切れ目のない打線に
MLB・パドレス傘下のマイナー、3A・エルパソを自由契約になり、広島に移籍した秋山翔吾が、早ければ8日に昇格する見通しとなっている。
待望の一軍合流によって、チーム内にいくつもの化学反応が生まれそうだ。
第一に、打線の厚みが一気に変わる。
状態さえ万全であれば、打順は3番が基本線になるとみられる。
今季3番で定着していた西川龍馬が下半身のコンディション不良により離脱中。開幕から2番で固定されていた菊池涼介を3番に変更したのは、3番の適任者が現れるまでの応急措置とあって、秋山の3番起用に支障はない。
さらに、西川が一軍に復帰すれば、秋山を1番に置き、2番から菊池涼、西川、ライアン・マクブルーム、坂倉将吾と続く切れ目のない打線を組むことが可能になる。
秋山自身は「どのチームでも自分のやるべき仕事は出塁だと思っている。カープの選手の数字を見ても安定して打っている選手が多い。どの打順でも前後の選手とコミュニケーションを取り、いろんなものを共有してやっていきたい」と言及。どの打順に入ったとしても、対応に問題はない。
西川の離脱以降、上位打線を日替わりで組み替える苦しいやりくりが続いていた。1番から中軸まで対応できる秋山の昇格は、喫緊の課題を解決に向かわせることになるだろう。
チームを上昇気流に乗せる“相乗効果”
さらに、秋山の存在が外野陣だけでなく、チーム全体の競争意識を高めることにも一役買っている。
現在の外野陣は、レギュラーだった西川が離脱したことで3枠ともに流動的な状況だ。
先発定着をアピールしているのは、攻守ともに安定している野間峻祥と上本崇司。ただし、2人ともに体調面では一抹の不安を残しており、今後も体の状態を見極めながらの起用が続くとみられる。
このレギュラー不在は、若手にとっては先発奪取へのチャンスとなるはずだった。
しかし、宇草孔基や中村健人、羽月隆太郎らが出場機会をほぼ均等に分け合う状況は、頭一つ抜け出す存在が現れていない証。
秋山の加入は、一軍生き残りをかけた若手だけでなく、先発の当落線上にいる選手にも大きな刺激を与えるに違いない。
競争意識の高まりは内野陣にまで及んでいる。
遊撃の小園は「秋山さんも入られますし、(西川)龍馬さんも帰ってくる。本当にいまの間に(先発に)定着しておかないと厳しい状況」と危機感を募らせている。
外野で先発出場を続ける上本は、内野を本職とするユーティリティー選手。小園の調子が落ちると、上本を遊撃で起用する機会も出てきた。
秋山の加入で現在の立場が危うくなる選手は、外野陣だけではないのだ。
佐々岡監督も「秋山が来ることによってポジションがひとつなくなるという危機感がみんなにある。チーム内で良い競争になるだろう」と競争の激化を歓迎している。
秋山の一軍合流日は、想定された中で最短と言えるタイミング。昇格日は本人に一任されていたとはいえ、踏ん張り所を迎えているチームにとっては、一日でも早くその力が必要だった。
果たして、どのような「秋山効果」が生まれるのか。
単純な戦力補強としてだけでなく、いくつもの相乗効果が生まれるのが理想形。そうなれば、チームは一気に上昇気流に乗る。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)