を筆頭に完投能力のある先発投手の奮闘も欠かせない。

 大型補強はない中でも、近本光司や梅野隆太郎、秋山拓巳など生え抜きの主力は円熟期に入ってくる。

 昨季前半の快進撃を見ても、波に乗れば手が付けられない勢いを発揮する新生猛虎。

 まずは開幕シリーズで昨年のリーグ覇者・スワローズに牙をむく。


文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)

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