コラム 2022.03.31. 08:09

プロ注目の有望株が躍動!社会人野球「スポニチ大会」で目立ったドラフト候補

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東芝・吉村貢司郎 [写真=プロアマ野球研究所]

センバツの前に行われたドラフト戦線につながる公式戦


 甲子園で開催中の『第94回選抜高等学校野球大会』。30日は準決勝の2試合が行われ、ついに決勝戦に進む2チームが決定した。

 主要カテゴリーで最初に行われる全国規模の大会とあって、秋のドラフト会議を見据えるうえでも大きな注目を集めているが、そのセンバツに先駆けて行われた注目の戦いがある。3月6日から10日まで開催された、社会人野球の『JABA東京スポニチ大会』だ。




 こちらは全国大会ではないものの、主要カテゴリーの中の最初の公式戦とあって、毎年多くのスカウトが視察に訪れる。

 まだ寒さも残る中で繰り広げられた熱戦の中で、アピールに成功した選手は現れたのか。ここでは今年のドラフト指名対象選手をピックアップしてご紹介したい。

 (※選手の年齢は2022年の満年齢)



東芝・吉村貢司郎が見事なピッチング


 まず真っ先に名前が挙がるのが、チームを優勝に導き、自身もMVPに輝いた東芝・吉村貢司郎(投手・24歳早生まれ/日大豊山→国学院大)だ。

 初戦は7回1/3を投げて2失点で勝ち投手となると、準決勝では9回一死からリリーフで試合を締め、続く決勝でも被安打6、10奪三振で完封。登板した3試合全てで見事なピッチングを見せた。


 ストレートは自己最速の153キロには及ばなかったものの、全ての登板でコンスタントに140キロ台後半をマーク。アベレージの高さはプロの先発投手でも上位のレベルに入る。

 下半身主導のフォームで、上半身の力を抜いて楽に腕を振ることができる。放たれるボールから数字以上の勢いが感じられるのも大きな魅力だ。

 変化球も130キロ台のスライダー、140キロに迫るスプリットはいずれも決め球として使えるボールとなっていて、110キロ台のカーブで緩急を使うこともできる。


 昨年は都市対抗野球の開催がドラフト会議後だった影響もあってか、まさかの指名漏れとなったが、今すぐプロの一軍でも投げられそうな完成度の高さを感じた。

 決勝戦では巨人が4人体制で視察するなど注目度は引き続き高く、この状態を維持できれば上位指名の可能性は高いだろう。


日立製作所・原田泰成とJR九州・鷲崎淳が好投


 吉村と同じ大学卒3年目の投手では、日立製作所の原田泰成(25歳/東海大望洋→東海大)とJR九州・鷲崎淳(24歳早生まれ/創成館→近畿大)も高いパフォーマンスを見せた。


 原田は決勝トーナメント進出のかかった西濃運輸戦に先発すると、5回をわずか1安打、6奪三振で無失点の好投でチームを勝利に導いた。

 ストレートの最速は148キロとこの時期にしては申し分なく、安定したコントロールと緩急のうまさも目立った。


 鷲崎は2試合に先発したが、特に見事だったのが準決勝の日立製作所戦での投球だ。立ち上がりから走者を背負いながらも落ち着いたピッチングを披露。9回を1人で投げ抜き、11奪三振の2失点完投でチームを決勝進出に導いた。

 勝負所でスピードアップしたストレートは、最速147キロをマーク。チェンジアップやスライダー、ツーシームなど縦の変化球にバリエーションがあるのも大きな持ち味だ。

 ともに総合力は間違いなく社会人球界でも上位で、早くから使える投手が欲しい球団は今後も注目していくことになりそうだ。


ドラフト解禁組は…?


 一方、今年ドラフト指名が解禁となる投手では、下記の選手たちがアピールを見せた。


関根智輝(ENEOS・23歳早生まれ/都立城東→慶応大)
加藤三範(ENEOS・24歳/花巻東→筑波大)
藤村哲之(東芝・23歳早生まれ/愛工大名電→横浜商科大)
竹本祐瑛(JR東日本東北・24歳/八戸西→駒沢大)
多田裕作(NTT東日本・23歳早生まれ/日体大柏→拓殖大)
末野雄大(三菱自動車倉敷オーシャンズ・24歳/報徳学園→関西国際大)
川島隆志(JR九州・21歳/宮崎第一)


 なかでも今大会で特に目立ったのは、関根と藤村の2人だ。

 関根は開幕カードの三菱自動車倉敷オーシャンズ戦で先発として6回を無失点、準決勝進出をかけた日本新薬戦ではリリーフで2回を無失点といずれも好投。最速149キロをマークしたストレートと、多彩な変化球をコーナーに投げ分けるコントロールは高レベルだ。

 大学時代は故障に苦しんだが、昨年の都市対抗から好調を維持しており、先発タイプとしてプロからの注目度は高い。


 藤村は先発したJR東日本東北戦こそ5回途中4失点で降板したものの、9つの奪三振をマーク。準決勝のENEOS戦ではロングリリーフで5回1/3を投げて6奪三振・無失点と見事な投球を見せて、チームの優勝に大きく貢献した。

 ブレーキ抜群のチェンジアップと対にかるカーブ、スライダーを操り打者を翻弄する投球が持ち味。ストレートが140キロ前後と少し物足りないが、もう少し球威が出てくれば貴重なサウスポーだけに、プロ入りの可能性も出てくるだろう。


野手の注目選手は…?


 野手を見ると、全体的に目立つ選手は少ない印象。その中で最も強烈なアピールを見せたのが、大学卒4年目となる日本新薬・福永裕基(三塁手・26歳/天理→専修大)だ。

 初戦の日本製鉄かずさマジック戦こそ4打数1安打に終わったものの、残りの2試合ではいずれも3安打の猛打賞を記録。3本塁打・6打点と見事な打撃を見せつけた。

 大学時代から広角に打つ上手さは目立つ選手だった。それに加えて年々パワーアップしており、確実性と長打力を兼ね備えたバッティングはアマチュア全体でもトップクラスだ。

 今大会はサードを守っていたが、セカンドも守ることができ、また3試合で3盗塁をマークしているように脚力も目立つ。

 今年で26歳となるものの、本人もプロ入りに対して強い意欲を示す発言をしているだけに、今後の活躍次第ではリストアップする球団も出てくるだろう。


 なお、今年ドラフト指名が解禁となる選手では、東芝の大庭樹也(遊撃手・24歳/明豊→専修大)やNTT東日本・中村迅(遊撃手・23歳早生まれ/常総学院→法政大)、ENEOSの滝沢虎太朗(外野手・23歳早生まれ/山梨学院→早稲田大)、JFE東日本の関龍摩(外野手・24歳/福井商→関東学院大)、JR東日本東北の金沢龍介(外野手・24歳/秋田→専修大)、NTT東日本の内山京祐(内野手兼外野手・24歳/習志野→中央大)などが目に付いた。

 福永に比べるとアピール度合いはまだまだだったものの、シーズンはまだ始まったばかり。今後の大会での活躍に期待したい。


☆記事提供:プロアマ野球研究所

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