捕手として大きな成長を見せた森
1年前のオフ、FA移籍した選手は中日からソフトバンクに移籍した又吉克樹ただ一人であった。
しかし、今オフのFA市場は活況になるという見方が多い。
そして、FA権行使の可能性があるとされる選手の中には“捕手”も少なくない。
具体的には「FA宣言濃厚」とされている森友哉(西武)を筆頭に、伏見寅威(オリックス)、田村龍弘(ロッテ)、嶺井博希(DeNA)の4人だ。
捕手というポジションは育成に時間がかかる反面、リード面などでは経験が大きくものをいうこともあり、他のポジションと比較すると長く活躍ができるポジションである。
実際に彼らがFA宣言をすれば、他球団から大きな注目を集めることは間違いない。まずはここで、森ら4人の今季成績を振り返ってみよう。
▼ FA注目捕手の今季成績
森友哉(西武)
102試 率.251 本8 点38
伏見寅威(オリックス)
76試 率.229 本3 点21
田村龍弘(ロッテ)
2試 率.200 本0 点0
嶺井博希(DeNA)
93試 率.205 本5 点30
注目度No.1はなんといっても森だろう。
今季は森にしてはやや低調な打棒に終わったが、2019年には打率.329で首位打者のタイトルを獲得。シーズンMVPにも輝いた球界を代表する「打てる捕手」である。
また、打撃ばかりが注目されがちだが、捕手としてもたしかな成長を見せている。
長く投手陣に課題があるとされてきた西武のチーム防御率は、リーグワーストだった昨季の3.94から今季はリーグトップの2.75にまで改善。そこには、正捕手・森の貢献も大きかったはずだ。
もし森がFA宣言するとなると、球界全体の注目を集めるだろう。
わずか2試合の出場にとどまった田村
オリックスの伏見寅威は、森ほどではないもののパンチのある打撃が魅力だ。2安打・3打点でチームの大逆転連覇に大きく貢献した今季最終戦での活躍も記憶に新しい。
今季オリックスの捕手のなかで最多の先発マスクをかぶった伏見は、もちろんチームに欠かせない存在。しかし、オリックスが森の獲得に動いているという報道もあり、伏見の動向からも目が離せない。
一方、ロッテの田村龍弘は苦しいシーズンとなった。
コンディション不良により開幕二軍スタートとなったほか、新型コロナウイルス陽性判定を受けるなどしてわずか2試合の出場にとどまった。高卒ルーキーの松川虎生、佐藤都志也ら若手にポジションを奪われた格好となっている。
しかし、2016年にはベストナインに選出され、石川歩とともに最優秀バッテリー賞も受賞した実力者である。早くから正捕手となったが、年齢も28歳とまだまだ若い。ロッテに対するチーム愛が強いともいわれるが、出場機会を求めてFA権を行使する可能性もあるだろう。
セ・リーグでは、DeNAの嶺井博希に注目だ。
今季は自己最多の93試合に出場。8年ぶりのサヨナラ打を放った6月30日の阪神戦など、何度となくお立ち台に上がる充実のシーズンとなった。
三浦大輔監督も残留を熱望しているとされるが、FA権行使についてはゆっくり考えると胸の内を明かしている。
こうして捕手に限っても、注目選手がめじろ押しとなっている今オフのFA戦線。その動向を注視していきたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)