リーグ連覇も苦しい台所事情
10月20日に行われたプロ野球ドラフト会議で、セ・リーグ王者のヤクルトは吉村貢司郎投手(東芝)を単独1位指名し交渉権を獲得した。
今季のヤクルトはリーグ連覇を果たしたとはいえ、先発投手陣の投球イニングと防御率が12球団ワーストに低迷。規定投球回に到達したのは小川泰弘だけで、2桁勝利を挙げた投手はひとりもおらず、サイスニードや高橋奎二が奮闘したものの層の薄さは否めなかった。
吉村は150キロを超えるストレートとフォークボールを武器にするアマチュア球界屈指の完成度を誇る右腕。高津臣吾監督が指名直後に「安心してゲームを任せられる投手に成長していってほしい」と話した通り、1年目から先発ローテーションに加わる活躍が期待されている。
だが、少しだけ気がかりな点がある。近年のヤクルトは、社会人出身の先発投手がなかなか結果を残せていないということだ。
最後の“社会人出身”規定到達者は伊藤智
現在のヤクルト投手陣を見渡すと、社会人出身の生え抜き投手は石山泰稚、大下佑馬、柴田大地の3人。彼らはいずれも中継ぎ投手であり、今シーズンの先発登板は一度もなかった。
昨年も生え抜き社会人出身の先発は一度もなく、直近では2019年の大下による1試合だけ。それこそ、高津監督が就任した2020年以降では1試合もない。
それ以前も、ヤクルトに社会人出身の先発投手はほとんどいなかった。楽天が新規参入して12球団が現在の体制となった2005年以降、ヤクルトの社会人出身の生え抜き投手が規定投球回に到達したことは一度もない。
これは12球団でもヤクルトだけで、1998年の伊藤智仁(6年目/三菱自動車京都)以来24シーズンも社会人出身の規定到達者が出ていない。
また、同じく2005年以降において1シーズンで100イニング以上を投げたことがある社会人出身の生え抜き投手も、石山と中澤雅人の2人だけで、いずれも入団から数年で中継ぎに配置転向されている。この2人をはじめ秋吉亮、山本哲哉、久古健太郎ら中継ぎで活躍する投手は多いのだが、先発ローテに定着し結果を残した投手はほとんどいないのだ。
高津スワローズは先発投手陣を従来のような中6日登板にこだわらず、ゆとりをもたせたローテーションで起用してきた。吉村もいきなりフル回転とはいかないかもしれないが、1年目から規定投球回に到達するようなことがあれば、ヤクルトのリーグ3連覇の可能性も高まっていくことだろう。
ヤクルトにとって社会人投手のドラフト1位指名は8年ぶり。久々の先発即戦力にかかる期待は大きい。
【ヤクルトの主な社会人出身ドラ1投手】
▼ 2014年 竹下真吾(ヤマハ)
1年目:登板なし
通算:1試 0勝0敗 防13.50
▼ 2012年 石山泰稚(ヤマハ)
1年目:60試 3勝3敗10セーブ 防2.78
通算:440試 25勝33敗85セーブ 防3.27
▼ 2009年 中澤雅人(トヨタ自動車)
1年目:23試 7勝9敗 防5.68
通算:202試 13勝15敗21ホールド 防5.16
▼ 1994年 北川哲也(日産自動車)
1年目:2試 0勝1敗 防9.00
通算:36試 4勝5敗1セーブ 防5.18
▼ 1993年 山部太(NTT四国)
1年目:16試 1勝6敗 防4.03
通算:269試 45勝45敗2セーブ 防4.40
▼ 1992年 伊藤智仁(三菱自動車京都)
1年目:14試 7勝2敗 防0.91
通算:127試 37勝27敗 防2.31
▼ 1989年 西村龍次(ヤマハ)
1年目:31試 10勝7敗1セーブ 防4.06
通算:205試 75勝68敗2セーブ 防3.76