第32回:交流戦全カード勝ち越しで完全優勝
ヤクルトが4年ぶり2度目の交流戦制覇を達成した。14勝4敗でパ・リーグ全チームに勝ち越して完全優勝。各選手が役割をこなし、序盤に先制点を許しても投打ともに粘りを見せて勝利に結びつけてきた。
打撃陣はチャンスを与えられた選手が勝負所で生き生きとしたプレーを見せた。
交流戦最初のカードとなった本拠地での日本ハム戦。初戦は開幕から一軍に定着している内山壮真が、1点を追いかける8回二死から代打で登場してプロ初本塁打を放つと、最後は延長11回、村上宗隆のサヨナラ2ランが飛び出して劇的勝利。幸先のいいスタートを切った。
「毎日どこかで時間をつくって調子をくずさないようにしている」という2年目19歳の内山は、捕手という過酷なポジションを担っているが「時間があれば、映像を見て勉強しています」と、経験を重ねながら日々成長を続けている。
翌2戦目は7年目の山崎晃大朗が、9回無死二・三塁の好機で逆転サヨナラ3ランを放って、チームの勢いをさらに加速させた。
交流戦優勝を決めた6月11日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では、左腕の大関から2安打1打点を記録するなど左投手と相性が良く、ここまで対左投手の打率は.333をマークしている。
山崎は「反対方向(への打球)を意識すると体が流れる癖があるので、左ピッチャーだと自然と壁ができるという感覚がある。数字上いい成績になっているのかな」と、分析する。さらに「何とか三振しないように心がけている」と、つなぎ役に徹する姿勢が好結果をもたらしている。
交流戦MVPは頼れる4番「代表して受賞させていただきました」
交流戦MVPに輝いたのは村上。パ・リーグの投手相手に打率.351、6本塁打、13打点と堂々の成績を残した。優勝を決めたソフトバンク戦では2打席連続のアーチを放ち、4番としてチームを引っ張った。
球団初の栄誉に村上は「高津監督をはじめチームの皆さん、野手の先輩方、先発投手陣、粘り強い凄いリリーフ陣、裏方スタッフの方々の力があって代表して受賞させていただきました」とコメント。
22歳の主砲は、3番の山田哲人と中核を担うが「チームひとりひとりがやるべきことをやれている。カバーしながら、いろいろな人が活躍して、いい試合を続けている」と胸を張る。
サンタナがケガで離脱してから5番は特に固定されておらず、それ以降の打順も活発に選手が入れ替わり、起用された選手が好結果を生み出してきた。
開幕から遊撃手としてスタメン出場を続けている3年目20歳の長岡秀樹は、主に6番以降に座ってランナーを還す役割も担った。交流戦は勝負強さを発揮し、得点圏打率.412、10打点を叩き出した。
各打者がつなぎの野球で「1点」をもぎ取り、勝利に貢献してきた。
指揮官のマネジメント力が光る
チーム一丸で勝ち進んできたヤクルト。鉄壁のリリーフ陣は、ヤクルトの「強さ」を物語るもうひとつの要因だ。
今野龍太、田口麗斗、清水昇、スコット・マクガフに加え、大西広樹、梅野雄吾、石山泰稚の存在も欠かせない。さらに今季は木澤尚文や新外国人のA.J.コールが新たに加わり、厚みを増した。
2年目の木澤は5月8日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初勝利を飾ると、150キロを超えるシュートを武器にここまで3勝1敗2ホールド。防御率は1.88と安定感を見せている。
今年の春季キャンプで木澤は「先発もリリーフも両方楽しい。必要とされるところで仕事がしたい」と話していた。大学時代に先発とリリーフの両方を経験した右腕は、プロの舞台でリリーバーとしての道を切り開いた。
リリーフ陣にさらに活力を与えているのは、高津臣吾監督のマネジメント力だ。
ときには、8回を任せられる清水や抑えのマクガフであっても休養させ、長いシーズンを戦い抜く上で、できるだけ万全な状態でマウンドに送り出している。
開幕投手を務めた小川泰弘も、4月10日に一度登録を抹消して登板間隔を空けた。5月に入ると安定した投球を見せている小川は、ここまで防御率2点台をキープしている。
小川は6月10日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で4勝目を挙げ、試合後「それぞれがカバーしながら、いいチームワークで戦っています」と、チーム状態の良さを口にした。
チームは現在、両リーグ最速で40勝に到達して首位。2位の巨人とは7ゲーム差をつけている。それでも、まだまだ何が起こるかわからないのがペナントレース。交流戦で見せた「強さ」を再び見せつけ、連覇へ向けて大きく前進する。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)