ア・リーグだけじゃない!熾烈なMVP争いに注目
日米両国で過熱する大谷翔平(エンゼルス)とアーロン・ジャッジ(ヤンキース)によるア・リーグMVP論争。直接対決があった8月末の3連戦では、ともに2本塁打を放ち、一歩も譲らなかった。
本塁打数こそジャッジ(51本)が大谷(30本)を大きくリードしているが、投手・大谷の活躍を考えれば評価は分かれるところ。2人によるデッドヒートはシーズン最終盤まで続きそうだ。
一方で、「大谷vsジャッジ」以上の混戦模様となっているのがナ・リーグのMVP争い。こちらはチームメート2人による一騎打ち状態となっている。
参考にしたのは、どれだけチームの勝利に貢献したかを示すWAR(Wins Above Replacement)という指標。「Fangraphs」と「Baseball Reference」の2つが算出するものが広く知られているが、今回は前者の数値を用いた。
【ナ・リーグ打者・WARランキング】
1位 7.1 ノーラン・アレナド(カージナルス)
2位 6.8 ポール・ゴールドシュミット(カージナルス)
3位 6.3 ムーキー・ベッツ(ドジャース)
4位 6.1 マニー・マチャド(パドレス)
5位 5.8 フレディ・フリーマン(ドジャース)
※成績は現地9月1日終了時点
打撃成績ではゴールドシュミットがリードも…
WAR7.1でナ・リーグトップに立っているのはカージナルスのアレナド。長らく打者天国のクアーズ・フィールドを本拠地とするロッキーズで主砲として活躍していたが、優勝を狙えるチームへの移籍を熱望し、2020年オフにトレードでやってきた。カージナルスで2年目を迎えた今季は主に4番を務めている。
そのアレナドの1つ前を打つのがゴールドシュミットだ。こちらは18年オフにダイヤモンドバックスからカージナルスに移籍。今月10日に35歳の誕生日を迎えるが、その打棒はまだまだ健在。ナ・リーグ中地区で首位を走るカージナルスの強力打線を牽引する2人がMVPを争う状況となっている。
【アレナドとゴールドシュミットの主要打撃成績】
▼ ノーラン・アレナド
121試合 打率.307 28本塁打 89打点 OPS.941
▼ ポール・ゴールドシュミット
124試合 打率.332 33本塁打 105打点 OPS1.034
2人の打撃成績を比較してみた。数字だけを見ると、ゴールドシュミットが圧倒していることが分かるだろう。ただし、アレナドがWAR1位にランクインしているのは守備位置と守備力の差が大きい。
ゴールドシュミットが守るのは比較的負担が軽いとされる一塁。過去に4度、ゴールドグラブ賞に輝いているように、その守備力には定評があるが、一塁手というだけでハンデを背負っているのも事実だ。
一方、三塁を守るアレナドは、デビューした2013年から昨年まで9年連続でゴールドグラブ賞に輝いているまさに名手。今季も広い守備範囲と強肩で投手陣を盛り立ててきた。
ワールドシリーズ制覇という強い思いを胸に常勝球団のカージナルスに移籍してきた2人。おそらく2人の眼中にあるのは「MVP」ではなく、共闘しての「World Series Champion(世界一)」だけだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)