徐々に進んでいる「投高打低」の傾向
2022年シーズンの開幕から2週間が過ぎ、今季のここまでのプロ野球にはひとつの傾向が見られる。いわゆる「投高打低」だ。
近年はセ・パ両リーグともにその傾向が徐々に進んでいたが、今季の、とくにパ・リーグの投高打低ぶりはちょっとふつうではないようだ。
下記にまとめたのは、2018年以降のセ・パのリーグ平均防御率とリーグ平均打率である。
セ・リーグも2018年の「リーグ平均防御率4.10/リーグ平均打率.259」と比較すると、今季はそれぞれ「防御率3.59/打率.244」と投高打低が進んでいる。
しかし、こうして並べてみると、やはり目立つのはパ・リーグの数字だ。
▼ リーグ平均防御率/打率
2018 (セ)4.10/.259 (パ)3.90/.254
2019 (セ)3.89/.253 (パ)3.91/.252
2020 (セ)3.83/.254 (パ)3.86/.246
2021 (セ)3.60/.251 (パ)3.48/.241
2022 (セ)3.45/.240 (パ)2.76/.216
佐々木朗希の完全試合が今季の象徴となるか
2018年のリーグ平均防御率3.90に対して、今季の2.76という数字は1点以上も減少している。チーム防御率では、ロッテが1.65、ソフトバンクが1.93とそれぞれ1点台をマークしており、もはや優秀なリリーフ投手のような数字だ。また、リーグ平均打率で見ても、2018年と比べると4分弱も低下している。
当然ながら、個人成績にも優れた数字が並ぶ。パ・リーグの防御率ランキングを見ると、0.00でトップの石川歩(ロッテ)を筆頭に、6位の隅田知一郎(西武)まで、実に6人もの選手が防御率0点台だ。一方、セ・リーグで防御率0点台の選手は、西勇輝(阪神)と高橋奎二(ヤクルト)のふたりのみである。
もちろん、まだ肌寒いことも多い春先は、例年もどちらかというと打撃は低迷するものであり、これから気温の上昇に合わせて打者の調子も上向いていくだろう。ただ、それでもここまでのパ・リーグの投高打低ぶりは異常といえるほどのものだ。
4月10日には、オリックス戦に先発した佐々木朗希(ロッテ)が、槙原寛己(元巨人)以来で28年ぶりとなる完全試合を達成した。シーズンが終わって振り返ったとき、この佐々木の偉業が今季のパ・リーグの投高打低を象徴する出来事となっているかもしれない。
投手戦も野球の魅力のひとつではある。しかし、とくに現地観戦をするファンの多くは派手な本塁打など得点シーンを観たいと思うもの。今季は例年以上にパ・リーグの投手の仕上がりがいいといってしまえばそれまでだが、やはりパ・リーグの打者には奮起してもらいたいところだ。
好調な投手陣に負けじと、ファンを魅了する打撃を披露してくれることを期待したい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)