コラム 2022.05.10. 07:08

“サヨナラ振り逃げ”も幻に…?幸運が一転「アンラッキー」に変わった3つの試合

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現役時代の谷繁元信氏 (C) Kyodo News

史上2度目の珍事のはずが…?


 “野球の神様”は、時には思いがけない形でチャンスや記録のアシストをしてくれることもある。

 だが、せっかくの“うれしい誤算”も気づかなかったり、勘違いをしたまま見過ごしたりしてしまうと、当然「トホホな結果」が待っている。今回は、目の前の幸運が一転、アンラッキーに変わってしまった3つの試合を紹介する。




 滅多に見られない「サヨナラ振り逃げ」が幻と消えてしまったのが、2004年10月2日の広島-阪神だ。

 2-2で迎えた延長10回裏、広島は四球と安打に足を絡めて二死一・三塁と一打サヨナラのチャンス。だが、次打者・栗原健太はフルカウントから空振り三振に倒れてしまう。

 ふつうなら、これで3アウトチェンジになるところだが、久保田智之の投球がワンバウンドし、捕手・矢野輝弘(※現在の登録名は矢野燿大)が後逸。ボールはバックネット方向へと転がっていった。

 この間に三塁走者・嶋重宣がサヨナラのホームイン。オリックス時代のイチローが1994年6月12日のロッテ戦で記録して以来、NPB史上2度目のサヨナラ振り逃げ成立と思われた。


 ところが、打席の栗原はファウルチップと思って、一塁に走ろうとしない。そうこうしているうちに、ボールを拾った矢野が一塁に送球。今度は本当の3アウトチェンジになった。

 このチョンボで勝利の女神にそっぽを向かれてしまった広島は、延長12回の末、4-4で引き分け。まさに骨折り損のくたびれ儲けとなった。

 棚ボタのサヨナラ勝ちをフイにした山本浩二監督は「栗原はバットに当たったと言うが、チームで戦っていることをわかっていない。たとえ当たっていても、あそこはチームのために走らなあかん。本当に情けない」とオカンムリだった。


 ちなみに、ヤクルト時代の田中浩康も栗原と同じようなミスを犯している。

 2007年8月2日の阪神戦。9回二死三塁で藤川球児のフォークを空振り三振した際に、これまた矢野が後逸したにもかかわらず、振り逃げに気づかなかった。このため、スタートが遅れてしまい、幻の同点劇に終わっている。


谷繫元信の“勘違い”


 ラッキーな先制チャンスを“勘違い”で棒に振ってしまったのが、中日時代の谷繫元信だ。

 2011年8月23日のヤクルト戦。両チーム無得点で迎えた5回、中日は一死二塁から、打撃はほとんど期待できない投手のマキシモ・ネルソン(同年は打率.096)が、珍しく中越え二塁打を放った。こんな思いがけないことが起きるから、野球は面白い。

 だが、二塁走者の谷繫は先制のホームを踏んでもおかしくない場面だったにもかかわらず、なぜか三塁を回りかけたところでそのままストップしてしまった。実は、辻発彦・三塁コーチが走塁に不慣れなネルソンに二塁で止まるよう指示したジェスチャーを、自分に対する指示だと思い込んでしまったのだ。

 なおも一死二・三塁とチャンスが続いたにもかかわらず、中日は後続が凡退して得点ならず……。こういう時は得てして、試合の流れが変わってしまうもの。適時打を1本損したネルソンは、守備でも信じられないような不運に見舞われる。


 0-0の6回二死一・三塁のピンチに、ウラディミール・バレンティンを内野フライに打ち取ったと思いきや、風のいたずらで空中を舞った打球はネルソンと三塁手・森野将彦、一塁手のジョエル・グスマンが譲り合っているうちにマウンド付近にポトリ。まさかの「投前二塁打」で決勝点を取られ、負け投手になってしまったのだ。自らのバットで先制適時打&勝利投手という図式が、ひとつのプレーをきっかけに結果が180度変わってしまうのも、野球の怖さである。

 ちなみに、谷繫は大洋時代の1990年9月1日の巨人戦でも、二村忠美の左前安打で二塁から生還したが、三塁ベースの踏み忘れでアピールアウトになり、適時打が投ゴロに化ける珍事も経験している。中日移籍後も、三塁は“鬼門”だったようだ。


達成目前のサイクル安打を逃した掛布雅之


 最後に登場するのは、ちょっとしたボタンの掛け違いから、サイクル安打を逃してしまった阪神・掛布雅之だ。

 1982年6月22日のヤクルト戦。初回の第1打席で右前安打を放った掛布は、3-4の5回にも右越え同点ソロ。

 さらに7回にも中越え二塁打を放ち、サイクル安打達成まで三塁打を残すのみとなった。

 そして、5-4の9回。走者2人を置いてこの日5度目の打席に立った掛布は、中越えにあわや本塁打という大飛球をかっ飛ばす。

 だが、もうひと伸び足りず、打球はセンターフェンスを直撃する長打コースになった。


 「(サイクルの)記録は知っていた」という掛布だったが、「ホームランかと思って」全力疾走していなかったことに加え、フェンスに当たった打球を「(三塁に)走っていればアウト」と判断。二塁で自重した。

 ところが、皮肉にも跳ね返った打球は、クッション処理がもたつき、グラウンドを転々……。

 2人の走者も余裕でホームインしていたので、一か八かで走っていれば、三塁打になっていた可能性が高かった。


 目の前の幸運を掴み損ない、史上35人目36回目の快挙を逃した掛布は試合後、「惜しかったなあ……」と悔しそうな表情。

 結局、サイクル安打を達成できないまま、1988年限りで現役を退いている。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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