隔離中の気分転換
突然の新型コロナウイルス陽性判定を浮け、10日間の隔離生活から復帰への道のり。
中日・小笠原慎之介投手の一軍復帰登板は5月3日のDeNA戦(横浜)だった。
復帰星は今季初星。隔離期間は“2つのネット”に支えられた。
「いや、やることがなくて。体重は減っちゃうし、外にも出られないし」
コロナ感染を知ったのは1カ月以上前。3月29日の本拠地開幕・DeNA戦(バンテリン)を任されたが、その登板数日後に陽性判定を受ける。
「幸い、症状はほとんどありませんでした。へこみました。でも、へこんでいるだけでも仕方ないので」
さあ、どう過ごすか……。
名古屋市内で一人暮らしする。中心部から少し離れた場所へ、マンションから一戸建てへの変更。オフの引っ越しが隔離期間を楽にした。
まずキッチンが広い。煮込み料理に精を出す。ダンベルで筋力トレーニングもできる。米メジャーリーグの専門チャンネルに登録した。パドレスのダルビッシュ有投手のゲーム映像を繰り返し見た。スポーツがそもそも持つ迫力、ダイナミックさを画面越しに感じてモチベーションを保つ。そして、ボールを握る。
投げる先にあったのが、2つのネットだった。
ひとつ目は、インターネットで購入した。投げると跳ね返ってくる一品。リビングに置いて、放る。強く投げられなくても、気休めには十分だった。
ふたつ目は、球団から送られてきた大型のもの。組み立て式で思い切り投げられた。
「気を使っていただきました。練習復帰への助けになりました」
隔離生活終了後は、バラして梱包。球団に返した。
「支えてくれた方、みなさんに感謝」
ウエスタン・リーグで投げ、復帰登板は5月3日のDeNA戦。6回途中で被安打5、失点3。
「感情は出さないようにしたかったんですけれど、出ちゃうものですね」
最速は150キロ。力みも出る。抑えて吠え、4四球で自分に苛立つ。降板後は、チームメートの応援に周り、白星をつかんで笑顔に変わる。
「支えてくれた方、みなさんに感謝です」と頭を下げた。
立浪和義監督からは大野雄大、柳裕也と合わせた「3本柱」と頼られる。
指揮官は「ひとつ勝って、いい意味で余裕が出ると思う。勝ちがついてよかった」と語った。
昨季、自身初めて規定投球回に到達した小笠原。まだシーズンは長い。
フル回転して、成績を振り返る。そのとき、2021年シーズンを上回ったと納得できたら、それでいい。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)