コラム 2022.10.11. 06:44

遅れてきた「154キロ右腕」 八戸学院大・松山晋也がドラフト戦線に急浮上!

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八戸学院大・松山晋也 [写真提供=プロアマ野球研究所]

“最後の追い込み”はドラフトでも


 今年は20日(木)に開催される『プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD』。

 “運命の一日”が近づくにつれて、各球団が候補選手を絞り込む作業も進んで行く。




 各球団から少しずつ“指名公表”も出始めた中、この時期になって急浮上してくる選手と言うのも毎年確実に存在している。

 たとえば、昨年で言えば巨人に1位指名された大勢(関西国際大)もその一人。

 春の時点では故障で1試合のみの登板だったが、最後の秋に復帰して万全な姿をアピール。リーグ戦で評価を上げた結果、いわゆる“ハズレ1位”ではあるがチーム内の最上位指名を受けて、現在ではチームの守護神にまで登り詰めている。

 そして今年、秋のアピールによって浮上してくる可能性を秘めているのが、八戸学院大の松山晋也だ。


▼ 松山晋也(八戸学院大)
・投手 
・187センチ/90キロ 
・右投右打 
・八戸学院野辺地西

<主な球種と球速帯>
ストレート:147~154キロ
カーブ:118~120キロ
カットボール:140~144キロ
スプリット:138~141キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.36秒


高校時代は無名…大学進学後もデビューは遅かった


 松山は青森県の出身で、高校時代は八戸学院野辺地西でプレー。3年夏には当時青森山田のエースだった堀田賢慎(巨人)と2回戦で投げ合っているが、3回途中3失点で降板して負け投手となるなど、目立った実績は残していない。

 八戸学院大に進学後も、下級生の頃からオープン戦ではスピードのあるボールを投げていた一方で、安定感に欠けることもあって、リーグ戦のデビューは3年秋と遅かった。

 最終学年となった今年の春も、リリーフで4試合・4回1/3の登板にとどまっている。


 ようやく本格化してきたのは今秋から。

 開幕週に行われた岩手大との第2戦にリリーフで登板すると、6回2/3を投げて11奪三振と見事なピッチングを披露。

 続くノースアジア大戦でも短いイニングながら2試合連続で無失点と好投を見せ、さらなるアピールとなったのが9月5日に行われた富士大との試合だった。


 この日もベンチスタートとなったが、先発投手が早々に崩れ、2点を先制された初回二死一・二塁の場面でマウンドに上がる。

 ストレートはいきなりから3球続けて152キロをマーク。2回以降もストレートの勢いは落ちることなく、富士大の強力打線を4回までわずか1安打に抑え込んで見せた。

 5回に先頭打者に四球を与えてから2本の適時打を浴び、さらに7回には一発で1点を失ったものの、自己最長となる8回1/3を3失点にまとめる力投。チームの逆転勝ち(7-5で勝利)に大きく貢献した。


ストレートの平均球速はプロ先発投手に匹敵


 とにかく驚かされたのが、ストレートのスピードと勢いだ。

 最速は最初の打者にマークした152キロで、自己最速の154キロには及ばなかったとはいえ、その後も常に150キロ前後を計測した。

 4回を投げ終えた時点でストレートはちょうど40球だったが、その平均球速はちょうど150キロだった。これだけの球数を投げ、アベレージで150キロをキープする投手は、アマチュア野球全体を見渡してもなかなかいないだろう。

 終盤はさすがに疲れからか少しスピードは落ちたが、それでも最後まで投じた76球のストレートの平均は147.9キロに達した。これはプロの先発投手でも上位に入る数字である。


 190センチ近い長身で真上から投げ下ろすフォームのため、ボールの角度も素晴らしいものがあり、特に序盤は打者が振り遅れる場面が多かった。

 大型投手でフォームも荒々しいため、コントロールには難があると思われそうだが、この日も与えた四球はわずか1。秋のリーグ戦トータルでも、27回を投げて四死球は4とストライクをとるのに苦労することはない。むしろ、四死球率だけ見れば優秀な部類に入るだろう。


リリーフ陣が苦しい球団が指名…?


 それでも、春までになかなか結果を残せなかったのは、もちろん原因がある。課題と言えるのは、「変化球」と「走者を背負ってからの投球」だ。

 スプリットは140キロ前後のスピードがあり、カウント球や勝負球として使えるボールだが、カーブとカットボールは明らかにコントロールが不安定で、見せ球として使うことができていなかった。

 また、走者を背負った時のクイックモーションができておらず、一塁ランナーに楽々と盗塁を許す場面もあった。レベルが高い相手になると、このあたりを徹底して攻められるだけに、改善する必要はあるだろう。


 しかし、これだけの大型投手でスピードがあり、決め球となる変化球を備えているのは大きな魅力である。

 クイックさえできるようになれば、短いイニングであればストレートとスプリットだけでもある程度抑えられる可能性は十分にあるだろう。

 冒頭でも触れたように、昨年は大勢が秋に一気に評価を上げたが、松山も体格面とストレートの勢いに関しては近いレベルにあるように見える。

 リリーフ陣に苦しむ球団が、意外に高い順位で指名する可能性もありそうだ。


☆記事提供:プロアマ野球研究所



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