広島入団が決まった秋山翔吾

◆ 白球つれづれ2022~第26回・秋山が広島入団を決めた理由を読み解く

 「大どんでん返し!」秋山の日本球界復帰を一言で表すなら、こうなるだろうか?

 27日、広島は前パドレス傘下エルパソを退団した秋山翔吾選手の獲得を発表した。3年契約で推定年俸は総額3億5000万円プラス出来高とされている。正式な入団発表は近日中に行われる予定だ。

 早くから、獲得に乗り出していた古巣の西武とソフトバンクの一騎打ちと目されていた。そこに最後に名乗りを挙げたのが広島だった。

 どれほど、意外な逆転劇だったかは、交渉にあたった鈴木清明常務取締役球団本部長の言葉が物語っている。

 26日のDeNA戦を終えて移動中に秋山本人から入団快諾の一報が舞い込んだ。

 「マジで?」の思いの次は「頭が真っ白になった」と日刊スポーツの電子版が伝えている。百戦錬磨の仕事人が我を忘れるほどだったのだから、球史に残る交渉だったのだろう。

 球界の多くの関係者は「十中八九、西武で決まり」と読んでいた。

 西武の渡辺久信GMは早くから秋山とコンタクトを取り、熱意を伝えている。チームは27日現在リーグ3位と好位置につけているが、打線は低調で、特に1、2番が固定できないのが悩みの種。先に行われた西武ホールディングスの株主総会でも「何としても秋山を獲得して欲しい」と株主から異例の要望が出されたほどだ。

 これに対して“対抗馬”と目されたソフトバンクは資金力が強み。

 今季は首位を走るが、栗原陵矢、上林誠知両選手ら外野手に故障者が続出しているため、秋山は補強ポイントに合致する。

 これまでの秋山争奪戦を見て来ると、将来の幹部候補としても視野に入れる西武だが条件提示は2年だったと言う情報がある。一方のソフトバンクは3年契約で広島以上の厚遇を提示したと見られる。しかし、秋山の下した決断は最も不利と見られていた広島入りだった。

◆ あえて「茨の道」を選択した秋山の決断

 「交渉の席で(鈴木本部長からの)“入団してくれたらカープの大きな財産になる”という言葉は響きました」と秋山は語っている。

 同時にあと524本に迫る日米通算2000本安打に触れて「自分の思いをフロントの方が認識してくれているのが有り難かった」と言う。

 西武やソフトバンクにも似た思いはあったはず。それでも言葉にした熱意と誠意に秋山の心が動いた。もちろん、まったく違う環境で再チャレンジしてみたいと言う思いもあっただろう。

 広島は昨オフに鈴木誠也選手のメジャー、カブス移籍を容認したが、主砲を欠く打線はやはり厳しい。加えて外野手で唯一のレギュラーだった西川龍馬選手が故障で離脱中。チーム全体の柱になれる秋山の獲得は大きなプラス要因を生む。

 秋山の「野球博士」ぶりは有名だ。テレビ番組に出演すると卓越した理論を惜しげなく披露してきた。人一倍の向上心と練習量でスター街道を歩み、後輩からも慕われてきた。あるベテラン記者は、そんな人間性から今回の広島入りを解説する。

 「西武は若手の野手が伸びてきているので、そこに自分がふたをしたくない。と言ってライバルのソフトバンクに入るわけにはいかない。となれば、広島の選択も納得がいく」。

 3年契約でレッズに入団したのは20年のこと。イチローを凌ぐ年間216安打の日本記録を持つ安打製造機への期待は大きかったが成績不振のまま、今季はレッズから戦力外通告。その後パドレス傘下の3A・エルパソで再起を誓ったもののメジャーの道は閉ざされた。

 34歳と言う年齢は決して若くない。過去にメジャーに挑戦後、日本球界に復帰した選手は数多くいるが、渡米前より活躍した選手は皆無に近い。

 いずれも30歳前後で、最も脂の乗り切った状態で海を渡るのだから、選手生命の晩年期を迎えることになる。秋山もまた、例外ではない。

 西武なら、マイホームに帰ることが出来た。パリーグならこれまで蓄えてきた情報も豊富だ。それでもあえて「茨の道」を選択した。

 常にチャレンジャー。不遇の時を経て、秋山らしい新天地での復活を願わずにいられない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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