事実上の戦力外に
ア・リーグ東地区の最下位に沈むレッドソックスは現地時間29日(日本時間30日)、澤村拓一をメジャー出場の前提となる40人枠から外し、事実上の戦力外とした。
今後は他球団への移籍か自由契約(FA)、マイナー降格の3つが選択肢となる。
澤村はロッテに在籍していた2020年のオフに海外FA権を行使。2021年にレッドソックス入りし、今季が2年契約(3年目は球団との相互オプション)の2年目だった。
オールドルーキーとして迎えた昨季は中継ぎに配置され、前半戦は防御率2.45と予想以上の活躍を見せた。オールスター以降は防御率4.41と苦しんだが、シーズン通算では55試合に登板。5勝1敗10ホールド、防御率3.06という成績を残している。
2年目の今季も開幕からまずまずの投球を続けていたが、5月下旬にマイナーに降格。ところが、他の中継ぎ投手が負傷者リスト(IL)入りしたため、僅か2日でメジャーに復帰する“幸運”もあった。その後は自ら立て直しに成功。メジャーに再昇格した時点で3.60だった防御率は、オールスター直後に2.48まで良化させていた。
しかし、7月下旬は登板した4試合中3試合で失点を喫するなど、成績は再び下り坂に。8月に入ってからは盛り返したが、中旬以降は打ち込まれる場面が増えた。
防御率には表れない形の失点が増加
“戦力外”となった時点の澤村の防御率は3.73。昨季の3.06に比べると、同じ3点台でも印象はあまり良くない。
ただ、それ以上にホールド数が昨季の「10」から「3」に減少していたことこそ、澤村のチーム内における立場の悪さを物語っている。
そして、防御率とホールド数以上に大きく落ち込んでいた指標もあった。それが「IR%」だ。
IRとは「Inherited Runners」の略で、リリーフ投手が登板した時点で塁上にいた走者のことを指す。
「IR%」は登板時に背負っていた走者を生還させてしまった割合で、この数値が低ければ低いほど、“火消し”に成功したことになる。
昨季の澤村は登板時に35人の走者を背負っていたが、うち生還させたのは6人だけ。つまり、IR%は17.1%だった。
ところが、今季はこれが48.5%(33人中16人が生還)に悪化。IR%は高くても低くても自身の防御率には影響がないが、今季は(走者を出した)他の投手の防御率を悪化させていたというわけだ。
自身の防御率には表れない形の失点が多かった今季の澤村。
今後はウェーバーにかけられることになるが、獲得に動く球団は現れるのか。その答えは数日以内に出る。
文=八木遊(やぎ・ゆう)