ケラーの不振で守護神へ
開幕から苦しい戦いを強いられてきた阪神。4月15日から17日の対巨人3連戦を2勝1敗で乗り切り、7カード目にしてようやく今季初のカード勝ち越しを決めた。
その後、横浜ではDeNAに3連敗を喫したものの、敵地でヤクルトに2勝1敗と勝ち越し。ようやく勝率を2割に乗せている。
このところの安定感を支えているのが、新たに9回を任されている岩崎優だ。
巨人戦で挙げた2勝は、いずれも岩崎が9回に登板してセーブを記録していた。その後はなかなかセーブ機会がなかったが、24日のヤクルト戦も8点差の9回を締めてチームに勝利をもたらしている。
開幕前の構想では、岩崎は昨季に続いて8回を任される予定だった。しかし、新外国人のカイル・ケラーが2度続けて試合をひっくり返されて敗戦投手に。若くボールに勢いのある湯浅京己に9回を任せるという話もあったが、実績ある岩崎が守護神の座に落ち着いた。
これまで年間を通じて抑えを経験したことはない。それでも、中継ぎに転向した2017年から昨季までに通算109ホールドを記録している。
昨夏には侍ジャパンの一員として東京五輪に挑み、金メダル獲得に貢献。数々の修羅場をくぐり抜けて来ているだけに、経験値を踏まえれば“適任”であると言えるだろう。
藤川球児ら4人が7度のタイトル獲得
阪神と言えば、近年は特にブルペンが強いチームとして知られている。
阪神の歴代の守護神を振り返ってみても、最多セーブのタイトルが現在の規定になった2005年以降だけでも藤川球児、呉昇桓、ラファエル・ドリス、ロベルト・スアレスの4人が計7度に渡ってタイトルを獲得してきた。もちろんこの人数・回数ともに12球団最多。猛虎のブルペンを支えてきたのは、安定感抜群のクローザーだったのだ。
現代野球においては特に「勝ちパターン」と呼ばれる投手たちの価値が非常に高い。やはりセットアッパーやクローザーが強固なチームは毎年のように上位争いを演じている。
阪神も2005年から昨年までの間の優勝は1回のみだが、Aクラス入りは12回で巨人の14回に次ぐリーグ2位の数字だ。この安定感を支えたのも、絶対的な守護神を中心としたブルペン陣の安定が大きな要素のひとつであることは間違いない。
先に振り返ったように、藤川以降の守護神はいずれもしっかりとした結果を残してきた。
2005年以降に抑えに定着した投手で、タイトルを一度も獲得できなかったのは2016年のマルコス・マテオだけ。そのマテオも同年は20セーブを挙げているが、故障で離脱した影響もあって復帰後は抑えではなくセットアッパーを任されていた。
ちなみに、そのマテオの離脱中に抑えを任されたのがドリスだ。この年は8セーブを挙げると、翌年は開幕から守護神として君臨して最多セーブのタイトルを獲得。2019年の途中までその座を守っている。
今年でラストイヤーとなる矢野阪神。出だしは苦労したが、新守護神・岩崎優を中心に安定した戦いぶりを取り戻すことができるか。
シーズンはまだ120試合弱残っているだけに、ここからの逆襲に期待したい。