「35」と「36」背番号も1つ違いの2人
テレビ中継でベンチ内に映っていた背番号36は、なんだか嬉しそうだった。
それは、7回の1イニングを零封した自身の好投だけではないはずだ。
タイガースの浜地真澄は、試合終了までずっと才木浩人の隣にいた。2年前のトミージョン手術を乗り越え、1159日ぶりの白星を手にした才木と真っ先にハイタッチを交わしていた。
35と36。背番号も1つ違いの2人は、同じ高卒として2016年ドラフト同期入団。1年目から比較されることも少なくなかった。
ただ、いつも先に光が当たったのは、指名順位も1つ上の才木(3位)だった。
1年目でプロ初ホールド、2年目にはプロ初勝利を記録して、一軍のローテーションで6勝をマーク。一方、浜地は下積みの時間が長かった。
当時は「才木と浜地は仲が悪い」「バチバチや」など、冷やかしも含めて2人のライバル関係を煽るような声を周囲から聞いた。
「お互い高めあっていけたら」
実際、記者として見える視界の中でも、仲良く談笑するようなシーンはほとんど見なかった気がする。
性格も正反対。周囲に元気を分け与えるようにいつも明るい才木とは対照的に、浜地は寡黙に黙々とトレーニングをするようなタイプだ。
同期の復活星に今季7ホールド目で貢献した試合後、浜地はこれまでの日々を振り返るように率直な思いを明かした。
「入団時から本当にずっと一歩先をいってましたし、そのおかげで僕も頑張れた。こうやって、こういう日に一緒に投げられたのはすごく嬉しいことかなと思う。僕はファームにいることも多かったですし、(才木が)ずっと一番練習してたのは見てた。勝つだろうなとは思っていた」
脚光を浴びる姿に悔しさをにじませた時もあるだろう。それでも、右肘痛に悩み、大きな手術を経験し、長く辛いリハビリの日々を過ごしてきた背中も同じように目の当たりにしてきたからこその言葉。
「(入団当初は)意識するなという方が難しかった」と、昔はちょっと“棘”があったかもしれない視線には、今はリスペクトも混じっている。
今季は開幕から一軍のブルペンの一員としてフル回転。すでにキャリアハイの24試合に登板し、防御率1点台と潜在能力が開花しようとしている。
盟友の勝利を支えたように、僅差リードで起用されているのが飛躍の何よりの証だ。
「(才木が)復活してすごいピッチングするだろうな、というのは思っていた。それに負けないようにやらないと、というのはずっと思ってました。こういう勝っている試合で僕もこうやって投げられる立場に上がりつつありますし、そうやってお互い高めあっていけたら」
入団から6年が経ち、かつて“バチバチ”だった2人は、一軍のマウンドで刺激し合えるという“幸福な関係”になった。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)