「第1シード」と「第6シード」による頂上決戦
メジャーリーグのワールドシリーズが日本時間29日(土)朝に開幕する。
ア・リーグから勝ち上がってきたのは、レギュラーシーズンでリーグ最多106勝を挙げたアストロズ。ポストシーズンでは更にギアを一段上げ、無傷の7連勝の快進撃を見せ、直近6年で4度目のワールドシリーズへと駒を進めてきた。
一方、混戦のナ・リーグを制したのは、レギュラーシーズンで87勝を挙げたフィリーズである。昨季までなら圏外だった第6シードでポストシーズン進出を果たすと、カージナルス、ブレーブス、そしてパドレスを撃破。13年ぶりの大舞台で“最強”アストロズに挑戦する権利を得た。
レギュラーシーズンでは「19」ものゲーム差があった2チームによる近年まれにみる“格差対決”は、アストロズがその実力を見せつけるのか、それともフィリーズが勢いでそれを覆すのか。過去のデータをひもときながら展望していきたい。
“立ち上がり”から要注目
まず、どちらのチームにとっても重要になるのが第1戦の結果だろう。メジャーリーグのチーム数が現在の30球団になった1998年以降の過去24年間で、初戦を勝利したチームは83.3%(20/24)という高い確率で世界一に輝いている。
短期決戦では、「第2戦が重要」といわれることもあるが、近年のワールドシリーズに限ればこの格言は当てはまらないようだ。特に今年はアストロズ、フィリーズともに早くにリーグ優勝を決め、4日間のオフがあった。試合勘を取り戻すとともにいち早くシリーズの流れをつかみたいところだろう。
その初戦のマウンドに登るのは、ジャスティン・バーランダー(アストロズ)とアーロン・ノラ(フィリーズ)の両右腕だ。
39歳のバーランダーはトミー・ジョン手術明けにもかかわらず、開幕から全盛期さながらの投球を続けた。最終的にはリーグトップの18勝&防御率1.75をマーク。レギュラーシーズン最終登板となった現地時間4日には、フィリーズ相手に5回を無安打、1四球、10三振と完璧に抑え込んでいる。
ポストシーズンでは、先日のヤンキース戦で挙げた1勝を含めて通算15勝しているが、ワールドシリーズになると話は別で、これまで7試合に先発し0勝6敗、防御率5.68と、エースらしからぬ成績が残っている。
一方のノラは18年から5年連続で開幕投手を務めるチームの大黒柱だ。ただし、今季は好不調の差が激しく、シーズン成績は11勝13敗と2つ負け越した。
自身初となったポストシーズンでも、カージナルスとブレーブス相手には合計12回2/3を投げて無失点に抑え込んだが、直近のパドレス戦は5回途中6失点と炎上。大事なワールドシリーズ初戦にどちらの顔を出すのかに注目が集まる。
悲願の世界一へ…主砲が輝き放つか?
そして、最後にもう一人、シリーズの行方を左右するキープレーヤーとなるのがフィリーズの主砲、ブライス・ハーパーだろう。
鳴り物入りでドラフト全体1位指名を受けたのは2010年。18年まで過ごしたナショナルズ時代は4度のポストシーズン出場を果たしたが、いずれも地区シリーズ止まりだった。
18年オフにFAでフィリーズに移籍すると、皮肉にも翌年に古巣ナショナルズが快進撃を見せ世界一に輝いた。
あれから3年、今季は左手の親指を骨折し戦線離脱した時期もあったが、復帰後は自慢の打棒を見せつけている。
このポストシーズンは11試合中10試合で安打を放ち、打率.419、5本塁打、11打点の好成績。アストロズ相手に下克上を完遂するにはハーパーの活躍は欠かせないだろう。
格差対決となった第118回のワールドシリーズは、日本時間土曜の午前9時過ぎにプレーボールがかかる。
文=八木遊