2度目の支配下返り咲き
12年間で4つめの背番号だ。
126、69、120……キャリアの浮き沈みを示す数字の変遷。タイガースの島本浩也が、再びはい上がってきた。
「嬉しい気持ちでいっぱい。2年8カ月リハビリにかかったんですけど、長かったなあっていう……。これからやっていかないといけないという気持ちでいっぱいです」
6月20日、支配下選手契約を結ぶことが発表された。
2010年の育成ドラフト2位で入団。背番号126をまとった左腕は、2014年に支配下登録を勝ち取った。
新たな背番号69で2019年にはキャリア最多の63試合に登板。だが、フル回転の代償は大きく、左肘に痛みを抱えながらのプレーを余儀なくされた。
2019年オフのクリーニング手術でも好転せず、2020年の11月にトミー・ジョン手術を決断。長いリハビリを経て、再び支配下に返り咲いた形だ。
「(術後)4カ月目で投げ始めたんですけど、そこから今年のキャンプに入るぐらいまでは全く投げられない状態というか。上がっていく雰囲気もなかったというか……。4カ月目からこのキャンプまではずっとしんどかったですね」
スローイング開始までは順調だったが、マウンドまでの道のりは果てしなく遠かった。
腕を振ればぶり返す痛み。復帰への思いの強さと反比例するように、リハビリの進捗は停滞。一進一退は約1年間も続いた。
そんな中、自身も「何をしたから良くなったとかは分からない」と首を振るほど、突然視界が開けたという。
「キャンプ中にかなり状態が上がって。いける、という風になったんで。急に投げられるようになってきた」
春季キャンプを順調に終えると、実戦登板という目標に実感が沸いてきた。
「自分の番号にしたいです」
5月にはフリー打撃、シート打撃登板と準備は整った。
照準に定めたのは、5月29日のウエスタン・リーグ中日戦。場所は甲子園だった。
8回、マウンドに「島本浩也」の名がコールされると、温かい拍手に驚きの声も混じった。
「リハビリの進み具合とかもファンの方は知らなかったと思うので。突然出てきた感じですよね(笑)」
それでも、久々の聖地、スタンドからの熱はこれ以上ない後押しになった。
最速145キロを計測し、1回を無失点。試合後は「甲子園で投げられたのは良かった」と705日ぶりのマウンドを噛みしめた。
今月17日・18日には連投テストもクリア。その2日後に支配下登録の知らせが届いた。
新しい背番号は46。1年先輩で同じ高卒の秋山が長年背負ってきた。
「秋山さんが背負っていた番号なんで、自分も活躍して、自分の番号にしたいです」
“4度目のスタート”からもう一度、光ある場所を目指す。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)