甲子園を終えて見えた"評価"
仙台育英の初優勝で幕を閉じた夏の甲子園。この後はU-18・W杯、国体なども控えているが、高校生のドラフト候補については、スカウト陣の評価がほぼ固まったと言えそうだ。
今回から2度にわたり、甲子園未出場の選手を含め、2022年の高校生ドラフト候補について、スカウトや関係者の話などから主な有力候補について紹介したい。今回は投手編である。なお、現時点で大学への進学希望を表明している選手は対象から外している。
甲子園のヒーロー・山田陽翔は…?
対象なし
▼ 上位指名の有力候補
斉藤優汰(苫小牧中央)
門別啓人(東海大札幌)
山田陽翔(近江)
昨年は小園健太(市和歌山高)をはじめ4人が1位指名を受けた一方で、今年は1位指名が確実と見られる選手は不在という印象である。
全国大会の実績では、松坂大輔(横浜高)と並び、春夏の甲子園で通算11勝をマークした山田が圧倒的だが、ドラフトでの評価がそれ以上に高くなりそうなのが、斉藤と門別の2人だ。
斉藤は190センチ近い長身から投げ込む最速151キロのストレートが武器本格派右腕。コンスタントに145キロを超える出力の高さは、高校球界でNo.1だ。
春以降は変化球のコントロールが安定し、長いイニングを投げられるようになった。スケールを重視する球団は1位指名の可能性もありそうだ。
門別は、各球団の人気が高くなりやすいサウスポー。ストレートのアベレージは140キロ台前半だが、力を入れると145キロを超え、左投手らしいボールの角度が光る。
また、高校生左腕にしてはコントロールが安定しており、完成度も高い。今年は大学生や社会人にも左投手の候補は多くないだけに、人気は高くなるだろう。
一方、甲子園では見事な投球を見せた山田だが、1位指名という声は聞こえてこなかった。
変化球のレベルはさすがだが、高校生にはやはりスケールの大きさを求めることが多いのが、その理由と言えそうだ。
ただ、完成度の高さは高校球界でも1、2を争う存在だけに、3位以内では消える可能性が高い。
支配下指名が確実視される選手は…?
▼ 支配下指名の可能性大
斎藤響介(盛岡中央)
田中晴也(日本文理)
安西叶翔(常葉大菊川)
森下瑠大(京都国際)
川原嗣貴(大阪桐蔭)
武元一輝(智弁和歌山)
森山暁生(阿南光)
大野稼頭央(大島)
この夏評価を上げてきたのが、斎藤と安西だ。
斎藤は少し数字が甘く出る球場だったとのことだが、岩手大会で最速152キロをマーク。まだ体つきは細くて頼りなく見えるが、フォームの躍動感は申し分なく、コンスタントに140キロ台中盤をマークする。内角を厳しく突けるコントロール、鋭く変化するカットボールなども高レベルだ。
安西は最速148キロを誇る本格派サイドスロー。テイクバックで長いリーチを上手く肘をたたみ、前で大きく腕が振れ、数字以上の勢いが感じられる。課題だったコントロールもこの夏は安定しており、静岡大会初戦の市沼津戦には30人近いスカウトが集結した。
田中と川原、武元はいずれもスケールの大きい本格派右腕。田中は夏の甲子園で右手のマメを潰した影響もあって、不本意な投球に終わった。しかし、新潟大会では自己最速を更新する150キロをマークしている。
川原と武元は、大型投手でありながらコントロールが安定しており、力を入れたときの140キロ台後半のストレートは勢い十分だ。
サウスポーでは、森下と森山、大野。このなかで、今夏評価を上げたのは大野だ。体つきはまだ細いが、センバツと比べても明らかにストレートの勢いが増し、鹿児島大会では4試合連続2ケタ奪三振をマークした。ともに甲子園の実績も残しており、一定の評価を得ている球団もありそうだ。
今夏に評価を上げた4人
▼ 支配下指名も狙える候補
坂本拓己(知内)
田村朋輝(酒田南)
草野陽斗(東日本国際大昌平)
赤羽蓮(霞ケ浦)
森本哲星(市船橋)
茨木秀俊(帝京長岡)
米田天翼(市和歌山)
白浜快起(飯塚)
宮原明弥(海星)
日高暖己(富島)
サウスポーでは坂本と森本、右投手では草野や日高がこの夏に評価を上げた。
坂本と森本はストレートこそ140キロ前後と驚くような速さはないが、フォームのバランスが良く、コントロールも悪くない。体ができてくれば、まだまだ球速がアップする可能性が高く、指名を検討している球団も多いだろう。
草野と日高は、一冬を超えてこの春から夏にかけて一気にスピードアップを果たした。特に日高は夏の甲子園こそ初戦で敗れたものの、内容は悪くなかっただけに、評価するスカウトの声が多かった。
一方、「未完の大器タイプ」では赤羽と白浜の名前が挙がる。
まだまだばらつきはあるが、赤羽は189センチ、白浜は191センチと長身で、指にかかった時のボールは勢いが十分。早くからプロで鍛えてもらいたい素材だ。
冒頭でも触れたように、1位指名確実という投手は不在とはいえ、最終学年で浮上してきた選手も多く、全体的には面白い顔ぶれとなっている。
近年は高校卒でも早くから一軍で活躍している投手も増えており、プロ入り後の成長を期待して、意外に高い順位で指名される選手が出てくることも十分に考えられる。
☆記事提供:プロアマ野球研究所