整ってきた強力投手陣
眠れる虎を呼び覚ますのは、パ・リーグが誇る豪腕たちとの刺激的な戦いか。
開幕9連敗を喫するなどリーグ最下位に沈んでいるタイガースにとって、24日のイーグルス戦から幕を開ける交流戦は、今季を占う意味でひとつのターニングポイントとなりそうだ。
ここでも白星を伸ばせないようなら、上位進出の希望は一気にしぼんでしまう。上昇気流に乗れば、同一リーグとの差を一気に縮められるチャンスにもなる。
3月から4月にかけては投打がかみ合わず、何をやってもうまくいかないような暗黒のトンネルを彷徨っている印象だったが、試合を重ねるごとに今季のチームの「強み」も出てきた。
開幕戦で守護神のカイル・ケラーが救援に失敗し、結果的に7点差をひっくり返される大逆転負け。その後もなかなか安定しなかった投手陣が、ようやく本来の力を発揮し始めている。
ブルペンは新守護神の岩崎優がどっしりと座り、ここまで6セーブをマーク。セットアッパーには4年目の湯浅京己が抜てきされ、イニング数以上の奪三振、防御率は0点台と大役を全うしている。
さらに7回はラウル・アルカンタラ、浜地真澄の台頭などもあって厚みが増してきた印象。もともと前評判の高かった先発陣も、エース・青柳晃洋を中心に試合を壊すことはほとんど見られない。
際立つ安定感は歴史の扉も開いた。チームとして4月22日のヤクルト戦で青柳が完封勝利を挙げてから、5月15日まで18試合連続で3失点以内。これは2リーグ制以降では史上最長の記録となった。
セ・リーグの他球団を圧倒的に抑え込んでいる投手陣は、マッチアップするパ・リーグの各球団にとっても脅威だろう。
いかに援護していくか
交流戦でもストロングポイントを押し出す戦いはマスト。ただ、気がかりなのは投手とは対照的に得点力不足に悩む打線だ。
先に挙げた3失点以内に抑え込んでいる18試合のチームの勝敗は11勝7敗にとどまる。実に5度の零敗を喫しており、好投を援護できていない展開も少なくない。
開幕4番を任された佐藤輝明は2年目の壁を感じさせないパフォーマンス見せて、近本光司と中野拓夢の1・2番も機能。しかし、現状では塁上の走者を還す役割を担う中軸は佐藤輝の孤軍奮闘の印象をぬぐえず、40歳のベテラン・糸井嘉男が気を吐くのが目立つぐらい。大山悠輔は不振が続いており、故障明けで昇格してきたジェフリー・マルテも本調子にはほど遠い。
パ・リーグの本拠地では指名打者制となり、攻撃型オーダーを組むことになるはずだが、“プラス1”になり得るほどの打者が現れるか。再調整中のメル・ロハス・ジュニアや、長打力が売りの陽川尚将、原口文仁、髙山俊らが候補になるだろう。
交流戦では、オリックス・山本由伸やソフトバンク・千賀滉大ら、球界を代表する先発ピッチャーが続々と登板。難敵を打ち崩していかないことには、投手が“孤立無援”に泣く日が続くことになる。
中でも大きな壁となって立ちはだかりそうなのが、ロッテ・佐々木朗希。4月10日のバファローズ戦で28年ぶり・史上16人目の完全試合を達成した球界最高のトッププロスペクトとは、昨年も5月27日にタイガースは対戦しており、5回までに4得点しながら甲子園でプロ初勝利を献上している。
本格開花した現在は、マリーンズのローテーションの一角として開幕から圧倒的な投球を披露。井口資仁監督は金曜日に登板させていくこと示唆しており、順調にいけば1年前と同じ5月27日、舞台をZOZOマリンスタジアムに移して再び相まみえる。
セ・リーグの先発投手にはいない160キロを常時マークする20歳をどう攻略するのか。そして、タイガースも予定通りならエースの座に登り詰めた青柳晃洋の先発が見込まれる。「超」が付く豪腕と、無双し続ける変則右腕の投手戦からも目が離せない。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)