西武は2年連続で…
4月10日(日)、ベルーナドームで行われた西武-ソフトバンクの一戦でビッグプレーが飛び出した。
5回表無死一・二塁の場面。ソフトバンクは甲斐拓也が意表を突いたバスターを敢行も、これが三塁正面を突く強いゴロに。捕球した山田遥楓がベースを踏んでから二塁に転送し、外崎修汰の二塁から一塁への送球はワンバウンドになったが、一塁手・呉念庭がうまく捌いてすべてのアウトが成立。5-4-3のトリプルプレーとなった。
ビッグイニングのチャンスが一転、3アウトチェンジになってしまう珍プレー。年に一度、お目にかかれるかどうかのレアなケースではあるが、西武は昨季もトリプルプレーを成立させており、これで2年連続となる。
これまでNPBでは計173回のトリプルプレーがあった中、時には混乱状態による判断ミスが災いし、「あ~あ、もったいない」という結果を招いたことも……。
今回はそんな「まさかのトリプルプレー」を集めてみた。
「ウーやん」らしい?三重殺
中日時代の宇野勝といえば、1981年の「ヘディング事件」や1984年の「走者追い越し事件」など、言わずと知れた“珍プレーの帝王”であるが、実はトリプルプレーにおいても、いかにも“ウーやん”らしいプレーを演じていた。
1992年5月21日の広島戦。1点を追う中日は8回無死一・二塁のチャンスに代打・山口幸司は初球バント失敗のあと、バントシフトで猛然とダッシュしてくる広島内野陣の裏をかき、プッシュバントを試みた。
狙いは良かったのだが、打球は不運にも突っ込んできたファースト・小早川毅彦への小飛球になってしまう。小早川はすぐさま二塁に送球。三封を防ごうと早めに飛び出していた二塁走者・落合博満は帰塁できず、あえなく併殺になった。状況が状況だけに、これは仕方がない。
ところが、これで二死一塁と思いきや、打球が転がったのを確認してからでも遅くはないはずの一塁走者・宇野までが落合につられてスタートを切っており、直後ボールは一塁へと転送され、あっという間に3アウトチェンジ。
これには一塁コーチの井手峻も「(宇野は帰塁を)あきらめたような雰囲気だったね」とため息をつくばかりだった。
絶好のチャンスを逃した中日は3-4で敗戦。チャンスを潰したあげく、1点に泣いた。
逆転サヨナラの「大チャンス」が…
お次も中日の話だ。2001年5月12日の巨人戦。0-3と劣勢の中日は9回裏、山崎武司の二塁打を足場に無死満塁と反撃する。
1番・井端弘和が代わった條辺剛から適時打を放ち、1点を返してなおも無死満塁と“押せ押せムード”だった。
次打者の代打・井上一樹は中飛。犠飛になるかどうか微妙な打球だったので、「距離が足りない」と判断した三塁コーチの高代延博は、三塁走者・鈴木郁洋にストップをかけた。ここは無理をせず、一死満塁でクリーンアップの一打に賭けようとしたのだ。
ところが、二塁走者・大西崇之は「鈴木が突っ込む」と思い込み、タッチアップしたことから話がおかしくなってくる。
返球をカットしたセカンド・仁志敏久が大西を追いかけ、三塁手前でタッチアウト。ここまでなら、まだ二死だったのだが、今度は大西の動きにつられた鈴木が三塁を飛び出してしまう。
ボールを持っていた仁志が本塁方向に追いかけ、頃合いを見て捕手・阿部慎之助に送球。阿部が鈴木にタッチした瞬間、トリプルプレーが成立。そのままゲームセットになった。
1人で2人を仕留めた形の仁志は「一兎を追っていたら、二兎を仕留めちゃいました」とニンマリ。長嶋茂雄監督も「(相手の)ミスに助けられたなあ」と、ラッキーな逃げ切り勝利に頬を緩めた。
一方、中日・星野仙一監督は1回にも無死満塁のチャンスを逃していたとあって、「1回と9回や!」と不機嫌に吐き捨てた。
柳田悠岐の「スーパープレー」
最後は決して走塁ミスとは言いきれなかったのに、常識を覆すようなスーパープレーの結果、トリプルプレーになったレアなケース。2014年4月22日の日本ハム-ソフトバンクを紹介する。
3回、大谷翔平の適時打で1点を先制した日本ハムは、なおも無死一・三塁のチャンスに4番・中田翔がライナー性の中飛を放った。
定位置より浅めの飛球ながら、柳田悠岐が地面すれすれでかろうじて捕球したのを見た三塁走者・西川遥輝は「イケると思った」と、迷わずタッチアップして本塁を突いた。
ところが、柳田はすばやく体勢を立て直すと、本塁までの約70メートルをイチローもビックリの“バケモンレーザービーム”で、本塁にノーバウンドのストライク返球。アウトになった西川も「いい送球が来て、あのタイミングでは仕方がない。少しそれたらセーフですから」と納得ずくのスーパープレーだった。
そして、今度は西川をタッチアウトにした捕手・細川亨が機敏な動きを見せる。
クロスプレーの際に転倒したにもかかわらず、起き上がるやいなや二塁に送球。「二死二塁をつくりたかった」と隙をついてスタートを切った一塁走者・大谷を見事アウトに仕留めた。
絶好の追加点のチャンスが、まさかのトリプルプレーであっという間に3アウトチェンジ。このプレーで一気に流れを引き寄せたソフトバンクは、5回に三重殺の立役者・柳田の適時打で追いついたあと、本多雄一のタイムリーも飛び出し、2-1と鮮やかな逆転勝利を収めた。
攻守にわたってヒーローになった柳田は「うまくいきすぎてビックリ。肩は自信あるけど、去年にケガをして自信がなくなっていた。今日の(プレー)で回復した。あれでジェイソン(=先発のスタンリッジ)が乗っていけたので良かった」とニコニコ顔だった。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)