最終回:“混パ”優勝争い全体のキーマンは佐々木朗希?
球宴ブレークをもって、後半戦突入と表現される。果たしてそうだろうか?
セ・パ各チーム共に、多少の差はあるが約90試合を消化、残りは50試合近くとなっている。この時点から後半戦とするなら、もはや不用意な取りこぼしは許されない。首位のソフトバンクから5位のオリックスまでは、わずかに2.5ゲーム差の“混パ”ならなおさらだ。
今年のオールスターは、見応えのある熱戦が続いた。
初戦は伏兵?清宮幸太郎選手(日本ハム)が劇的なサヨナラ本塁打で、第2戦は柳田悠岐選手(ソフトバンク)が決勝アーチを放ってMVPに輝いた。
話題性では「令和の怪物」佐々木朗希投手が独占。自慢の三振奪取はならなかったが、その快速球は162キロを計測して、スタンドのどよめきを誘った。大谷翔平(現エンゼルス)と並ぶ球宴の日本人最速タイ。
スピードで競っては勝ち目がないと、伊藤大海投手(日本ハム)は計測不能な超スローボールで勝負、ロッテの同僚・益田直也投手は左足一本で、ふらつきながら投げる“ふらふら投法”を披露するなど、「佐々木余波」の目立った夢の球宴だった。
和気藹々の時は終わり、勝負のシーズン再開。史上稀に見る“混パ”の行方を占うのは難しい。強いて挙げるなら優勝争い全体のキーマンは、やはり佐々木朗希が握っているような気がしてならない。
前半戦終了時のロッテは46勝44敗1分けの4位。首位のソフトバンクと2ゲーム差ながら、5位のオリックスとも0.5差である。
「打線もようやく平常通りに戻ってきた。全員がしっかり調子を上げてくれば上を目指せる」と井口資仁監督も勝負の秋に向けて手応えを感じ始めている。
故障や打撃不振で出遅れていた荻野貴司、安田尚憲選手らが戻ってきた。となれば、最後のピースは佐々木朗の復活だ。
ロッテ優勝のカギは佐々木朗希の起用法
佐々木朗の名前が投手成績から消えたのは最近の事。7月1日の楽天戦で先発すると4回までに10奪三振の快投を見せながら、右手中指のマメで緊急降板、それから1カ月近く公式戦のマウンドから遠ざかっている。
「怪物」の名前を決定づけたのは4月のオリックス戦の完全試合だった。13連続を含む19奪三振に160キロ超えの快速球。その後も順調に勝ち星を重ねていったが、6勝のうち5勝までは5月までのもの。6月以降は1勝1敗と成績も伸び悩んでいる。
指に出来たマメはアクシデントだが、剛球を投じれば肩や肘への負担は人一倍かかる。シーズン前には「今年こそ先発ローテーションを守る」と誓ったが、現実は軌道修正を余儀なくされている。
少し、酷な言い方になるが、春先のペースで白星を積み上げられていれば、チームも球宴前には首位に立っていておかしくない計算も成り立つ。今まさに真のエースとしての真価が問われている。
残り試合の登板はこれまで以上に重みが加わる。連日が首位攻防戦だが、さらにギリギリの天王山を迎え、エース対決が雌雄を決する。仮に優勝を逃した場合でもクライマックスシリーズもある。
短期決戦になれば投手力が決め手になるケースも多い。昨年、日本一に輝いたヤクルトは奥川恭伸、高橋奎二と言った若手本格派を大切に起用しながらも、シーズン終盤の勝負所ではリミッターを外して勝負に出た。
同じことは佐々木朗にも言えるだろう。これまでは中1週間や中10日の登板間隔が許されたが、ペナントレースの大詰めには大幅な短縮も予想される。相手チームにとっては佐々木朗との直接対決は勝つ確率が低くなるため避けたい。逆にロッテにとっては佐々木朗の投げる日は白星を計算したい。
今や球界の至宝。入団以来3年計画で体力づくりと肩、肘の負担軽減を考えながら育成してきた。
そんなとっておきの切り札が、この先、どのチーム相手に、どれくらいの間隔で投げられるのか?
“混パ”の行方はやはりこの男の右腕にかかっている。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)