社会人球界の注目右腕
10月20日(木)に開催される『2022年 プロ野球ドラフト会議 supported byリポビタンD』まで、あと1カ月を切った。
プロ野球のシーズンがクライマックスへと近づくと同時に、“運命の一日”を待つドラフト候補たちの名前と、各球団の動向に関する話題も増えてくる。
昨秋のドラフトでは、社会人野球で活躍した山田龍星(JR東日本→巨人2位)や森翔平(三菱重工West→広島2位)、廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ→ロッテ3位)、柴田大地(日本通運→ヤクルト3位)が高い順位で指名された。
今年の社会人野球のドラフト候補もまた、上位指名が期待できる選手は少なくない。そのなかで、筆頭候補のひとりと見られている投手が、益田武尚(東京ガス)である。
▼ 益田武尚(東京ガス)
・24歳
・投手
・175センチ/86キロ
・右投右打
・嘉穂→北九州市立大
<主な球種と球速帯>
ストレート:145~153キロ
カーブ:113~118キロ
スライダー:126~129キロ
カットボール:135~140キロ
ツーシーム:135~137キロ
チェンジアップ:128~130キロ
スプリット:137~140キロ
<クイックモーションでの投球タイム>
1.18秒
大学時代に悔しいドラフト指名漏れ
嘉穂高時代は福岡県内ではそれなりに名前を知られた存在だったが、大きく成長したのは北九州市立大進学後のことだ。
2年春から主戦投手になると、3年秋には4勝0敗でチームの優勝にも大きく貢献。MVPと最優秀投手を獲得した。
ストレートの最速は150キロを超え、この頃からドラフト候補として高い注目を集めるようになった。
しかし、4年時はコロナ禍で春のリーグ戦が中止となり、秋も成績を落としてしまう。
プロ志望届を提出したが、ドラフト指名は見送られ、社会人の東京ガスに進んだ。
今年の都市対抗で全国区に
その名が全国に轟くことになったのが、昨年12月に行われた都市対抗だ。
1回戦のミキハウス戦で先発を任せられると、立ち上がりから150キロを超えるストレートを連発し、最速は153キロをマーク。これは吉村貢司郎(東芝)や小孫竜二(鷺宮製作所)と並び、この大会で最も速い数字だった。
準々決勝のENEOS戦では左わき腹を痛め、わずか1球で降板となったものの、残したインパクトの強さは指折りだったことは間違いない。
今年はわき腹の故障明けということで、登板機会は少なく、チームが昨年優勝したことで都市対抗予選も免除されたため、本選が“ぶっつけ本番”のアピールの場となった。
しかし、益田はここでさらに成長した姿を見せる。
迎えた開幕戦・JR東海戦で先発のマウンドに上がると、140キロ台後半のストレートと多彩な変化球で相手打線を圧倒。
特にコントロールが素晴らしく、左右の投げ間違いはほとんどない。被安打5で完封勝利をマークしてみせた。
ストレートの最速は、自己最速には及ばなかったものの151キロを計測。昨年は球数を重ねると徐々にスピードが落ちていったが、今年はそういったこともなく、68球を投じたストレートの平均球速は146.3キロに達している。これはプロの先発投手でも上位に入る数字である。
変化球も、冒頭で紹介したように多くのボールを操る。そのすべてでしっかり腕を振ることができており、緩急を使えるのも持ち味だ。
特に、140キロに迫るカットボールとツーシームはストレートと同じ軌道から鋭く変化するボールで、対になる変化のため打者も的を絞ることが非常に難しい。
総合力では社会人屈指の実力
相手のJR東海は、激戦区の東海地区を第2代表で勝ち上がっており、決して打線の弱いチームではない。そんな相手をここまで完璧に抑え込んだというのは大きな自信となったはずだ。
決勝のENEOS戦では、6回に2本の本塁打を浴びて同点に追いつかれたところで降板。チームは敗れて惜しくも連覇は逃したが、5回までは無失点と見事なピッチングを見せている。
また、この試合のストレート48球の平均は、1回戦を上回る147.1キロをマーク。これは今大会で先発した投手の平均球速では、圧倒的にNo.1の数字だった。
ただ、1回戦に比べると全体的にボールが高く浮くことが多かっただけに、そのあたりが課題となりそうだ。
大会終了後には敢闘賞にあたる久慈賞を受賞。2年続けて都市対抗で大きなアピールに成功したことは間違いない。
総合力では社会人屈指の投手で、即戦力となる選手が欲しい球団は高い順位で指名する可能性は極めて高いだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所