コラム 2022.06.29. 17:30

ドラフト全体1位指名から9年…“3年のブランク”を乗り越えたオールドルーキーが「メジャー初登板」目前

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フィリーズのマーク・アペル

25日にメジャー初昇格もここまで出番なし


 ナ・リーグ東地区3位のフィリーズは現地時間28日、本拠地で同2位のブレーブスと対戦。

 接戦の末に3-5で敗れ、大事な3連戦の初戦は黒星スタートとなった。




 この試合で最もウズウズしていたのは、フィリーズのマーク・アペルではないだろうか。

 25日にメジャー初昇格を果たし、ブルペンで待機するも2日連続で登板機会は訪れず。移動日を挟み、本拠地・フィラデルフィアでの初登板が期待されていたが、この日も最後まで名前を呼ばれることはなかった。

 遅かれ早かれ登板の機会は巡ってくると思われるが、アペルにとってはこの程度の“待機”はまったく苦にならないだろう。



まさかの無期限休養へ


 来月には31歳の誕生日を迎える右腕。高校卒業時にタイガースからドラフト15巡目で指名を受けたが、この時は契約には至らず、大学へと進学した。

 名門・スタンフォード大学で実績を積んだアペルは、4年後の2013年に今度はアストロズから全体1位で指名が。635万ドルという契約金を手に、早期のメジャー昇格を目指してマイナー生活がスタートする。

 1年目は10試合に登板して3勝1敗、防御率3.79とまずまずの成績を残したが、2年目の2014年は防御率6.91と成績を大きく落としてしまう。3年目には3Aまで昇格し、3Aと2Aで合わせて10勝を挙げたが、メジャー昇格には至らなかった。

 3年目のオフには、5対2の大型トレードの一員としてフィリーズに移籍。新天地での逆襲を期したが、故障などもあってマイナーで打ち込まれる試合も目立った。

 こうして迎えた5年目の2018年、アペルは突如として野球から離れることを決断。期限を設けない休養期間に入る。

 「(ドラフト史上最大の失敗と言われることに関して)どう定義するかにもよるけど、多分そういうことだと思う。自分自身に大きな期待をかけていた。いくつかの要因があってその期待に応えることができなかった。『ドラフト史上最大の失敗』と呼ばれても気にはしないさ」

 アペルはこの時の心境をこう語っている。


3年のブランクから這い上がる


 そんな男が再びメジャーを目指すことを決断したのは、昨年の春のこと。

 3年間のブランクを経て、再始動したアペルに待ち受けていたのは厳しい現実だった。

 3Aどころか2Aでも打ち込まれ、シーズン防御率は6点台。いつクビになってもおかしくない成績で、窮地に追い込まれた。


 それでも、右腕は前だけを見ていた。

 今季はリリーバーとして開幕。ここまで3Aで19試合に登板し、5勝5セーブ、防御率は1.61という好成績マークしている。

 念願のメジャー初昇格を果たしたのはチーム事情もあったが、このチャンスを逃すわけにはいかないだろう。

 ベンチとブルペンでメジャーの空気を味わうこと3試合。アペルがメジャーのマウンドの空気を味わう時は、確実に近づいている。


文=八木遊(やぎ・ゆう)

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