「8回の男」に定着する22歳
開幕9連敗スタートと大きく出遅れた阪神だったが、ここに来て少しずつ調子を上げてきた。
5月は11勝11敗の5割。順位こそ未だリーグ最下位に沈んでいるものの、開幕時のようなどん底状態からは脱したと見ていいだろう。
持ち直した要因のひとつが、リリーフ陣の充実ぶりだ。
開幕直後に打ち込まれたカイル・ケラーの代役として守護神に岩崎優が収まると、「8回の男」には4年目の湯浅京己が定着。勝ちパターンが定まったことで、戦いぶりに安定感が出てきた。
湯浅は2018年のドラフト6位で阪神に入団。聖光学院高からBCリーグ・富山を経ての加入のため、4年目だがまだ22歳と若い。昨季までは一軍登板が3試合しかなく、防御率は18.00と実績は皆無だった。
そんな右腕が、今季はここまでチーム最多の21試合に登板。20回を投げてイニング数を上回る21奪三振を記録しており、防御率も0.90と素晴らしい投球を続けている。
失点を喫したのは4月12日・中日戦(2失点)だけ。以降は14試合連続で無失点ピッチを継続し、その勢いは止まらない。
リーグ2位の14ホールドポイント
14ホールドポイントはチームトップ。リーグ全体で見ても、巨人・今村信貴の16に次ぐ2位の好成績である。少し気は早いが、最優秀中継ぎ投手のタイトル獲得にも期待が膨らむ。
強力ブルペンを誇る阪神は、2005年以降で12球団最多の5名(8度)がこのタイトルを獲得。こうした伝統も後押しして、右腕がリーグを代表するリリーバーへと成長を遂げる未来があっても驚けない。
また、注目すべきは湯浅が「独立リーグの出身」であること。
ドラフト会議でも、各地のチームからNPBに殴り込みをかける選手が毎年のように登場。一軍で活躍する選手も増えている中、昨年はロッテの和田康士朗が代走の切り札として活躍を見せ、盗塁王のタイトルを獲得。ここ最近は故障なども多く活躍の機会が減ったが、同じくロッテの角中勝也も首位打者2回に最多安打と打撃タイトルを獲得。ベストナインにも2度輝いている。
一方、投手では先発・中継ぎともにタイトルを獲得した選手がひとりもいない。近年ではソフトバンクの又吉克樹がリリーフとして実績を積み重ね、昨オフには独立リーグ出身者として初めてFA権を行使して移籍を果たしたものの、タイトルとは縁がなかった。
もし湯浅が最優秀中継ぎ投手のタイトルを手にすれば、独立リーグ出身者として初のタイトルホルダーとなり、球史に名を刻むことになる。
そしてもちろん、湯浅がホールドポイントを積み重ねるということは、チームが勝利を重ねていくことにも直結する。
まずは、最下位からの脱出を。逆襲を期すチームの中で、偉業に向かって腕を振り続ける背番号65に注目だ。
文=BASEBALLKING編集部