コロナ禍以降の9試合で打率.407・4本・10打点
ヤクルトのオーダーにおなじみの顔触れが戻ってきた。
7月24日の広島戦。新型コロナウイルス陽性と判定され、戦列を離れていたキャプテンの山田哲人、塩見泰隆、中村悠平が一挙スタメンに名を連ねた。
首位を快走するチームを襲ったコロナ禍。この苦境に奮起したのが主砲・村上宗隆だ。
並の選手であれば、その重責や気負いによって成績を落としてしまってもおかしくないところ。
しかし、村上はむしろ打撃成績を“爆上げ”した。
大量の離脱後はじめての試合となった7月13日・中日戦から、7月23日・広島戦までの9試合における村上の主な打撃成績は、打率.407(27-11)、4本塁打、10打点。出塁率は.568で、長打率も.926と驚異的な数字が並ぶ。
また、出塁率と長打率を足した値で、得点との相関関係が非常に強いとされる指標・OPSは1.493。
OPSは一般的に7段階で格づけされ、その最高評価とされるのが.900以上ということを思えば、短期間の数字ではあるものの、この9試合における村上の数字はまさに異次元レベルといっていいものだ。
勝負を避けられるなかでも残した結果
比較のために、ヤクルトがコロナ禍に見舞われるまでの村上の打撃指標も振り返ってみると、打率.307(283-87)、29本塁打、79打点。出塁率.442の長打率.654で、OPSは1.095。
これも十分に素晴らしい数字だが、やはりコロナ禍以降の9試合の数字はほとんど常軌を逸している。
ちなみに、村上の代名詞である本塁打に関する数字でいえば、「打数/本塁打数」で計算され、本塁打1本あたりに要する打数を示す「本塁打率」も、コロナ禍以前の9.76から6.75と大きく伸びている。
さらに、打席数に対する四球の割合を示す「四球率」も、コロナ禍以前の.185から.270とこれまた大幅に伸びた。これは主力が大量に離脱したため、村上にマークが集中した結果だろう。
そのように勝負を避けられているなかでも、打てる場面でしっかり結果を出したということがよく分かる。
村上という選手は、もともとチームの勝利に対する意識や責任感が非常に強い選手だ。それが数字になってはっきり表れたといえる。
たしかに、ヤクルトはコロナ禍以降の9試合で2勝と苦戦を強いられた。
そのなかでも、主砲・村上がチームのピンチにこそ力を発揮してくれることを示してくれたことは、大きな収穫だったのではないだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)