コラム 2022.10.11. 07:08

7年目で初の2ケタ勝利 中日・小笠原慎之介を突き動かした「財布の中のメモ」

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中日・小笠原慎之介 (C) Kyodo News

最後の登板でたどり着いた“節目”


 中日・小笠原慎之介にとって、勝負のマウンドだった。

 初の2ケタ勝利と2年連続規定投球回へ、残る登板は1試合。9月30日のDeNA戦(横浜)は、財布から取り出した“メモ”を見てからマウンドに上がった。




 8月中旬から何度見つめたか。手あかで汚れた白い紙。登板予定日が書かれてあった。

 2回に先制点を許す。二死二塁で桑原将志に左翼への適時二塁打を許した。

 「先に点を取られちゃって……。ブルペンから調子が良くなくって、どうしようかと。修正するというのは、ボクにとって必要なこと。何とかできたのかな」

 4回にダヤン・ビシエドの同点打が飛び出すと、その裏は楠本泰史と大和の連続三振を含む三者凡退で切り抜ける。

 「もう点はあげられないと思いました。援護もしていだき、あとは投げるだけでした」

 6回に飛び出した高橋周平の中前適時打が決勝点。勝ち投手の権利をゲットして、7イニングで失点1。被安打5、奪三振9、球数118の熱投だった。


シーズン完走のモチベーション


 メモは8月13日の阪神戦(京セラD大阪)の登板後、落合英二ヘッド兼投手コーチから手渡されている。

 この日は7イニング無失点で降板。シーズン序盤に新型コロナウイルス罹患で1カ月離脱したこともあり、規定クリアに黄色信号が灯っていた。

 もう1イニング、あと1イニング……。続投を志願しては、なだめられる繰り返し。落合ヘッドから残りの登板プランの書かれたメモを手渡され「やってあげられるのは、ここまで」と告げられた。

 その最後に書かれていた文字こそ、「9月30日、DeNA(横浜)」。受け取った時点で、残る登板は7試合。必要イニングは45イニングと3分の2。ギリギリだった。


 左腕は計算した。「これは大変なことになったな……。平均6イニング以上投げないといけないのかか……」とつぶやいた。

 手のひらサイズの紙切れは、シーズン完走のモチベーション。渡した落合ヘッドは振り返る。

 「京セラドーム大阪の試合後だったね。残りの期間を考慮して、中5日の登板も含めて、いろいろ調整して考えた。よく、投げられたと思うよ」と目を細めた。


「もっと投げられるように頑張ります」


 プロ7年目左腕。東海大相模で夏の甲子園を制した優勝投手。

 2015年10月に行われたドラフト会議で、中日は3球団競合の県立岐阜商業・高橋純平を外し、その“ハズレ1位”で小笠原を指名。日本ハムと競合の末、交渉権を得た。

 「日本ハムに行っていたらどうなっていたか、と考えたこともありました。7年たってますから、もうそんなことは考えませんけど(笑)」


 2年連続規定投球回が早いか、遅いか……。

 「これは遅いと思います。振り返れば、肘の手術も含めてメスを入れる必要がなかったのかな、と思うこともあります。けど、遠回りをしたとは思わない。経験は勉強ですし、自分で味わないと分からないものです。ただ、まあ壁をひとつ乗り越えた感じがある、かもしれないです。支えてくださったみんなのおかげです、秋からまた頑張ります」

 落合ヘッドは小笠原の成長を通知表で例えた。

 「先生の書くコメント欄があるでしょ?そこに書く内容が変わった感じ。『試合全体を見られるようになりました』と評価しています」と話す。

 ボールの強さ、カーブを含めた変化球の精度も高評価。足りないのは、「大人になれよ」と感じさせる行動だ。

 イライラしてペースを乱し、声を掛ける遊撃・土田龍空に背中を向けて無視する。試合の流れを読み、空気をつくり、勝利に導いてこそ一流。エースになるための心得を説かれ、理解し、振る舞いは変わった。

 立浪和義監督は「もう計算される側の選手になってきた。大野雄大と柳裕也、小笠原と高橋宏斗。小笠原は引っ張って行く側の立場として期待しています」と話す。


 いずれはメジャー挑戦を夢見た10代。ケガに苦しみ、「野球人生が終わっちゃうかも」と恐怖に浸かった20代前半。役割を与えられ、結果を残した20代中盤。

 10月8日、25歳の誕生日を迎えた。

 「もっと投げられるように頑張ります」

 次は2年連続2ケタ勝利を達成する。


文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)

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