コラム 2022.06.06. 07:08

ダルビッシュや大谷翔平、田中将大も…交流戦で「プロ初勝利」「初完封」を挙げた名投手

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大谷翔平のプロ初勝利も交流戦でした (C) Kyodo News

若手の登竜門としても注目


 2022年の交流戦も残すところ1週間。今年もさまざまなドラマが生まれた熱戦、残る6試合でどんな結末が待っているのか。今から楽しみだ。

 ペナントの行方を占うチームの成績はもちろんのこと、もうひとつの注目ポイントといえば、この交流戦をキッカケに大きな飛躍を遂げる新星の登場である。




 交流戦でプロ初勝利を記録した投手といえば、“令和の怪物”ことロッテ・佐々木朗希が記憶に新しい。

 昨年5月27日の阪神戦でプロデビュー2戦目にして初勝利を挙げると、その後も大事に使われながら、終盤戦ではエース格として躍動。今季の活躍については、ここで取り上げるまでもないだろう。

 佐々木のほかにも、交流戦で一生の思い出に残るプロ初勝利を挙げた投手が何人かいる。今回は交流戦から羽ばたいた名投手たちをご紹介したい。



ダルビッシュ「今まで育ててくれてありがとう」


 現・パドレスのダルビッシュ有もその一人だ。

 日本ハムのルーキー時代、2005年6月15日に行われた広島戦。プロ初登板・初先発のマウンドに上がったダルビッシュは初回、先頭の福地寿樹を投ゴロに打ち取ると波に乗った。

 カーブにスライダー、シンカーと多彩な変化球を投げ分けてカープ打線を翻弄。走者を出した3~5回はいずれも併殺でしのぎ、7回一死満塁のピンチにも「応援してくれるファンの皆さんのためにも、打たれたらあかん」と直球を低めに集め、無失点で乗り切った。


 打線も女房役の高橋信二が2回に先制3ランを放ち、さらに小笠原道大の2ランと新庄剛志のソロなどで5回までに7得点と、強力援護でドラ1ルーキーを盛り立てる。

 そして、8-0で迎えた最終回。プロ初登板で完封という快挙まであと3人となったが、無死から新井貴浩と野村謙二郎に連続被弾して無念の降板となった。

 だが、リリーフ・橋本義隆が「走者を出さないほうが、ダルビッシュも気持ちいいと思って投げた」と3人で片付け、8-2でゲームセット。攻守にわたって良き先輩に助けられ、プロ初勝利を手にした。


 試合後、「一番うれしい勝利でもあり、一番悔しい勝利」と9回の失点を悔やんだダルビッシュだったが、お立ち台では「いろいろ迷惑をかけたので、ファンの皆さん、選手の皆さんにいつか、しっかりとお返ししたいと思っていた」と頭を下げた。

 春季キャンプ中にパチンコ店で喫煙している姿が写真週刊誌に掲載され、謹慎処分を受けてから「絶対に這い上がる。誰からも尊敬されるプロ野球選手になる」と誓い、二軍で精進を続けてきた。

 それだけに、地元・札幌のファンの温かい声援と拍手で救われた気持ちになり、ウイニングボールをスタンドに投げようか迷ったそうだが、「お父さん(ファルサさん)が泣くので」と思い直し、「今まで育ててくれてありがとう」と感謝の言葉を口にした。


大谷翔平は中日戦でプロ初勝利


 佐々木と同じくプロデビュー2戦目で初勝利を挙げたのが、2013年の日本ハム・大谷翔平(現・エンゼルス)だ。

 同年5月23日のヤクルト戦。投手デビューを実現した大谷は、5回2失点(試合は引き分け)とまずまずの結果を出し、6月1日の中日戦で2度目のマウンドに上がった。

 だが、この日の大谷は本調子にほど遠く、2回に2安打と四球で一死満塁のピンチを招き、藤井淳志に先制犠飛を許してしまう。

 その裏、女房役の鶴岡慎也が逆転2ランを放って援護してくれたのもつかの間、大谷は3回にも犠飛で1点、4回も四球をきっかけに3点目を許すなどピリッとしない。


 栗山英樹監督も「今までの中で一番悪かった」と4回に交代を考えたが、「変化球を投げたり、間を空けたりして工夫していた」と大谷が冷静さを失っていないのを見て、思い直す。

 5-3とリードした5回、大谷は中日の上位打線を三者凡退に打ち取り、勝利投手の権利を得たところで降板。直後の6回、ミチェル・アブレイユにダメ押し2ランが飛び出した。

 調子が悪いなりに5回まで持ちこたえ、白星を手にしたのは“持っている男”の証明でもあった。


 7-3の勝利後、大谷は「今日は援護を貰って、何とか勝たせてもらった。自分の投球には納得いっていない。野手で出ているときも、投手の調整をしっかりできるように、自分で工夫していきたい」と謙虚に語った。

 だが、内容はどうあれ同年は3勝0敗と負けなしでシーズンを終え、翌年も開幕から無傷の7連勝。11勝に10本塁打と2年目にして“投打二刀流”を確立したことを考えると、交流戦でのプロ初勝利がいかに大きかったかがわかる。

 このほか、交流戦でプロ初勝利を挙げた投手としては2005年の西武・涌井秀章(現・楽天)、プロ2年目では2008年の広島・前田健太(現・ツインズ)が知られている。


田中将大は交流戦でプロ初完封


 最後は高卒1年目の交流戦でプロ初完封を達成した男を紹介する。楽天・田中将大である。

 2007年6月13日の中日戦。開幕から3勝している田中は、連打を許さず中日打線を8回までゼロに抑える。

 6回の二死三塁のピンチでは、森野将彦を自己最速の151キロ速球で見逃し三振。圧巻の投球を披露した。


 7回まで朝倉健太の前に無得点に抑えられていた味方打線も8回、草野大輔と鉄平の連続適時打などで一挙に4点を援護。4勝目まであと1イニングとなった。

 そして9回、田中は二死一・二塁から代打・中村公治をカウント1ボール・2ストライクと追い込む。だが、勝利まであと1球というところで、欲が出る。

 捕手・藤井彰人のサインに首を振り、直球を3球続けたが、いずれも外れ、二死満塁とピンチを広げてしまう。

 井端弘和をフォークで9個目の三振に仕留め、何とかゲームセットも、ベンチに引き揚げるなり、野村克也監督に「アホ!」と頭を叩かれた。

 「最後は150キロに挑戦して、勝手に力みおって。力任せはバカでもできる」が理由だった。

 田中も「完封できたのは良かったけど、色気を出してしまいました。監督に怒られたので、ちょっと複雑です」とうれしさも半分のプロ初完封だった。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)



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