交流戦が開幕!
プロ野球の2022年シーズンも開幕から約2カ月が経過。
レギュラーシーズンの戦いは一旦休止となり、24日(火)からは「セ・パ交流戦」が開幕する。
セ・リーグは昨季王者のヤクルトが首位を走り、そこに巨人と広島が僅差で追走する展開。昨季2位から頂点を目指した阪神は、開幕直後の出遅れが響いて6位で交流戦を迎えた。
それでも、ここに来て徐々に戦いの形は定まりつつある。交流戦をキッカケに上昇気流に乗って行きたいところだが、過去にはファンが思わず唖然としてしまうようなまさかの出来事も起こっている。
なかでも“因縁”が深いのがロッテ戦。ということで今回は阪神-ロッテで起こったまさかの珍エピソードをご紹介したい。
「オー、マイ・ゴッド」
まずはかつての名助っ人マット・マートンにまつわるお話から。
2012年の交流戦で、敗戦を決定づけた自らの拙守の理由について「アイ・ドント・ライク・ノウミ(能見)さん」の問題発言をしたことでも知られているが、実はその前年の交流戦でも守備中にまさかのボーンヘッドをやらかしている。
2011年5月26日、甲子園でのロッテ戦。事件が起きたのは、1-3の8回だった。
一死二塁で清田育宏が右飛を打ち上げると、マートンはゆっくり落下点に向かいキャッチした。ここまでは良かった。
ところがその直後、マートンは小走りで右翼線方向に向かうと、なんとボールを一塁側アルプス席に投げ入れてしまった。
まだ二死なのに、やってはいけない大チョンボ。この場合、野球規則5.06bにより2つの塁が与えられる。
真鍋勝已二塁塁審が本塁方向を指差すと、二塁走者・今江敏晃は「何があったかのか、わからなかった」と戸惑いながら4点目のホームを踏んだ(記録はエラー)。
アウトカウントを勘違いしていたことにようやく気づいたマートンは、「オー、マイ・ゴッド」と右手で頭を押さえたが、時すでに遅し……。
「あのときはどういうわけか、基本的なアウトカウントが抜けてしまった。言い訳も何もできない」と平身低頭のマートンに、真弓明信監督も「ああいうのは論外やな」と呆れるばかりだった。
「嘘だろう?嘘だろう?」
あと1球で勝利からの信じられないような暗転劇に、実況アナまで「嘘だろう…?」と嘆いたのが、2015年6月2日のロッテ戦だ。
3-2とリードの阪神は、9回から守護神・呉昇桓がマウンドに上がった。この日まで21セーブの呉は、チャド・ハフマンを三飛、岡田幸文を空振り三振に打ち取り、かんたんに二死。スタンドからは「あと1人」コールが沸き起こる。
そして、次打者・根元俊一も遊ゴロ。これでゲームセットと思われたが、名手・鳥谷敬がグラブに当ててはじき、内野安打にしてしまう。ここから“勝利のシナリオ”が崩れていく。
続く清田の遊ゴロも打ち取った当たりだったが、グラウンドの土に勢いをそがれてまたもや内野安打に。鈴木大地も四球で二死満塁となった。
相次ぐ不運にもめげず、呉は気持ちを切り替え、次打者・角中勝也をカウント1ボール・2ストライクと追い込んだ。スタンドから「あと1球」コールが起きる。
だが、角中も必死にファウルで粘り、際どい外角球を見送ってフルカウントまで持ち込んだ。
そして、呉の9球目、内角高めスライダーに角中のバットが一閃。高々と上がった打球は浜風をものともせず、ジェット風船を手に勝利の瞬間を待っていた阪神ファンで埋まった右翼席に逆転満塁本塁打となって突き刺さった。
あっけに取られた虎党の手を離れたジェット風船が虚しく上空を舞う。
「嘘だろう?嘘だろう?」
テレビの実況アナも声を裏返しにして連呼した。
悪夢のような逆転負けに、和田豊監督は「明日もゲームはある。こういう負けを乗り越えていかないと」と翌日の試合に気持ちを切り替えたが、皮肉にもその次の日も「嘘だろう?」の大どんでん返しが待っていた……。
1イニング8失点で同点に
翌日のロッテ戦、阪神打線は前日の鬱憤を晴らすかのように序盤から打ちまくった。
初回にマウロ・ゴメスの2ランで先制すると、6回まで4回を除いて毎回得点。先発・藤浪晋太郎も6回まで2安打10奪三振の無失点と、投打がガッチリかみ合い、8-0と大きくリードした。
ところが、7回に大きな落とし穴が待ち受けていた。
和田監督はこの回から福留孝介を下げ、大和をセンターに入れると、伊藤隼太をセンターからライトに回した。
伊藤は4回に今江の打球を判断ミスで二塁打にするなど守備に不安があったが、大量リードで「今日は大丈夫」という油断はなかったか…?
くしくもこの回の先頭打者は今江。そして、打球は皮肉にも伊藤の守る右前へ。出遅れたうえに中途半端に突っ込んだ伊藤は後逸し、三塁打にしてしまった。
1点は仕方がない場面だったが、藤浪が6回まで32イニング連続無失点を続け、チームの大先輩・村山実とジーン・バッキーの「34」に迫っていたため、記録優先で前進守備を取ったことが裏目に出る。
一死後、根元の二ゴロを上本博紀がはじき、藤浪の記録はストップ。藤浪はさらに3長短打を浴び、4点目を失ったところで降板したが、なおも負の連鎖は続く。
2番手・高宮和也も角中にタイムリーを許したあと、3番手・松田遼馬が今江に3ランを浴び、まさかの1イニング8失点で同点に追いつかれてしまったのだ。
延長10回、鳥谷の犠飛で何とかサヨナラ勝ちしたものの、藤浪に白星を付けることができず、連続無失点記録もパー。
さらには9回から本来なら登板の必要のない呉を連投させ、2イニング投げさせたのも大誤算だった。
和田監督は「これが野球だという……ね。絶対に隙を見せてはいけないという……ね」と反省しきりだったが、2日連続で消化不良の気分を味わった阪神ファンは、さぞかしストレスが溜まったことだろう。
今回紹介した痛恨の3試合は、いずれもロッテ戦。今年も5月27日から3連戦が予定されているが、今度は虎党がスカッとするようなナイスゲームを見せてほしいものだ。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)