期待の若手が豪快アーチで存在感
宮崎の地で行われている秋季教育リーグ(第19回みやざきフェニックス・リーグ)で、中日・鵜飼航丞が本塁打を量産している。
10月27日の楽天戦では特大の場外弾を放つなど、10月28日終了時点で6本塁打はリーグトップの成績だ。
今シーズンがルーキーイヤーだった鵜飼は、開幕から1週間でプロ初安打、初打点、初本塁打とトントン拍子で結果を残した。
しかし6月に入ると月間打率1割台と苦しみ二軍降格。二軍で調整中だった7月には自打球を受け「左下腿三頭筋内側打撲」で戦線離脱し、患部にできた血腫を除去する手術を受けた。夏場はリハビリに費やし一軍に復帰したのはシーズン終了間際のこと。
結局、1年目は59試合の出場で打率.206(180-37)、4本塁打の成績にとどまった。
序盤の勢いからすると、アクシデントによる離脱があったとはいえ少し尻すぼみになった感は否めないだろう。フェニックス・リーグではその鬱憤を晴らすかのような活躍だ。
鵜飼が虎視眈々と狙う中日の外野は、大島洋平と岡林勇希がレギュラー格で、その次にくる選手が不在だ。主に左翼を守りチーム3位の8本塁打を放っていたアリエル・マルティネスも退団となったため、ポジションはひとつ空いている。
現段階では、故障の癒えた鵜飼がそのポジション争いのトップを走っていると見ていいだろう。
歴代のフェニックスリーグ本塁打王は一流選手ズラリ
来シーズンのレギュラー定着を狙う鵜飼に追い風となるデータがある。過去のフェニックス・リーグの本塁打王を振り返ってみると、ブレイクを果たした選手が多く顔を揃えているのだ。
山川穂高(西武)に村上宗隆(ヤクルト)といったのちの本塁打王。その他にも、中田翔(日本ハム)、梶谷隆幸(DeNA)、柳田悠岐(ソフトバンク)、塩見泰隆(ヤクルト)といった球界を代表する選手がずらりと並ぶ。
球界を代表するトッププレーヤーとなった選手たちも、ブレイク前に若手の登竜門でもあるフェニックス・リーグで飛躍のきっかけを掴んでいた。
中日の長打力不足は深刻だ。今シーズン62本塁打はリーグワースト。本塁打の出にくいバンテリンドームを本拠地にしているとはいえ、リーグトップのヤクルト(174本)とは112本もの開きがある。
長打力だけが原因ではないが、得点もリーグワーストの414点でリーグトップのヤクルト(619点)とは205点差。単純計算で1試合あたり1.43点も少ない。
そんな状況を打破するためにも、中日の長距離砲の育成は急務だ。もうひとりの大砲候補である石川昂弥が左膝の故障で来季開幕に間に合わないこともあり、長打力不足解消に鵜飼の覚醒は欠かせない。
今シーズンの鵜飼はわずか4本塁打に終わったが、フェニックス・リーグを足がかりとして一軍ポジションを確保することは最低限の目標ライン。2010年の森野将彦(現コーチ)以来となる、生え抜き日本人選手20本塁打超えにも期待がかかる。