「これで喜ぶバカはいない」
打率0割台の中日・京田陽太が1試合2本塁打を放った。
7日に神宮で行われたヤクルト戦。11-3で大勝したチームは、勝率を5割に戻した。
まずは1点リードの4回一死。電光掲示板の示す打率は.091。マウンドにはヤクルト先発・石川雅規。高め変化球を救い上げた。
右翼ポール付近への今季1号も、「これで喜ぶバカはいないですよ」。残してきた数字が悪すぎる。無表情でダイヤモンドを回った。
お次は、6回の第3打席。2番手・大下佑馬の速球を右翼席へ叩き込むと、今度は「昂弥の勢いに乗っただけです」。目の前で左翼席へアーチを架けた前の打者・石川昂弥に続くアベック弾となった。
27歳の選手会長・京田は、この日先発した高卒2年目の19歳右腕・髙橋宏斗に励まされていた。
「ロッカーが近くて、ニヤニヤしてこっちを見てくるんです。『きょうは打てます』とか『頑張りましょう』とか。人懐っこくて、嫌な気持ちにならないのは、宏斗の人柄なのだと思います」
結果として、バットでプロ初勝利を援護。「宏斗の勝ち星に貢献できてよかったです」と、ホッとした表情を浮かべた。
首脳陣の信頼を結果で返せるか
この日までに2度、首脳陣から京田を守る発言を受けている。
立浪和義監督は「うちのチームで143試合ショートで出られる体力があるのは京田しかいない」とメディア対応でコメント。京田は「そういうことを言う方ではないと思う。ありがたいです」と振り返る。
もうひとつは4月1日。前夜の3月31日・DeNA戦(バンテリンドーム)のこと。両軍無得点の8回、京田は右中間を真っ二つに破る打球を放った。二塁ベースを蹴る前に、三塁コーチャーズボックスを見る。大西崇之外野守備走塁コーチは腕を回していた。結果は、三塁タッチアウト。直後の9回、絶対守護神ライデル・マルティネスが決勝点を奪われた。立浪新政権の本拠地開幕カードで3連敗が決まった。
4月1日の野手ミーティング。大西コーチは「何か意見があるならオレに言え」とナインに伝えている。
チームは春季キャンプから、次の塁を狙う方針を打ち立ててきた。同コーチは「京田を責めたら、次の機会で走れなくなる。止めるがオレの仕事。選手は『大西が止めやがった』と思えばいい」と説明した。
キャンプでは「三塁へ近づく際にコーチを見る」こと、そしてもう1度、「三塁ベースを蹴る時点でもう1度見る」の『2度見』を指示してきた。ミスの矛先を決めるのであれば、京田ではなく、腕を回したコーチャー。それを伝えたかった。
走りだした立浪ドラゴンズ。優勝は合言葉。まずは、2012年以来、10年ぶりのポストシーズン進出へ突っ走る。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)