白球つれづれ2022~第47回・近年“不作”が続く「助っ人野手」の獲得戦を制する球団は…
ソフトバンク・千賀滉大投手のメジャー争奪戦が注目を集めている。打者ならオリックス・吉田正尚選手もポスティングによるメジャー挑戦が始まった。
FAでは西武の森友哉選手がオリックスに移籍、これに押し出される形で伏見寅威選手が日本ハムへの移籍を決断した。
トレードも例年以上に活発だ。
セ・リーグの最下位に終わった中日は、主軸の阿部寿樹選手を放出して楽天から涌井秀章投手を獲得。そのわずか3日後には17年の新人王・京田陽太選手とDeNA・砂田毅樹投手との交換トレードを発表している。
パ・リーグの最下位、日本ハムもチーム改造に躍起。ペナントレース終了直後に、渡邉諒、髙濱祐仁選手と阪神・江越大賀、齋藤友貴哉選手の2対2のトレードを皮切りに、すでに3件のトレードとFA獲得を実現させた。各球団の事情こそ違うが、例年以上に今年のストーブは熱い。
次の焦点は日本ハムからFA宣言している近藤健介選手の去就に集まるが、すでに6年30億円以上の好条件をソフトバンクが用意すれば、西武、ロッテ、オリックスらの各球団も逆転の秘策を練っている。
球団の補強策と言えば、前述のFAやトレードに加えて、新人選手のドラフト、12球団合同トライアウトや外国人選手の獲得などが挙げられる。今季からは現役ドラフトの開設も決まった。これは各球団の支配下選手から最低2名以上をピックアップして、ドラフト会議を行うもの。これまで出番の少なかった選手に新たな活躍の場を与えることになるか?今後の動きが注目されている。
そんな中で、これから本格化するのが「助っ人」の獲得戦である。現在、米国ではGM会議やウィンターミーティングの真最中。ここでメジャーのチーム作りが一段落した後に、日本球界行きを希望する選手を獲得していくのが通例だ。
近年、新外国人選手に関しては、異変が起きている。一昔前なら、打撃タイトルの常連だったガイジンが、この数年は名前を消しているのだ。
セ・リーグなら、19年にDeNAのネフタリ・ソト選手が本塁打、打点の二冠に輝いて以来3年、パ・リーグでも17年にソフトバンクのアルフレド・デスパイネ選手が同じく二冠になって以来5年も日本人選手がタイトルを独占している。
ちなみに投手に目を転じると今季は中日のライデル・マルティネスが最多セーブ賞、同じくジャリエル・ロドリゲスが最優秀中継ぎ投手賞を受賞。パ・リーグではソフトバンクのリバン・モイネロが昨年、最優秀中継ぎ賞のタイトルを獲っているから近年は“投高打低”現象と言ってもいいだろう。
日本球界における「助っ人列伝」を紐解けば豪華絢爛である。
古くは南海時代のジョー・スタンカや阪神のジーン・バッキーらの名投手から、2年連続三冠王に耀いたランディ・バース(阪神)や同じく三冠王のブーマー・ウェルズ(阪急)にタフィー・ローズ(近鉄など)、アレックス・カブレラ(西武など)やヤクルト、巨人等で活躍後にDeNAで監督も務めたアレックス・ラミレスらの名前は今で゛も語り継がれる。2018年のセリーグでは首位打者にダヤン・ビシエド(中日)、本塁打王にソト、打点王にウラディミール・バレンティン(ヤクルト)が名を連ね主要打撃タイトルを独占したこともある。
近年、外国人野手が日本球界で活躍できない理由
それが、近年ではなぜ輝きを失っていったのか?
最大の要因は日本球界のレベルアップが考えられる。多くの助っ人たちは日本人よりもパワーで勝っていたが、最近では日本人選手もウェートトレなどの影響でその差は縮まっている。加えて、投手は160キロ超えの速球を駆使、データも緻密になり、弱点はすぐに洗い出される。
加えて、活躍すれば高年俸がさらにはね上がり、コロナ禍で経営に苦しむ球団によっては負担が大きすぎる。昨年まで阪神でクローザーとして活躍したロベルト・スアレス投手のように米国へ逆輸出。今ではパドレスで5年4600万ドル(約64億円)の新年俸を獲得する選手まで生まれている。日米の垣根が低くなっている分、かつてのようにおいそれと活躍できる舞台ではなくなっているはずだ。そこで「中級クラス」の無難な選手の獲得に動くから小粒化しているとも考えられる。
それでも外国人次第でチームが強化されるのもまた確かだ。
このオフに主砲の森を欠くことになった西武や、FA戦線では成果を上げられなかった巨人等はなおさら新助っ人獲得に躍起だと言う。
育成の時代と言われて久しい。だが、それだけで頂点を掴めるほど甘い世界でもない。ドカンと一発、起死回生の“お助けマン”を呼ぶことが出来るのか? ここからが各球団の国際渉外担当の腕の見せ所である。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)